企画者として人の賛同を得るため、強引に持論をまくしたてる人がよくいます。しかし、このようなゴリ押しはいかがなものでしょう。特に自分の企画が一番だと熱くなっている時ほど、人の考えを聴く耳を持たなくなるものです。これでは、かえって誰も意見を聞いてくれなくなるのではありませんか? 世の中には「押すばかりが能ではない」という事例が数多くあります。

 たとえば、分かりやすい例をひとつ。お店で商品を見ようかなと思っていると、店員がツカツカと寄ってきて「お探しのものは何ですか?」などとしつこく迫ってくることがありますが、これは俗に「客追い踊り」と言って、かえってお客さまを追い払う結果になるのです。

 また、店舗の入り口にふたをするように立ちふさがりながら「いらっしゃいませ」と呼び込みをしている店員も同様で、お客さまを追い払っているに等しいのです。このように店舗での対応においても、人間心理における繊細な配慮が必要で、よくできたお店では、こうしたことをすべて熟知して営業しています。

 これはゴリ押しだけでは人の心はつかめないということを示す好例です。私たちは、常に自分の立場からではなく、相手の立場に立って物事を考え、相手のためを思って伝える必要があり、そのためには、時には「押すばかりでなく退(ひ)くことも大切」になってくる、ということです。「退く」とは、すなわち自分を主張するばかりでなく、相手のためを思って相手に自由に考えていただく機会を提供するということです。

 それと申しますのも、人が心から納得したり、好意を持ったり、賛同する時は、実は「ゴリ押し」される時ではなく、「自ら考える機会」を意識的に与えられた時だからです。つまり、自分でじっくり判断する機会を与えられるからこそ、初めて深く納得でき、好意を持ち、賛同することができるのです。
 
 企画の提案もまたしかりです。

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