その日は気温もぐんぐん上がりバイクで走るにはちょうどよくどこでもいいからただ走っているだけでいい、そんな気分だった。
何度も通いなれた道を走っていたとき、ふと顔を横に向けたら一瞬岩山が見えた。
この道からあんな山が見えるのか。
そういえば、この道を走るときは高速道路並みに飛ばすか、ワインディングロードになったらカーブの先しか見てない。それも暮れかかった時間か暗闇迫る時間か真っ暗な時間のときのほうが多い。
新しい発見は好奇心をくすぐる。
一瞬バイクを停めて、岩山の方向へと延びている細い道があったことを思い出し、戻って山道へとバイクを進めた。
急な勾配にもかかわらず何軒か民家が建っていた。その先が少し開けて岩山がよく見える。バイクを停めて、ヘルメットを脱ぎ、何枚かその岩山を小さなカメラに収めた。
もっと近くから見たい。
車がやっと1台通れるぐらいの道に2台の乗用車が登ってきた。バイクを邪魔にならないように脇にどけて乗用車に通過してもらった。
もっと近くへ!
つづれ折になった道から乗用車が見えなくなったころ、またバイクに跨って上へ上へと向かうことにした。
斜面が急なのか樹木に遮られて岩山がなかなか現れない。
さらに進むと、V字になった谷間があり、やっと岩山を眼にすることができた。
その先で先ほどの乗用車が2台停車している。
車の行く手にはチェーンがかけられ進むことができないようだ。
もっと近くまで、岩山を下から見上げられないのか、バイクに跨ったまま岩山を眺めていた。
すると乗用車から女性が降りてきて「この先は行けないんです」と、近くまで来てアドバイスをくれた。
とっさのことで「この先は行けないんですか?」と聞かれたように思い、「さぁ」と顔を傾げたら「この先は通れないんですよ」と言い直した。
道があるのに行かれない。
しかも、道の脇には小さな杭が打たれ『県道XXXに至る』と書かれていた。
ハイカーのための道なのか理由はわからないが、その場を去りがたく、バイクを降りてもっと岩山が見たいと思って、獣道か地元の人が付けた踏み跡があったので、そこを歩いていくことにした。
αSweetDIGITAL
道はすぐに途切れたが昔は畑を作っていたのかプレハブの小屋があり雑草が生い茂る広い場所に出た。そこから岩山がよく見えて、1つだけだと思っていた山が同じようにもう1つあり独特の山の姿をしていた。
しばらくぼくは山を眺めてから、来た道を戻っていった。

