日本的に言えば「青天の霹靂」とでも言うのか、
予期せぬ出来事であったとしても、それがいい出来事なら問題ない。
これは、そんな予期していない突然の出会いがまるで物語のように目の前で起こった、
そんな話である。
ドラマや漫画の中でしか起こり得ないような不思議な巡り合わせ、
これを運命に導かれた出会いと言うのか、それともただの偶然として終わらせるか。
日々にドラマを求める人ならもちろん前者だろう。
僕自身これは「たまたま」などではなく、
始めから決まっていた出会いが実は「この日」だったのだと今でも信じている。
2009年1月24日の土曜日の晴れた午後、
目の前にはいつもと少し違う奇妙な光景が目の前に広がっていた。
仕事から帰って車庫入れをしていた僕の視界に最初に飛び込んできたのは、
用水路を隔てた裏の空き地でおすわりをしている1匹の犬、
それは明らかにここに迷い込んできたと思われる柴犬だった。
ちょうど母親が外にいたので声をかける
「どしたん、あの犬?」
「ほうよ、ずっとあそこにおるんよ」
何でまた、こんなとこに来たのかなと思いながらもその時はさほど気にもならなかった。
ちょっと迷い込んできただけだと思っていたし、
そのうち気が向いたら何処かに行くだろうと思っていたから。
当時は休みの日の午後は家族で出かけない限り、
家から出ることなどほとんどなく、次第にさっき見た犬の事も忘れていた。
部屋に戻ってしばらくしてから嫁に話をすると
「あぁ、あの犬ってもう二日前くらいからずっとおるよ」
いやいや、それは初めて知った、その事実を知って少し驚いた。
「犬飼いたいなあ」
当時小学校6年生の長女はそんな事を言っていたが、
子供たちが犬の世話をするとも思えず、
僕も犬を飼うというイメージがどうしても浮かばない。
「パパ、犬飼ってあげる?」
長女の話を聞いた嫁にそう言われても、
「そうやなあ、別に飼わんでええんやない?」
僕の返事は素っ気ないものだった。
「夕方もまだおったよ」
夕食時に嫁にそんな風に言われても、
まだこの時あの犬への気持ちは何一つ動いていなかった。
そして、空き地で犬を見かけてから一晩明けた朝の6時前、
外を見ると真っ白の雪化粧。
いつもより少し早く起きた僕は
「まさかなあ」
そんな独り言をいいながら窓を開けてベランダに出てみると・・・!!!
「あ、まだおるんかい~!」
驚きのあまり朝早い事も忘れて声を上げる。
昨日いた場所と寸分変わらぬあの場所に同じように昨日の犬の姿があったのだ。
ただ違っていたのは昨日のようにおすわりではなく丸くなって横になっている事と、
昨日の夜は寒かったのだろう、
今も雪が舞って寒風が吹きすさび、周辺は雪と霜で真っ白になっていた。
僕は昨日あの犬を一晩ほったらかしていた事に対して何ともいたたまれない気持ちになった。
更にあの柴犬がどうしても他人(他犬?)に見えないのだ、
と言うのも20年ほどうちで前に飼っていた柴犬「らん」と瓜二つなのだ。

「前うちにおった子と似とるなあ」
昨日も健気におすわりをする犬を横目に母親とそんな話をしたのだった。