重たい内容になるであろうと言う事は
火を見るよりも明らかであるにもかかわらず(笑)
それを記事にしてしまう自分自身に、まずは敬意を表する事にしよう


更には、読んでくださる方がいらっしゃることに感謝します

「聴けなくなった歌」
記念すべき第1回目はドリカムの「未来予想図Ⅱ」
とは言え、この曲に限っては僕自身が非常に思い入れのある曲、と言うわけではなく
さまざまな径路を経て、僕も聴けなくなった、と言うのが正しいかもしれない。
では、始まり始まり。
嫁は独身の頃からドリカムが好きで
結婚前に香川に出かけた時に「オルゴール館」というところで
「未来予想図Ⅱ」が流れるオリジナルのオルゴールを作成したくらい。
それが、どうしてある日突然、聴く事が出来なくなったのかと言うと・・・
今をさかのぼる事、数年前
長男の通う幼稚園で嫁と仲良しだったママ友さんがいました。
仮にその方を△△さんと呼ぶことにします。
長男もその△△さんの息子さん●●君と仲良しで、よくお家に遊びに行ったりしていました。
「●●君の家は駐車場が狭くて、停めるのが大変なんよ」
と、嫁は家の前を通るたびによく言っていたものでした。
そして、その△△さんなのですが
以前、育児ノイローゼ気味になった時期があり、躁鬱が激しく
嫁も時々、彼女の相談に乗っていたりしたそうなのですが
やはり心の病を抱えるお友達というのは、なかなか対応が難しく
親身に相談に乗っていると、何度も何度も同じことを聴いてきたり確認したり、
少し曖昧な対応をすると、まるでこの世の終わりのようにどん底まで落ち込んだりするようで
嫁もしばらくすると、△△さんから距離を置くようになりました。
△△さんの症状は少しずつエスカレートし、
他の人に相談しても誰も取り合ってくれない状態になっていきます。
それでも嫁はお話を聞いたりメールのやりとりはしていたそうなのですが、
送られてくるメールが全てひらがなだったり、解読できない意味合いだった事があり、
さすがの嫁も、叱咤激励のつもりで少し厳しい言葉で返信をしたらしいのです。
それからしばらく△△さんからのメールが来なくなり、
少し落ち着いたのかな、と嫁は安心していました。
それから何日か経ったある日の日曜日。
家族で公園に行こうと車を走らせていた時のこと、
家から嫁の携帯に着信があり、
「○○さんって人からうちに電話があったんやけど・・・」
○○さん、と言う名前を聞いた時、
「えっ・・・」
そう言ったまま絶句した嫁の顔色が変わるのをバックミラー越しでもすぐに確認できました。
○○さんとは嫁同様に、△△さんと仲良しだったグループの一人だったのです。
○○さんに電話をかけようとするが、手が震えてかけられない。
ようやくつながった電話で、耳にした最初の言葉は・・・
「△△ちゃん、亡くなったって・・・」
「うそ、私のせいかも知れん」
嫁は自分の一言に傷ついた△△さんが自ら命を絶ったのでは・・・と思ったのです。
嫁は号泣し、とても公園に行く空気ではなくなりましたが、
それでも、事情を知らないうちの子供たちはこの日を楽しみにしていたから、と
公園に行き、少し遊んでから帰る事にしました。
その夜、お通夜に行った際に、死因がはっきりしてることから
嫁の思いこみは間違いである事がわかり、
自ら命を絶ったわけではない事も明白になったのですが、
それでも嫁は最後のメールの事をずっと気に病んでいたようです。
そしてお葬式の日、
お見送りの時に流れたのが、生前△△さんが好きだった
ドリカムの「未来予想図Ⅱ」
(お借りしました、ありがとうございます)
お葬式から帰ってきた嫁が一言、こう洩らしました。
「あの歌、もう二度と聴くことできんなった」
あんなに嫁が好きだったあの曲が、こんな形で聴けなくなる事もあるんだな、
と、思うと何だかいたたまれない気持ちになりました。
それからしばらくの間は、悲しい記憶を思い出させないように
出かけた時、いくら遠回りになっても△△さんの家の前を通る事はありませんでした。
あの狭い駐車場の前を・・・
当時、幼稚園だった、△△さんの息子さん●●君は
長男と同い年なので、今は5年生。
お葬式の時は「母の死」をまだ理解できずに、
「ママはどこに行ったの」とみんなに聞いて回り、最後は疲れて眠ってしまった・・・
そんな話を聞きましたが、長男とは別の校区だったので
小学校に進んでからは自然と交遊もなくなりましたが
きっと立派に育っていることと思います。
「もう聴く事もない」
そう言っていた嫁ですが、そんな悲しい出来事から数年たったある日
期せずして、「未来予想図Ⅱ」と再会する日が来ました。
「歌うま芸能人決定戦」そんなタイトルの番組だったと思うのですが
ここで、つるの剛士サンが歌っていたのです。
(お借りしました、ありがとうございます)
「この曲、男の人がこんなに上手に歌うの、初めて聴いた」
嫁の口からは△△さんの名前は、もう出てきませんでした。
悲しい思い出は浄化されたのでしょうか、それとも心の中で押し殺していたのでしょうか。
「オレよりも上手やな」
ジョークでごまかして、僕はそれを確認する事はしませんでした。
嫁だけでなく、この曲は
あの日、オルゴールを作った時点で二人にとっての思い出の曲でもあるのですから・・・