いつもの時代物のアンソロジーです。人気のようで年に三冊発表になります。今回は、

が好評だったので姉妹編として編んだもの、と。細谷さんが解説で書かれていました。


『福袋』…朝井まかて

芸は身を助ける(ちょっと違うかもですが)のお話しです。あまり器量良しとは言えないお壱与が婚家から(三回りも年上の男の後添え)返された。弟で乾物商を営む佐平は…困った。店の三代目だが売り上げは減るばかり。嫁との仲も最悪で佐平は外に女がいる。離縁したいがお金がない。この時代の婚姻制度についてこの部分を例えるなら離縁する際には結納金を返さなくてはならない。なら!姉の婚家から貰えばいいと思い立ち佐平は早速出かけるが…驚いた!返された理由が姉の「大食い」だったから(だからお金は返さない。こちらが貰いたいくらいだと言われてしまう)…そう言えば姉は確かによく食べる。家には何もない…頭を抱える佐平…でも、これを(姉の大食い)使えば、もしかしたら…これが大当たり!お壱与は大食い大会で次々と優勝。賞金は全て佐平の元へ行くがお壱与は気にすることもない。彼女は食材の産地をあて、味わって食べるという綺麗な食べ方をする。離縁の際のお金もあと少しとなったときに、勝ったら百両という大勝負を持ちかけられ、受けることに…

この大勝負が姉弟の別れ道になりました。

江戸時代から大食い大会はあったそうなんです。いろいろと勉強になったお話しでした。

『びっくり水』…中島久枝

びっくり水は料理用語で、沸騰してふきこぼれる寸前に水を差すことです。絶妙なタイミングで。

おみちの父親は腕のいい和菓子職人だが…働かない。気が向いたときだけ働く。父親の作る和菓子を目当てに来る客もいるし、作った日にはあっという間に売り切れる。いつもそうだったらいいのにそうはならない。だからおみちの家は貧しい。母親が代わりに作ってもさほどは売れない。おみちの友人がそのうち奉公に出されるよ、と言い出すものだから不安になって…おみちはある事を…

家族を助けるびっくり水とは?

憎めないお父さんでした。でも、働いて、です。


『猪鍋』…近藤史恵

こちらは「猿若町捕物帳」シリーズの主人公、南町奉行所定町廻り同心の「玉島千蔭」の話しです。男前だが非常に堅物の千蔭。災いなのか幸いなのかは不明ですが、見合い相手が自分の父親と結婚して妊娠。千蔭は年下の母親と年の離れた弟妹ができることに。その義母が悪阻で何も食べれないと知って懇意の役者に相談する。

そこで紹介されたのが「猪鍋」の店。食べれるのか、と心配していた千蔭だったが杞憂に終わり義母はよく食べた。月が変わり、北町奉行所の月番になるとこの店に問題が頻発する。そして店の女将が川に落ちて亡くなってしまう。何があったのか…女将は働き者だったが、料理人の夫は店が順調ということもあって吉原の遊女にいれあげていた。気になる千蔭だったが…動くことはできない。それが思わぬところから事件解決のヒントが…日本食は調理によって毒も食べれるようにしますから(最近だとイタドリでしょうかね。ご存知ですか?)。

それから堅物の千蔭に持ち込まれた見合い話し。家の格から言っても絶対に断れない相手。会ってみると…なかなか個性的な女性で嫌なら断って、と。私も断るからと。どうなるでしょう?一応、進めて、ということでしたが…


『桜ほろほろ』…五十嵐桂子

今回の『はらぺこ』で一番気に入った話しです。

主人公の「さゆ」は薬種問屋の娘ですが旗本の奥方に仕えて四十年。五十五歳で独り身のまま実家に戻りましたが…物足りない生活でした。それが旧友の小夏と偶然、再会した事をきっかけに「蒲公英」という団子屋を始めたことから、知り会っていく人々との話しでした。

派手さはないですが、確かな筆力というものはこういうものではないかな、と思います。

食の知識もふんだんに…

細谷さんも書かれていましたが、ぜひ「シリーズ化」にしてください。


『糸吉の恋』…宮部みゆき

「回向院の茂七」シリーズからですが、タイトル通り親分ではなくて手下の糸吉の話しです。

糸吉はお気に入りの場所、菜の花畑で見かけた「おとき」という名の娘に恋をして、彼女の話しを聞いて茂七親分に伝えても…反応がない。おときに夢中で他が見えない状態の糸吉は「手下を辞める」と言ってしまう。でも、何か…

そんなときに向かうのは、いつもの…屋台…

何があったのか、みんな知っている。

そんな話しで菜の花づくしでした。




今日で如月も終わりですね。閏年…
明日からは弥生です。ひな祭り🎎
やっぱり、大切な行事ですね。

能登半島を中心に被災された皆様が早く落ち着かれますように…
世界が平和でありますように…
コロナとインフルエンザに気をつけて😷
(また、新しい型のコロナウイルスができたようで…ほんとやっかい)