小学低学年のある日、

一人で自動車のオモチャで遊んでいるときでした。

土を掘っていると、

動物なのか人間なのかは分かりませんが、骨が出てきました。

「これは、人間の骨かな?」

そう思い、家へ持ち帰ると、

「これ、何の骨?」

と言って母に見せました。

すると母は、

「どっから持ってきた。そんなもん、捨ててきなさい」

と怒られたので、

外へ出ると、そのまま遠くへ投げ捨てました。

この頃は開拓地に住んでおり、

その地域にはまだ電気が来ていませんでした。

ですから、我が家もランプ生活でした。

そして夜寝るときには、

2部屋の間のふすまを開いて、

僕の左隣に三男、四男、父、そして母の順に並んで寝ていました。

骨を捨ててから、多分一週間くらい経った頃だったと思います。

深夜にトイレへ行きたくなり上半身を起こすと、

左端の方で誰かが起きたように見えました。

しかし暗くてよく見えません。

僕は、

「母ちゃん、母ちゃんね?」

と声かけたのですが返事がありません。

その内に少しずつ目が暗闇に慣れてくると、

長い髪で白い浴衣の女性の影が見えてきました。

「母ちゃん、母ちゃんやろ」

しかしまたしても返事がありません。

更に目が慣れてくると、

家族全員まだ寝ているのが見えました。

そして母の隣に、

上半身だけ起きた状態の、その女性の姿がハッキリ見えるまでになりました。

ストレートの長い髪で白い浴衣の女性は、

見知らぬ若い女性でした。

「誰? あんた誰ね」

と尋ねたが返事もなくただじっと僕を見つめていました。

その顔は白くとても綺麗な顔で、ニコニコ微笑むような、笑顔のようにも見えました。

ところが、

しばらく見ていると、

その女性の頭や顔が少しずつ薄くなり、

向こう側が透けて見えるようになり、

女性の姿が消え始めました。

その時初めて、

その女性は幽霊だと気づきました。

僕は恐ろしくなり、トイレのことはすっかり忘れて、

布団に潜り込むと朝まで恐怖に震えていました。

朝になり、

母にその事を話すと、

「なに馬鹿なこと言いよるとか。そんなことあるわけないやろ。幽霊なんかおらん。はよご飯食べて学校行かんか」

と、散々怒鳴られました。

それ以来、

その女性は二度と僕の前には現れませんでしたが。

時間が経つほどに女性の顔や姿が鮮明な記憶となり、

恐さよりも、

むしろ、その女性にもう一度会いたくなりました。

それから何年もの間、

その女性の霊を探し続けましたが、結局未だにその女性には会うことはありません。

でも、もしかしたら、

僕が霊界へ行ってから遭うかも知れませんね。

この体験が、

僕にとって初めて、幽霊と出会った時の話です。