僕とあの娘  ①  「そもそも」 | みつ光男的 だれだれ日記

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家族と過ごす何気ない日常と好きな音楽、プロレス、自作小説について。
更には日々の癒しとなるアイドルについてなども長ったらしく綴ります。

今を遡ること20数年、時は僕の大学時代。


「メグミ」って名前を聞くと、今でも少し胸が痛くなる。




おそらく当時の下宿の友達はおろか、
バンドのメンバーでもあり、下宿の「半住人」でもあったリョウ君ですら実際にメグミの姿を見た事はないと思う。
名前は聞いたことあるけど姿は見た事がない、まるで謎の人物って感じで。

でも僕の大学時代の話を語る時に彼女の存在は欠かせないものだし、
この場を借りてメグミの事をちょっと話しておこうと思う。


メグミの話をする前にまずヒロとの出会いから話さないと話が前を向いて進まない。

このヒロって奴、僕の通っていた大学のすぐ隣にある看護学校の生徒で
元々は同じ下宿の先輩の大林さんと知り合いだったんだけど、

いつの間にか入学当初からお世話になっていた
先輩の阿部さんと友達になっていて、
その流れで僕とも知り合いになったというわけ。

あれはまだ大学に入学して数ヶ月の初夏の出来事。

ヒロに初めて会ったのはリョウ君の誘いで男女5人ずつで出かけた
「10人ドライブ」から帰った日の昼過ぎ。
僕はこの「10人ドライブ」に関しては全くと言っていいほど収穫がなくて
(この場合の「収穫」とは特定の女の子と仲良くなる事)
帰ったのが朝の7時過ぎだったから、当然のように昼を過ぎても死んだように寝ていた。

そこに突然、阿部さんからの電話。

「今から30分後に外に出なさい、おもろい事があるから」

またまた、と思いながら何とか頑張って起きて外に出てみると、
そこには阿部さんと他に見た事ない女の子が二人、そして2台の黒い軽自動車。
そのうちの一人がヒロで、もう一人はヒロの友達の優子。

二人は同じ女子高の出身で僕と同学年、優子は既に働いていて看護学校の生徒ではなかった。

阿部さんが優子の事を気に入っていたので、僕は必然的にヒロの車に乗ることになった。
最初は眠くてあまり話さなかったけど、しばらくすると眠気も覚めてきて色々話した。
あの頃、看護学校の連中と知り合う機会ってほとんどなかったから、
うちの大学の生徒なら誰しも知っている、
『目が覚めるような青色』の看護学校の制服」は近くて遠い存在だった。

この日から僕と看護学校との間にコネクションが生まれた。
何故かうちの生徒と看護学校って位置的には近いのに縁遠い関係だった。
うちの大学って真面目なイメージがあって、向こうも少し敬遠してたのか
こっちもあまり積極的に動いてなかったみたいで、
親交のある女子大学とのサークルつながりみたいな交流もなかった。

まあ、この大学にも僕のようなアホなノリの奴がいるって事が
わかっただけでもよかったって後になってヒロは笑いながら言ってた。
これって僕は喜んでいいんだろうか。



僕とヒロが初めて会ったのが1989年の7月だったんだけど、
それからヒロとも優子とも何回かあって遊んだりはしてた。
以前から二人とも何度か僕のバンドのライブを観に来たりしてたらしい。
当然まだ知り合う前の事だけど。

そうして何だかんだで3ヶ月ほど時が過ぎて、
学園祭のライブ前日の10月の終わりのある日の事だった。

バンドの練習を終えた僕が一人でブラブラ帰ってると、
下宿近くのレンタル屋の前に見慣れた車が停まっていた。

「あ~ヒロかな?」

なんて思いながら近づいてみると確かにヒロだったけど
彼女は何人かの友達と一緒にいた。
ここでヒロに会うのは僕にとっては正に「渡りに舟」
何故かと言えば学園祭のライブのチケットをヒロが何とかして売りさばいてみるって
言ってくれてたので、売れ残りの分を全て託していたのだった。


「わっ、ちょうどええとこおった、ヒロ、チケット売れた?」
「あ、、まっく 、チケットねえ、あんまり売れんかったよ」
「まあ、売れんわな、そんなには」

そう言いながらも僕はかなり泣きそうだった。
ちなみに当時僕は仲間内から「まっく」と呼ばれていた。
僕の本名を知る人で、同世代の方なら
少しその由来に予想がつくニックネームかも知れない。

売れ残りのチケットは自己負担になる。
僕は下宿の先輩や同級生はじめ、クラスの連中が何枚か買ってくれたので
ある程度売りさばけていたんだけど、何せ1枚600円のチケット30枚、
残りがまだ10枚近くあってそれをヒロに頼んでいた。

看護学校で何とか買ってくれる人を探してみるよって、言うもんだから
すっかり安心して全部預けていたのだ。

ところが、こいつが売ってくれたのがたったの4枚、もちろんヒロ自身の分も含めて。

まあ、他力本願の僕もダメなんだけど、
とは言え、他のバンド連中に比べるとかなり売りさばいた方ではあった。
大抵の奴はほとんど売れてなかったもんな。

そしてメグミはこのチケットを買ってくれた人の中の一人だった。

(お借りしました、ありがとうございます)

家路に向かう僕は何故かRCサクセションの「僕とあの娘」を口づさんでいた。

これがお互い全く何の意識もしていない、
ましてや気になる存在でもない、僕とメグミの初遭遇の瞬間だった。