僕がヘビーメタル・ハードロック(以下HM/HR)を聴き始めた
1983年頃は
メタル界にとっても大きな転機の時でした。
僕がハードな曲を聴くきっかけとなった
いわゆるNWOBHM (ニューウェイブオブ・ブリティッシュヘビーメタル・ムーブメント)の
流れをくんだ
IRON MAIDEN
JUDAS PRIEST
ACCEPT
そう言ったバンドこそが「ヘビーメタル」だと信じていた僕に
「今人気あるメタルのバンドやで」、と
中学の先輩が貸してくれたのは
QUIET RIOT
RATT
MOTLEY CRUE
BLACK'N' BLUE
DOKKEN
と言ったバンド達。
確かにハードでエッジも効いている。
でも妙に聴きやすくて、今までの重く暗い雰囲気が消えた
どこかドライで親しみの持てる曲調。
そう、これらはアメリカ西海岸を拠点に派生した
「L.A.メタル」のムーブメントの序曲だったのです。
その頃はどこの出身で
ルーツがどうのこうのなんてよくわかっていなかったので
「重く暗いのはイギリス」
「明るくて軽いのがアメリカ」
なんて解釈をしていました(怖すぎる、この考え方(笑))
ただ・・・
どこの世界にも
いつの時代にも
「異端児」が存在するのです。
マシンガンズがその名を知られ始めた頃
「V系の異端児」などと呼ばれていた事もありましたが(あったんです!)
L.A.メタルの異端児こそ
W.A.S.P.なのです。
ある日レコード店で見かけた日本デビュー作
「魔人伝」のおどろおどろしいジャケット。
曲調も、あの明るく陽気な西海岸のバンドをは一線を画している。
重く暗く、そして猥雑で下品な雰囲気(失礼!)に溢れていました。
(お借りしました、ありがとうございます)
アルバムのオープニングトラックである
「I WANNA BE SOMEBODY」のインパクトもさることながら
彼らは数々の伝説や奇行で僕たちの想像力を膨らませてくれたのです。
しかし、80年代初期の洋楽メタルの邦題って
「悪魔の○○」「鋼鉄の○○」「誇り高き○○」ってのばっかりだった。
当時の担当者のメタルへの偏見、というかイメージ丸出しやん(笑)
ちなみに「I WANNA BE SOMEBODY」も邦題は「悪魔の化身」でした(笑)
まずは歌詞があまりにも過激すぎて
発売禁止になった
「ANIMAL(F**K LIKE A BEAST)」(何ちゅうタイトルやねん)
(お借りしました、ありがとうございます)
上半身血まみれで、股間にチェーンソウの丸のこぎりを装着した衣装を身にまとった
ボーカル兼ベース(当時)のブラッキー・ローレス。
レコードのライナーノーツ(バンド紹介)に書かれていた
此処ではとても書けないようなメンバーのプロフィール(笑)
そして、「血」を多用した過激なステージパフォーマンス・・・
それは多感で好奇心旺盛な当時の僕らの感性を満たすには十分すぎる代物だったのです。
ただ、この強烈なインパクトのせいで
僕は(いや、おそらく僕以外もファンの大多数は)
彼らには常に「過激さ」を求められるようになり
セカンドアルバム「THE LAST COMMAND」
サードアルバム「INSIDE ELECTRIC CIRCUS」
で、音楽的なクオリティが上がっていくにも関わらず
バンドとしてのインパクトは小さくなるという
「妙な逆転現象」が発生してしまったのです。
音楽性も何だか統一性が無くなってきてたような気もする(笑)
「WILD CHILD」みたいなプログレッシブな世界があれば
「BLIND IN TEXAS」のような単純明快なスリーコードのロックンロールもある。
ブラッキーがやりたかったのは前者なのかもしれないのですが
ウケがいいのは後者だったりするわけで
その辺りの葛藤もあったのかも知れないですね。
(お借りしました、ありがとうございます)
「BLIND IN TEXAS」は僕も大好きな曲で
正直、この路線の方が好きなのですが
これはあくまで「テキサス賛歌」として作った曲なのかな、
ブラッキーはこの手のロックンロールへのこだわりはなかったのかも。
当時は「テキサスを制する者はアメリカを制す」などと言われていて
レコードの曲紹介には
「メンバーのテキサスでの気持ちイイ体験」がベースになっている、
そう書かれていましたが、当時の僕にはその意味はよくわかりませんでした。
さすがに今では、ねえ、ちょっとはわかりますけど、
それでも何の事だか(おいおい)
「INSIDE ELECTRIC CIRCUS」は名盤です。
ただ、当時のインパクト期待路線の気持ちで聴いていたので
「何か、引っかかりがないなあ」と思っただけで。
実は僕の中では隠れた「メタル名盤」だったりするのです。
ただ、どんな状況になっても
タダでは転ばないのがブラッキー(笑)
オリジナルメンバーがいなくなっても
「THE CRIMSON IDOL」という
とんでもないクオリティのアルバムを作ってしまったのです。
そして今なお
現役であることに僕はとんでもない喜びを感じています。
だって中学生の頃から聴いてたバンドが
今でも活動してるって、凄いじゃないですか。
W.A.S.P.は僕にとって
青春の思い出でありながら、今も聴き続けるバンドの一つなのです。