以前、娘が読んでいた本の解説で「本の持つ社会性」と言う事で紹介されていたと教えられ、読んだ?と訊かれたので、記憶が曖昧ながらも説明。その後に図書館に行くと偶然にも返却棚に並んでいたので借りて、「読まない?」と渡すと、沈黙だったので私が読みました(再読になりますが)。


始まりは少女が交番にある人物が自分の所の簡易旅館にいると告げるところから。少女の緊張ぶりが伝わる文章です。


ドキュメンタリーのような構成で話しは進み、読者は番組でインタビューを受ける関係者の話しを聞いているようです。


豪雨の夜に(今で言うところの)タワマンの25階から人が転落したと管理人室に連絡が入り、管理人は、警察、消防と連絡をとり25階に行くと、そこには三人の遺体が…

でも、この人物達が誰なのかわからない。書類では夫婦二人に中学生の男子のはずなのに遺体は、夫婦ではあるけど年齢が合わないし、中学生ではなくて老女、転落したの20代の男性、一体誰なのか…


時代はバブルが弾けた頃の話しです。

田舎で育ち父親が公務員ということもあってバブルとは縁のない生活でしたが、お子さんが家のローンを払えないので肩代わりしてるという話しを偶然聞いて都会の人は大変なんだなって思いました。ローンが払えなくなった先にあったものが『理由』になります。


その後の調べで遺体で見つかったのは「占有屋」と呼ばれる人達でした。競売にかけられた部屋に住み入札した「買受人」から立ち退き料を要求する人達。ところが斡旋した業者も三人は住民票とは違う人物だったと知らされ驚愕するのでした。


戸籍上は妻となっていた女性の身元がまずわかり、次は母親となっていた老女の身元。彼女は全く別の場所に住んでいたのになぜ東京に?そして、最後までわからないのが息子となっている若い男性、彼は一体、誰?


警察はマンションの住民に目撃されていた買受人を疑いますが…ある人物が女性も目撃していました。


最初にマンションを購入した一家

買受人になった男の家族の話し

占有屋の男性の話し

妻とされていた女性の話し

母親とされていた女性の話し

そして、最後に買受人本人の話し


バブルが弾けた後の暗い時代…

ローンが払えなくて、会社の借金が払えなくて暗いニュースばかりの時代でした。家族に与えた影響も大きいと思います。


社会性という意味では確かに象徴的な作品で、バブルの頃の「地上げ屋」を「土地取引」の事と若い方が思っているのは間違いではないですが意味合いが…(知らなくてもいいですけどね)そこから何があったのか。例えば千代田区はどうなったか、とか…



ミステリーをよく読みますが、海外の最近の傾向として不適切な表現を是正するとしてクリスティの作品も変更されそうだとありました。個人的にはそれはいかがなものかと。初版から重版を重ねて作者が変更するということはありますが、第三者がそれをするのは?不適切なのは「今」で発表された当初は違います。寧ろそのままにすべき。それが時代であり社会性だと思います。何より、作品の意味合いが違ってくるのに…


最後、管理人と部屋に住んでいた中学生男子の会話が象徴的でした。みんな息苦しさを感じて生きにくかった時代。そこから、「今」に続きます。



780頁ですが、読み応えがありますのでぜひ…

要所、要所で今も変わらないなって、思う場面が出てきます。





世界が平和でありますように…

コロナとインフルエンザに気をつけて😷