どんなことでも、

長い時間かけてやればプロになる。




と思ったら大間違いだって部分もある。




タクシーに乗った。

運転歴50年以上の、おじいちゃん。

この道一筋で、今では「個人タクシー」としてやっている。




車の運転には「クセ」があって、

スムーズに発進して、スムーズに止まる人もいれば、

信号が青になるたびに、

「がくっ!」とアクセルを踏んで、

止まるときも、急に「ぐっ!」と踏んで客が前のめりになる人がいる。



このおじさん。

ジェットコースターに乗ってるみたいだった。

ドリフの車のように、ガクッガクしながら進んでいき、

おまけに、左右まで急ハンドルで揺さぶる。



50年間うんてんしてきて、
こんなに下手ってどういうこと?


ってくらい、酔うのである。


ジェットコースターが好きな人は大喜びだから、

そういう需要で生き延びてきたのか?



違う。



タクシーは、人気がなくなったら廃業する

という業種じゃない。


下手でも「次は絶対に乗らないからな!」

って言われないので、

下手なまま、野放し50年。




レストランなら、

「二度と来ないからな!」

で実際に来なくなって廃業になるけど。



そう考えると、

人気商売って大事な気がした。

比較されるのは嫌だけど、イイモノしか残らない。





50年間かけて、

1歩も上達しなかった運転手さんのタクシーの、

そのハンドルの横には、

マッキーペンででかでかと、

「ブレキ」って書いてあった。



もう、おじいちゃん、

ブレーキとアクセルが分からないどころか、

ブレーキと、ブレキの違いも分からないまま運転を続けている。



うん。

人気商売って大事だ。

比べられて、磨かれて、

生き残った店にはプロが光っている。



作家が、人気商売で良かった。




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▼この記事を書いた人 Writer's Info

さとうみつろう

日本の作家・ミュージシャン。高校生の長男コクトウ君と、中学生の長女ザラメちゃん、5才になった次女ミリンちゃんの3児のパパ。石垣島で生まれ中学は大分県、大学は北海道。社会を変えるためには「1人1人の意識の変革」が必要だと痛感し、大手エネルギー企業から独立。本の執筆や楽曲の発表を本格化し、初の著書がシリーズ累計30万部のメガヒットを記録。10代の若者を中心に多くの支持を集める。ところ…

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