日本語がわからない日本人 | 旅ノカケラ

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@人生は先がわからないから、面白い。
@そして、人生は旅のようなもの。
@今日もボクは迷子になる。

▼某月某日
毎日、オートバイのヘルメットを売っています。
売り場には、メーカーから借りた高額ヘルメットを真っ二つに切断したディスプレイ用ヘルメットを置いています。
これはヘルメット内部がどのようになっているか一目でわかり、ヘルメットの外見を見てもどのメーカーも同じに見えてしまう人でも、違いがわかるようになっている。
ディスプレイ用だからといって特別に作られたわけでもなく、販売されているヘルメットと同様に作られた5万円もするメーカーのトップモデルをメーカーの方が手作業でカットした貴重なものである。
そんなわけで、誰でも手が届く陳列棚に商品と一緒に置いておくため『こちらは商品ではありません。お手を触らぬようお願いいたします。』とラベルを貼っておいた。
ところが、触るだけにとどまらず、両手で抱えていじくりまわす人が後を絶たない。
特に業界用語で言う「小僧」が多い。なかには、いい歳した白髪交じりの「オヤジ」も持ち上げて手で重さを調べている人もいる。
近くにスタッフがいてもお構いなし。
こんなとき、この連中は果たして日本語が読める人々なのかと疑問に思ってしまう。
商人(あきんど)魂100パーセントならば、楽しんでいるお客さんに水を差すことは決して言わないだろう。
それが私の性分としては、とても我慢が出来ない。
まさかと思うが、日本語が読めないようだから注意するしかない。


「申し訳ありません。そちらは商品ではないのでご遠慮ください」


すいませんと謝って、戻す人。
むっとして、戻す人。
あっ、ここに書いてあったねと、しらじらしく戻す人。
平静を装い黙って、戻す人。
リアクションは様々。


あまりにも悪戯されるので、何かいい方法ないものかと色々考えた。
一番よさそうな方法は透明なケースに入れてしまうこと。
しかし、わざわざケースを買うような経費もない。
そこで自作することにした。
ラミネート用フィルムが備品でたくさんあったので、それを使うことにした。
まず、一枚の長いシートを折り曲げて、セロハンテープで留めて、ヘルメットを囲むようにした。
セロハンテープを貼った部分は痛々しく、綺麗に見えないので、その部分を後ろにもっていくとなんとかプラスチックケースのように見える。
天井部分を覆って、セロハンテープを貼り付けると、汚らしく見にくくなってしまう。
さて、どうしたものか。
天井部分が開いていたら、また悪戯されるかもしれない。
そう思いつつ、天井部分は何もフタをしないで、ヘルメットを展示してみた。
すると、不思議なことに誰も触ろうとしなくなった。
その気になれば、触れるというのに、たった1枚の透明なシートで囲っただけなに・・・。


世界遺産に登録されている場所の有名な杉の表皮が剥がされたという。
隔離するように展望デッキから眺めた杉は、まるで動物園の動物を眺める気分だった。
できれば触れてみたいと誰もが思うに違いない。
そして、人目がないときにデッキから外れて杉に手を触れたと自慢げに話をする人にたびたび出会った。
だから、この事実は、いつかは起こりえることだったと思う。
だったらいっそのこと、杉をビニールハウスに入れてしまおうか。
きっとわざわざ数時間もかけて見に行く人も減るでしょう。
そうなると、ぼくも見に行かないけれども。