クリスマス・ストーリー | 旅ノカケラ

旅ノカケラ

@人生は先がわからないから、面白い。
@そして、人生は旅のようなもの。
@今日もボクは迷子になる。

メリークリスマス。
小話をひとつ、どうぞ。
もちろん作り話です。

「みんな、絵が描けたかな?先生が見て回るわよ、いい?」
「ジュンコちゃん、どうしてサンタさんがミニスカートはいているのかな?」
「先生、昨日ママと駅前のケンタッキーに行ったら、オネーさんがこんな格好してたよぉ」
「フミオくん、サンタさんはバイクに乗るのかな?」
「うん、ママがピザ頼んだらサンタさんが持ってきたよ。サンタさんがどこ行くのか窓から見ていたらバイクで走っていたもん」
保母のエリナは子供たちが描いたサンタを眺めながらため息をついた。
子供たちにサンタを描きなさいと描かせてみたら、どれも自分が子供の頃に話に聞いたサンタと程遠い。
白と赤のお決まりの服に三角の帽子をかぶってはいるけれども、どうしてミニスカートなの?どうしてソリじゃなくてバイクなの?
トナカイに引かれたソリに乗ったちょっと小太りの白と赤の洋服に三角帽、そして白い髭。
それがサンタのイメージじゃない。
気を取り直して一番奥に座っているタダシくんの絵を見ると、冬山らしい風景の中にサンタが描かれていた。
丁寧に白い大きな袋まで書き添えてある。
でも、よく見ると袋を持った手の反対側には黒い長い棒が描かれ、足の前後にも長い棒が描かれている。
「タダシくん、上手く描けてるわね。でも、これは何かな?」
「先生、去年、パパとママとソリ遊びに行ったらサンタさんがたくさんお山から落ちて来たよ」
落ちて来たって、サンタの格好をした人が滑ってきたんじゃない。
もおぅ、今の子供たちってひとりもサンタの話を知らないのかしら。
「はーい、みんな、よくサンタさんを描けましたね。おとうさん、おかあさんに見せてあげてください。それじゃあ今日はクリスマスだからあそこのクリスマスツリーにおうちから持ってきた靴下をぶら下げてね。みんながお昼寝している間にサンタさんが来てプレゼントを入れてくれるわよ」
「先生、ぼくんちパパがプレゼント、買ってきてくれるよぉ」
「わたしんちはママが用意してくれるって」
子供たちは口々に誰がプレゼントを買ってくれるとか、何を買ってくれるとか、騒ぎ出しはじめた。
「はい、はい、わかりましたからお昼寝しましょうね」
子供たちが寝息を立て始めると、エリナはそっと外に出てユーミンの『恋人はサンタクロース』を口ずさんだ。
今日はクリスマスだから何か奇蹟が起きないかしら、と心の中でつぶやいた。

大人の方がクリスマスに何かを期待しているのかもしれない。