高速道路を使ってツーリングに出かけたときのことである。
帰りに高速道路を走り、徐々に速度を上げると、これ以上スピードを出せば車体がばらばらになってオレは死ぬなと感じた。長くバイクに乗っているが、一度もこのような恐怖を感じたことはなかった。それも車体の揺れが激しくなって、車輪のネジが外れ、高速で脱輪して転倒してしまう光景が運転しながら頭の中に広がってくる。恐怖がおさまるぐらいにペースダウンして、次々に車に抜かれていった。
これは闇夜がそう思わせたのか。
いや違う。
行きに速度計いっぱいにエンジンを回してもまだまだ余裕を感じたからだ。
その日を境に、ギアチェンジするたびにガシャガシャ大きな音を立てるようになり、バイクに乗るたび不快感を感じ、気が滅入るようになった。
何かがおかしい。
バイク用品店で接客のバイトしていても、近くにいるぼくよりも遠くにいるスタッフが声をかけられることも度々に出てきた。いたって普通に振舞っているにもかかわらず、何か顔の表情に出ているような思いがつのっていた。
今日、新しく入ってきたバイト君のピット作業の研修のためにぼくのバイクでオイル交換が行われた。そのあと、チェーンの調整スライダーがずれているから、それも調整しておくからと研修指導のスタッフに言われた。帰りにバイクを受け取ると、スプロケットのナットがすべて緩んでいたという。
バイクはエンジンの力をチェーンで後輪に伝達して後輪を転がして走る。もし、走行中にすべてのナットが外れてしまったら・・・。チェーンがスプロケットから外れ、どこかに挟まり急激に車体が停まって、運転しているライダーは前方へと大きく投げ出される。運が悪ければ、死が待っている。そう考えると、かなり恐ろしい。
顔に出ていたもの。それは、もしかしたら、死相が顔に出ていたのかもしれない。
でも、今日はラッキー・ディ。そう、幸運な日。バイクの調子も戻り、ぼくの調子も戻った。今日という日を境に、またぼくは生かされてしまった。