新聞に連載された小中生を対象にしたエッセイになるでしょうか。担当された共同通信の記者の方が出される漢字「一字」に先生が書かれるというスタイルです。毎回先生と愛猫のまるちゃんの風刺画があり(漫画も)、写真も入ってます。


第1章 自分の頭で考える「考えないと楽だけど、楽をすると後で損をしますよ」

お題の漢字は「耐、草、毒、寛、本、技、熱、庸、情、流、人、雑、排、明、健、加」

知識と行動をセットで学ぶことが大事

世の中には「正解」がないことも多い


第2章 生きるために学ぶ「世間で無事に生きるというのは、難しいことなんですよ」

漢字は「学、伝、知、泣、炎、嘘、子、嫌、切、怪、悲、気」

安全安心な環境は、学ぶ態度を作りません

今の教育は、もっぱら「禁止」になっていませんか


第3章 自然に目を向ける「生き物は答えです。35億年を生き延びてくるためにどれだけのことをしてきたのか。その答えが今、生きてるんです」

漢字は「視、犬、猿、馬、亥、鳥、鼠、牛、木、食、嫌」

体は、田んぼにも、海にも、つなかっているんです

自然との共存は美しい言葉ですが、実際には難しい。大切なのは、嫌いでも害はない、ということに気付くことです


第4章 科学の視点をもつ「「当たり前じゃないか」などと言わないで、あれこれ考える。面白いと思いませんか

漢字は「力、似、水、雲、塩、朋、管、口、乱、寝、記、究」

分子の数でいうなら、私たちは水なんですね

水という物質が持つ性質が、生き物のあり方を決めています


第5章 社会の常識を疑う「みんながそうだということが、必ずしもそうではないのです」

漢字は「夏、闇、働、森、父、擬、能、古、生、参、和」

世間は突然変わる、そういうことは、またあるでしょう(補足すると敗戦によって教科書に墨を塗った経験から。そしてメディアは信じない)

生物の世界は、弱肉強食のような生存競争だけではありません


第6章 不確実な時代をどう生きるか(世界が変わるのではありません。自分が変わると、世界が違って見えるのです)

漢字は「新、遊、絵、修、運、師、会、豊、旅、徳、裕、喜、好」

修行で「できてくる」のはその人です

大切な基準は「これを楽しむにしかず」だと思います


第7章 特別講演「変化するとき」(福島県立浪江高校の生徒へ)

養老先生とよく虫取りをされる方が東日本大震災で「仮説仏壇」をボランティアで作られたそうですが費用が膨大になり(申し込みは4000セット)、家業(材木店)の運営が難しくなりかけた頃に新聞記者の取材があり、紙面に掲載されたことによって寄付が集まり、差し引いたお金で養老先生の講演を聞いてもらい心の支えにしてもらおうと開かれた特別講演の書き起こしです。

東日本大震災によって生活環境等含め大きく変わった生徒さん達の人生に響いたと思います。


自分で解く体験をすると、自分が変わるんですよ


講演を読んで思ったのは古典の大切さ。そして、戦後の教育は個人尊重の価値観が行き過ぎているのではないか、という先生の考え方には頷きます。著作では今朝の『虎と翼』でも話題になりましたが、闇米を拒否して亡くなった判事の方の話しも出てきました。手塚治虫先生の話し、花粉症の話しは面白いですね(日本人がどうして花粉症になったのか)、中村哲さんのお話しもありました。最初はパキスタン🇵🇰に登山隊の一員として参加。そのきっかけがモンシロチョウ。そこからの活動で🇦🇫に行かれたんですね。初めて知りました。


先生に毎回漢字のお題を出されていた記者の方は(養老先生が実践されている)思い込みにとらわれず観察することの大切さを、次世代を担う子どもたちに分かりやすく伝授してもらいたい、という考えからの執筆依頼だったそうです。そして、出版社が広島県の田舎でした。記者の方も先生もお知り合いのようで、「田舎にかけよう」というお気持ちに賛同されて(本当に田舎、です)。


「何もかも流して澄める春の川」照井翠句集『龍宮』より



最後に養老先生が引用されたこの句が印象的で…

作者の方は東日本大震災を経験された方だそうです。




被災された皆様が早く落ち着かれますように…

世界が平和でありますように…

感染症対策を😷(沖縄でコロナが⤴️しています)