▼某月某日
つづき。
カーブをいくつか走り抜けたら、「明智平」の看板が現れ、広い駐車場があった。ロープウェイで更に眺望がいい場所まで行かれるのだ。
道の片隅に片足を出して停まりシールド越しに見上げれば、雲がかかっている。雨雲のように重たそうな鉛色の雲が立ちこめている。雲を突き抜けて上へ行けるならば、雲海が望めるかもしれない。でも、「明智平」は雲の中にあるようだ。
ミラーにウィンカーを出して駐車場に向かう後続の乗用車が見えたので、ぼくは走り出した。
トンネルを抜けると、中禅寺湖。
観光地そのもので人がいっぱい。
ほとんど湖畔の広葉樹林は落葉してしまい、わずかに紅葉が残っている樹の前で写真を写している人もいる。
のびやかな表情や穏やかな表情、そして笑顔がこぼれる表情、カップルはいかにも幸せそうである。
湖畔と人々を眺めながらゆっくりと走る。
さて、ここまで来たらUターンして戻ってもいい。
どこかにバイクを停めてゆっくり休もうか。
適当な場所がなく湖畔の外れまで来てしまった。
この先に戦場ヶ原がある看板が現れ、それを見たら、無意識にアクセルを開いていた。
湖畔を過ぎると、紅葉は1枚も見かけない。
寒々した丸裸の木々たちに囲まれた道を走る。
やがて右手に土産物屋と食堂がある大きな駐車場、その後ろにそびえたつ男体山が姿を見せ、左手には広大な枯れ野原が広がっていた。
戦場ヶ原だ。
ぼくはバイクを駐車場に入れ、小休止することにした。
戦場ヶ原は広大な湿原なのだが、目の前に見える景色は枯草が続く平原にしか見えない。木道の散策路を歩けばもっと違う風景が見えてくるかもしれない。でも、青々とした草原に咲き乱れる花の時期に歩きたいものだ。
湿原に突き出た展望所で寒々とした平原と彼方に見える日光白根山を眺めた。
周辺は針葉樹林が色づき、カラッとした空気に包まれている。
しかし、物思いに耽るほど静まり返った雰囲気じゃない。
平日の午後なのに人々でごった返し、入れ替わり立ち代り展望所で写真を取っては去って行く人々がたくさんやってくる。
さて、走りだそうか。
つづく・・・