15年と7ヶ月、
いつも私のそばにいてくれた黒い豆柴犬のみんみんが死にました。

人間のようにお葬儀をしました。
骨も、他の犬と一緒ではなく、
みんみんだけにして焼いてもらったのです。

あんなに黒くてふわふわの毛も、
形のいい三角のお耳も、
くるんと巻いたしっぽも、
すべて焼かれて骨だけになって出てきました。

焼かれてまだ熱い骨を、
ひとつひとつ、ていねいに、ていねいに、
拾っては骨壺に入れていきます。

そして前足の骨を拾うとき、
「あっ」と気がつきました。
ワイヤーが、高熱にもかかわらず、
溶けずに残っていたのです。

それは15年近く前、
みんみんが怪我で骨折をしたとき、
かかりつけの獣医さんに外科手術をしてもらい、
骨を固定するためにワイヤーをいれてもらったときのものです。

骨折が元どおりに治ると、
再び手術をしてワイヤーを取り出すのだそうですが、
みんみんの場合は、諸事情あって、
そのままワイヤーを残すことになったのでした。

骨折したときは、本当に大変でした。
みんみんはすごい形相で、
あまりに痛々しかったのを憶えています。

骨折のしかたが複雑だったので、
ひょっとしたら、歩けなくなっちゃうかも、
と獣医さんに言われたのを憶えています。

でも手術は成功し、
それからずっと15年間、
みんみんは思いっきり駆け回り
最後まで歩くことができました。

そのワイヤーが、
前足の骨にしっかりとついて、
残っていたのでした。

それを持って獣医さんのところへ行きました。

「先生の手術のお陰で、
 みんみんは15年間ずっと
 不自由なく走ったり歩いたり
 することができました。
 本当にありがとうございました」

そう言って、ワイヤーのついたままの
前足の骨を記念に、と差し出したら。。。

先生は
「本当にいいの?」

「はい。記念にもらってください」
と私。

「でも分骨はしないほうが
 いいとも言うよ」
と先生。

分骨という言葉を聞いたこともなかった私は、
「どうして?」

骨があちこちにあると、
犬がもどってくるときに、
どこに戻っていいのかわからなくなっちゃう、
のだそうです。
(注:そうではない、と信じる方もいらっしゃいます)

それを聞いたとたん、
近所をうろうろと、
迷っているみんみんの姿が思い浮かび、
「やっぱり。。。返してください」
となりました。

すると先生は、
「そうだ。このワイヤーをはずしてあげようよ。
 楽にしてあげよう」
と言いました。

私が「本当に?」と訊ねると

先生は
「みんみんの最後の手術だ」
と笑って、小さな骨を引き取りました。

その翌々日、電話がかかってきて、
「ワイヤーがとれたので骨を取りにきてください」
と言われて取りにいきました。

見事でした。
あの、細い細いみんみんの前足の骨に、
穴があけられてそこにワイヤーが通されていたのに、
ちゃんときれいに、骨はそのままで、
ワイヤーだけがはずされていました!

「先生、難しかったでしょう」
と言うと
「難しかった~!!」
と笑っておっしゃっていました。

まさに、神の手のようです。
きっと骨を傷つけないように、
しかも焼かれてもろくなっているので、
慎重に慎重にしてくださったはずです。

そんなお金にもならないことを、
お忙しい中してくださったと思うと、
本当にありがたく、癒されました。

こうしてワイヤーがはずれて、
楽になったみんみんの骨は
我が家に返ってきました。

手元供養のため、
ずっとみんみんは今でも、
私と一緒に家の中にいます。

ワイヤーがとれて、
楽になってよかったね。
みんみん。

小さい頃のみんみん