小学校3年生の頃だったかな?
開拓地に住んでいた我が家にはまだ電気もなく、
ランプ生活でした。
当時の我が家では、表と座敷という2つの部屋の間にある襖を開けて、
私の左に2人の弟、その隣に父、そしてその隣の端に母が寝ていました。
ある日の事、
夜中にふと目が覚め、トイレに行こうとすると、
左端で誰かが、
スーーーット、上半身を起こした。
暗闇でよく分からなかったが、
左端に寝ていたのは母だったので、
「母ちゃん?」
と声かけたが、何の返事も無い。
それで更に、
「母ちゃん、母ちゃんやろ」
それでも返事が無い。
そのうちに目が暗闇に慣れて、
少しずつその人影が見えて来た。
すると、
母の隣に上半身を起こした若い女性の姿が見えた。
その女性は見たこともない綺麗な人で、
長い髪に白い浴衣を着ていました。
わずかに微笑む顔で私をじっと見つめていた。
初めてみるその女性に、
「だれ? 誰ね?」
と何度か呼びかけたが、
返事もなく、じっと私を見つめているだけでした。
それからしばらくすると、
女性の顔や頭が薄くなり、
向こう側が透けて見え始めました。
少しずつ消えて行く。
その時初めて、その女性が幽霊だと気付きました。
途端に恐怖が押し寄せ、布団に潜り込んで震えているうちに眠ってしまいました。
翌朝、
母にその事を話すと、
「何寝ぼけた事言よるか。そんな馬鹿なこと言わんで、はよ学校行かんね」
「確かに見たんだけどなあ」
とつぶやきながらも、
その事は長年頭から離れませんでした。
今でもかすかに思い出せます。
それにしても、その幽霊があまりにも綺麗だったので、
いつの間にか恐怖というより、
恋をしてしまい、また会いたいと夜になると探し回ることもあるほどの美人でした。
また、塾の仕事をしていた頃も、
眠れなくなると夜中に一人、田舎の方へ車を走らせては、
あの時の女性は居ないかと探したものです。
結局残念ながら、その綺麗な女性の幽霊には二度と会うことはありませんでした。
ただ、他の幽霊は時々見かけたり、感じたりします。
もしかしたらその女性、
私が死んだら、どこかで会うかもしれませんね。(*^.^*)