ヤマザキマリさんのいつものエッセイとは違って、多くの国を訪れ、数カ国に居住されたマリさんの「比較文化論」といった内容で大変、興味深いものでした。マリさんのエッセイは大抵のものは読んでいるので彼女の考え方がどこから来てるのか、私とは違う、といった箇所もありますが、多くは頷ける内容でした。特にコロナによるパンデミック、という特殊な状況下においては秀逸な1冊ではないかと思います。

ただ、出版が2020年なのでコロナ禍においては始まりの頃。今とは状況が随分と違います。だからこそ、よくわかり、参考になりす。


コロナでご主人が待つ🇮🇹に帰国できなくなったマリさんは🇯🇵に滞在することになり、そこから俯瞰の立場で世界を見ようと。外出ができないからこそ、今、でしかできない事をし、物事を考える、そういう生活をされていたそうです。


私の記憶だと麻生副総理が欧州の会合でコロナに気をつけてと発言されても、あれはアジアだけだろう、と言われて気にとめる国はなかったようですが…マリさんのご主人は警戒されていたようです。だからこそ、帰国はするなとアドバイスされました。


第1章 たちどまった私と見えてきた世界

🇨🇳と🇮🇹の関係の深さが書かれてますが、2024年、メローニ首相は🇨🇳の一帯一路から脱退し移民の受け入れ拒否の方針です(🇯🇵のメディアは極右と表現しますが、どうでしょう?)。🇮🇹の経済は回復傾向です。ここでマリさんが取り上げているのは、各国首相のメッセージについて。🇯🇵は安倍総理でした。ヨーロッパの「弁証力」との比較です。そして芸術への支援の比較。🇯🇵の「不要不急」という言葉の曖昧さ。


第2章 パンデミックとイタリアの事情

🇮🇹と🇯🇵の疫病対策の比較をローマ帝国から。そして、🇯🇵の事情をご主人に説明されてもおかしいと、政府や報道に騙されているのではないか、と。ここでマリさんは自分の「猜疑心」について説明されています。🇮🇹に来て何度騙されたか。その結果、疑念の塊でできた人間になったと。でも、疑いを持つ事は大切で番組で共演された専門家の方の「感染症を防ぐのは想像力」という言葉。マリさんはイタリア人が持つ「懐疑性」はこの想像力から来ると書かれ、そこに生き残れるかどうかがかかっている、と。


第3章 たちどまって考えたこと

マリさんは外出できないこの時期、息子さんと映画を鑑賞されていたようですが、それは主に戦後すぐのもの。🇯🇵のものだと黒澤明、小津安二郎、市川崑、李相日(『フラガール』)。そこから何を息子さんと共に感じられたかを書かれ、戦後の漫画家や作家、松田聖子さんまで語られていきます。そして、お笑い。兼高かおるさんについても書かれ、ゴールの決まった番組作りでは、革新的な思想や形式に囚われない表現の自由を生み出すパワーは生まれてこない、と。

人生とは思い通りにならないもの。どんなことでも起こり得るもの。戦争を体験し生き抜いた世代が生み出したもの…


第4章 パンデミックと日本の事情

マリさんから見て日本のコロナ対応への疑問が書かれています。諸外国と比較してどうなのか?それに対する国民の反応は?等々…

そして、日本人のSNSの使い方や世間体優位という考え方。最終的にはそれが明治維新以降の日本の民主主義への疑問へと繋がって行きます。


第5章 また歩く、その日のために

2020年はコロナ禍といってもまだまだ最初です。これからの時期です。今は2024年。コロナが5類になって1年経ちましたが、この1年で1万6千人の方が亡くなりました。ご存知ですか?先週だったか発表がありました。マリさんはパンデミックの後には大きな変化があると。ルネッサンス、ヒットラーがそうだと。そして、コロナ。世界は混沌としています。🇷🇺と🇺🇦、🇮🇱とハマス、ヨーロッパと🇺🇸の混乱。🇯🇵は安倍総理が暗殺され、岸田総理は暗殺未遂。世界は様々な問題が起きています。マリさんが「強く生き抜いていくためのあらゆることが(コロナ禍において)問いかけられている」と結ばれているように、考える時期にあるように思います。


〈余談〉

マリさんはこの本で🇹🇼の「オードリー・タン」さんを取り上げられていたんですが…マリさんの疑念の塊が大きくなりませんように。

帰国できなくなったマリさんはご主人とよく話されたそうですが、一つの事象に対しての考え方が真反対ということがよくあって、言い合いになり、喧嘩になると。これは作家の青木奈緒さんが書かれていたことですが、異文化の人と仲良くなろうと思ったらとことん喧嘩する事と。そこから仲良く出来た人が親友。何でも話せる。そう人が何人か(少ない人数でした)いればいいと(青木奈緒さんは🇩🇪に10年)。

日本人目線で全てを語るとおかしくなるという事を最近強く感じた事象があったので。いろんな場面で異文化との違いを感じてます。共同親権もその一つになるのではないでしょうか?世界の中の🇯🇵、という事を考えなくてはいけないと思います。



被災された皆様が早く落ち着かれますように…

世界が平和でありますように…
風が強すぎ…

🇸🇰の首相の暗殺未遂がありました。