今から10年近く前のある夜、
私と家内は布団を並べて寝ていました。
すると、
突然誰かが家内をまたいで私の足元へ、
そして、
寝てる私の両足を持つと、
下の方へズルズルと引きずるのです。
全身真っ黒な人影、誰だか分からないが、
男だということは分かりました。
だが室内にいないはずの人影、思わず私は、
「お前誰か、何すんのか?」
と叫んでいました。
するとその男の影はスーッと消えました。
「なんだ、夢だったのか」
そう思った時でした。
隣に寝ていた家内が、突然起きて、
傍に置いてあった聖塩を取り、
「お前は誰か? ここから出て行け」
と叫びながらそこら中に振り撒いたのです。
それを見た私は、
「どうした? 何があった?」
と尋ねると、
「今、誰かが私をまたいで行った」
と言うのです。
それで私は更に驚いて、
「えっ! 黒い人影が見えたのか?」
と言うと、
「うん、いきなり誰かが来て、私を乗り越えて行った・・・」
と話すのです。
私が見たのと全く同じ状況でした。
それで私は、ただの夢ではないと分かったのですが、
誰が、何の為に、私の所へ来て、
私の両足を引っ張ったのか?
何を伝えたかったのか?
ずっと気になっていました。
それから丁度一週間目のことでした。
仕事で日田市へ出かけた時ふと、
昔の友達に会いたくなり訪ねました。
するとその友達は、
「Aさんがおったやろ、実は数年前に猟銃で自殺したんよ。けどね、何で自殺したかは分からんよ」
と、
むかしパーソナル無線のグループリーダーで、
人の面倒見が良く仲良しだったA氏のことを話してくれました。
その話を聞きながら私の頭の中では、
芸能界にいた時にある先輩俳優さんから聞いた、
元有名俳優さんJ.T氏の自殺と重ねていました。
話を聞き終わるとすぐにA氏の自宅を訪ねました。
家に着くと表の戸は開いていたので、
「こんにちは、いますか?」
と声をかけると、
「は~い、今行きます」
と声がして、奥の方から畳の部屋を、
両足を引きずるようにして奥さんが出て来ました。
何年ぶりだろ、奥さんは私を見て驚いたようでした。
「あらあ、珍しいですね」
と、嬉しそうに話してきました。
「奥さん、お久しぶりです。ところで、足はどうしたんですか?」
と尋ねると、
「実は一週間前に田んぼで転んで両足を痛めたんですよ。病院へ行ってるけど中々治らなくて・・・」
と話してくれました。
それで一週間前のあの出来事の謎が解けました。
その事を彼女に話すと、驚いた様子で、
「え~、不思議なこともあるんですね」
と言いながら私を仏壇の前へ案内してくれました。
そうです、皆さんもお分かりになったと思いますが、
一週間前に彼女(A氏の奥さん)が、両足を怪我した事を、
A氏が私に伝えようとしたのですね。
この事は今でも忘れません。また近いうちにA氏の家族を訪ねてみようと思います。