太田愛さんの新作で2021年からの初めての新聞連載を纏められた作品です。読み始めて、これは『相棒』の2022年の元旦スペシャルとリンクしてる、と思いました。あのドラマをもっと膨らませた作品と。そして、今の日本の現状を実によく現してると感じました。内田先生がよく「事件が僕を追いかけてくる」と発言されていましたが、太田愛さんもそうなられたなぁと。私が読んだ時期がよかったのか、とも思いましたが。ただ、読み手によっては誰が誰を批判しているのか、が反対になってしまうでしょうから自分の考えをしっかりと持つ、情報を自分で確認する、それも多人数、そういうことが大事だと思います。


新聞をとっていた頃は自動車会社の「期間工」募集という文字をよく見ました。今はボリビア🇧🇴に住んでいる従兄弟が帰国したときに働いていたような記憶が…。通貨の単位が違うし「期間」というのも家族を待たせている彼には都合がよかったのだと思います。

作品の舞台は大手自動車会社「ユシマ」の生方第三工場。そこで働く期間工の脇と泉原、派遣工の矢上と秋山の4人が中心人物となります。きついシフトを組んでの作業の為それぞれ面識はありません。どうせ期間工、どうせ派遣。反対に本工と呼ばれる正社員はああはなりたくないという思い。同じ労働をしているのに帽子についた線で区別されている。分断統治に近い現場で流れ作業を日々こなしていくだけ。


この4人に夏休み、うちに来ないか、と声をかけたのは本工で班長の玄羽。亡くなった妻の実家だという海の近い家で彼らは2週間過ごします。

この休みが彼等を劇的に変えて行きます。4人にはそれなりの事情があって今の期間工、派遣工に。でも、その立場がどういうものなのかはわかっていない。どうして契約年数を勤めたら半年休むのか、さえも。そんなものなんじゃないんですか?そう思ってました、で終わってる。それが間違いだと気付かせたのが玄羽。詳しく説明してもらってから彼等は学ぶように。玄羽の親戚だという宗像朱鷺子の家で本を読み、ネットを使い知識を仕入れて行きます(彼等が知識を得ていく章は知らない事ばかりで勉強になりました。知らないのは4人だけではなく私もでした)。


玄羽が作業中に体調不良を訴えてそのまま亡くなりました。彼は同じユシマの本工として働き亡くなった男性(玄羽夫妻可愛がっていた)の妻が労災を認めてもらうよう起こす裁判で証人になる予定でした。ユシマに労災はない。これだけです。妻はあまりにも残業の多い夫を心配して日々記録をとっていました。

玄羽が証言する予定だと会社に伝わると周りから人が消えました。以来、いつも一人でした。

玄羽が亡くなったとは知らず、4人は心配して病院に行きますが…


突きつけられた現実に彼等は…


先ずは脇が立ち上がり、3人を「はるかぜユニオン」に連れて行きます。そして、4人で労働組合を作って自分達の待遇改善や賃金格差を改めさせ、何より玄羽の労災を認めさせよう、そのために会社と交渉しようと決め、4人はここで國木田莞慈(相談役)の元で再び学びます。


この4人の動きを察した会社側は与党の幹事長中津川にアポをとります。社長の言葉を伝えるのは副社長の板垣。政治家を動かすために柚島はパーティー券を与野党問わず買う。こういうときのために…

中津川は警察庁警備局警備企画課・課長の萩原に連絡を取り、この件は警察庁組織犯罪対策部(公安)・課長の瀬野が担当することに。4人を「共謀罪」で逮捕する。そう決められました。


ドラマだと賃金格差解消の為の裁判が進行していて、与党の政調会長が最高裁判事を経済界の重鎮と引き合わせようとする場面があります。

経済界と政治の癒着を太田愛さんはずっと書かれていましたが、今回はさらに警察、メディアが組み込まれています。


4人はどうなるのか…




石川県、能登半島が落ち着きを早く取り戻しますように…

世界が平和でありますように…

コロナ(新しい型のウイルスが流行しています)とインフルエンザに気をつけて😷