「台湾どうだった?」
ひっさしぶりに帰った家で聴かれて、
「え?」
あ、そうか、台湾にも行ったのか。
というのも台湾の後に、東京に行って、
大阪に行って、レイビレッジに行って、
家に帰った。
すると記憶は「次の旅行」が前方に上書きされていて、
飛行機4つ前に「台湾に行ったこと」を完全に忘れていた。

なんだかそれって、もったいない気がした。
一週間も台湾に居たのに、
「記憶」では「次の旅行」の方が前方に上書きされている。
よーく考えると、人間の「記憶」って不思議だ。
「強烈度」と「占有率」が比例してない。
だって、「これは強烈な出来事だ!」
ってのが過去に何度もあった。
もしもその「強烈度」で脳内に記憶を並べていたら、
①大学の頃の飲み会
②小学生の初恋
③身内との別れ
④大事故
とか?
「インパクト」順に、脳を占拠して行くはずだ。
でも、過去の重大な出来事よりも、
ぜんぜん「昨日の出来事」の方が上に来る。
生物の進化なのかもしれない。
10年前の大飢饉の記憶よりも、
この1カ月の「エサまでの道順」「エサ場の最新情報」とかの方が、
生きていく上では重要なのだ。
10年前にエサが大量に取れた場所なんて、
3日前に見つけた「エサがちょっと取りやすい場所」に比べたら、
生きていく上で何の意味も無い。
そうか、記憶は「強烈度」よりも「最新度」の方が大事なのか。
でも、
昔の出来事の方が記憶に残る「リボーの法則」ってのがあるらしい。
どっちなんじゃい。
まぁ少なくとも経験上は、
「重要度」よりも、「いま」に一番近いかどうかで、
短期記憶に「鮮明に」保存されてる気がするので、
『逆リボーの法則』とでも呼ぼうか。

台湾の写真を振り返っても、もう去年のような感覚だもんな~。
もったいない。
次から、気をつけよう。
大事な旅行の後は、まっすぐ家に帰ろう。
次の些細な旅行で、上書きされちゃう。
たぶん、悲しいことも。
連続で次々に起きたら、きっと最新の「ちょっと悲しいこと」が、
上書きされるんだろう。
嬉しいことも。楽しいことも。
遠くの親戚より近くの他人
みたいなノリで
遠い記憶の重大な出来事より、最近のささくれの痛み
の方がしっかりと「鮮明」に「前方に」来る人間なんて、
ひょっとすると・・・
別に「重要な出来事」「出世」「金持ち」とか求めなくてもいいのかもしれない。
ただ、「いま」に近いちょっとした刺激さえあれば。

今日からまた始まる平日。
この「ささいな日常」の刺激も、
きっと大昔の重大な栄光よりも、
一番「手前」側に残るはずなので、
どうか、この些細な日々が、楽しい「ささくれ」でありますように。
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さとうみつろう
日本の作家・ミュージシャン。高3の長男コクトウ君、中2の長女ザラメちゃん、小1の次女ミリンちゃんの3児のパパ。石垣島で生まれ中学は大分県、大学は北海道。社会を変えるためには「1人1人の意識の変革」が必要だと痛感し、大手エネルギー企業から独立。本の執筆や楽曲の発表を本格化し、初の著書がシリーズ累計30万部のメガヒットを記録。10代の若者を中心に多くの支持を集める。ところ…
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