返心 | 旅ノカケラ

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返心


コスモスの花が街道沿いに延々と続いているところがある。
秋のある日、ナカダさんとふたりでバイクを連ねて行くことになった。
どうせなら道端にバイクを停めて、バックにコスモスの花を入れて写真を撮りたい。
悩んだ挙句、国道から小道へ分岐しているところにコスモスの花が群生しているところをみつけた。しばらく、各自それぞれ写真を撮っていた。秋とは思えぬ陽気になり、とても暑い。見渡すところ土手沿いで日陰になるようなものはなく、ちょうど国道に出るかどにプレハブ小屋が建っていた。たぶん休憩所だろう。
「ちょっとそこで休憩してます」
ナカダさんと別れて、小屋の前に行ってみるが、老人クラブ待合所と掲げられた看板になんとなく入りづらい。それでも観光客らしき方々が中でのんびりお茶を飲んでいる。まぁ、そこは元旅人。
「こんにちは!」
ずうずうしく中で腰掛けているご老人に声をかけて中へ入っていった。
気持ちよく挨拶を返され、照り返す暑さから開放されて、ほっとした。
部屋の隅に湯飲み茶碗が置いてあったので、またしてもずうずうしく
「お茶をもらってもいいですか?」
と、声をかけ茶碗を取ろうとした。
すると、「ああ、やりますから、どうぞどうぞ座ってください」
と、ご老人から丁寧に言われてしまった。
ほどなくナカダさんも中に入ってきて、ふたり仲良く腰掛けていたら、お茶と漬物や煮物が乗せられた小皿を差し出してくれた。
それらをとても美味しく頂いていたら、どうぞとコスモスの種が入った小袋を4つも5つもテーブルに置かれた。袋の裏には『内山地区の国道254号線は、沿道に老人クラブが植え始めたコスモスが見事な花を咲かせ、いつからか”コスモス街道”とよばれ、佐久市の名所となっています。』と書かれていた。そうかこの方々が丹精込めてコスモスを植えたから、こんな素晴らしい街道になったのか。今年は台風が来てけっこう倒れてしまい例年に比べて花数が少ないように思う。それでも、コスモスの時期になれば思い出して来たくなる場所だ。コスモスの由来を知って、そうなのかと感慨しきり。しかも、親切なおもてなしも頂いてしまった。
ぼくはこのご老人たちに恩返しをするとしたらどうしたらいいのだろう。正直な話、無料休憩所なのだから、そのまま立ち去ってもいい。でも、じゅうぶんすぎるほどの恩を頂き途方にくれてしまう。通りすがりの旅人で手伝いも出来ない。ふと、入り口に目をやると『老人クラブコスモス募金』と書かれた小箱が置かれていた。せめてもの思いと財布から小銭を出して箱の中に入れて、立ち去った。
100円玉じゃ、コスモスの本数は増えないかもしれないが・・・