から4年後の「森口泉」、の姿です。
親友を殺され、事件解決をしてくれると信じていた警察組織は……信じることができなかった。誰も真実を捜査してくれないなら…

泉は県の行政職を辞め、30歳で県警採用試験に合格、31歳で交番勤務、32歳で交通課、33歳で刑事に登用された。そして、今、捜査支援分析センター(機動分析係配属)の面接を受けている。
泉はあの事件以降、全ての時間を刑事になるために費やした。何の取り柄もない自分が刑事になるには、と考え、外国人犯罪が増加傾向にあることから中国語と韓国語を学び、パソコンのスキルも上げた。そして、何より鍛えたのが暗記力と記憶力(生まれつきの能力である瞬間記憶はないのでトレーニングで)。そして、筆記テストでは結果を出したと思っていたが、追跡実技テストで失敗した。相手は機動分析係長の黒瀬仁人警部。
その黒瀬とセンター長の宮東譲警視が面接官だった。型通りの質問の後、黒瀬から追跡中の質問を受け、答えたが、言われたのは「捜査員失格」だった。

絶望感だけだった泉に思いもよらぬ結果がもたらされた。それは「十二月一日付けでのセンターへの異動」だった。驚く泉に、課長から黒瀬警部が(他に有力候補がいたにもかかわらず)推したそうだ、と聞かされた。

機動分析係はクセのありそうな男ばかり(5人)。その中にスペカン(実力ではなく、特別扱いの意味)と思われている泉が入った。仕事が忙しいというのもあるが、誰も泉に声もかけない。仕事ができるとも思っていない。泉の経歴はおそらく知っているだろうし、そこに黒瀬が推したとなれば、誰かのひきがあっての特別扱いのスペカンと思われても仕方がない。でも、この中で自分はやるしかない、と思う泉だった。

異動初日の午前中は轢き逃げ犯を防犯カメラで追い続け、犯人を特定できた。遅い昼休みを取ろうとした泉はかっての同僚から「金庫からお金がなくなった」と知らされた。その金額、約1億円…

内部犯と思われるが、分析係は署に出入りしている人物をチェックする。規則通りに金庫のお金がチェックされてるなら期間も定められるが、実はルーズな管理で、金庫の中の最終確認は1ヶ月前だった。その中で、1人の人物か浮上した。早期退職した前会計課の課長保科賢吾。9月30日付けで退職して、その後に計4回署に来ている。(仮に彼が犯人なら)1人で1億円近いお金を運ぶには、それくらいは必要だろうと思われた。

保科に対する調査と行動観察が始まった。母親は施設に入っているので現在は一人暮らしだが、保科のお金の流れが気になる。計3千万円の借金が退職後に返済されている。それに加えて母親の施設入所に必要なお金。その金額は退職金ではまかなえない。そのお金はどこから…

泉は保科の車を尾行する1台の車に気がついた。
誰なのか…
黒瀬と宮東に呼ばれて写真を見せられ、この中にいるか、と問われて泉が示したのは…
「ソトニ」。警視庁公安部外事第二課(アジアを担当)。この事件は考えてた以上にでかい、そう黒瀬が呟いた。

黒瀬は事件の核心に迫るようなことは誰にも話さないと(過去の事件から)と泉は教えられた。その黒瀬が泉を伴って中央署に行き、生活安全部少年課の林課長に会い「受け子のリスト」が欲しいと伝える。渡してもらう事を確約してもらった帰り、保科が死んだと連絡が入った。現場に急行すると警察よりも先に公安が来ていた事を知らされた。そして、本部に戻れば、黒瀬に謹慎処分が出ていた。理由は、匿名で詐欺事件の受け子から見逃す代わりに金を受け取っているとの情報提供があった、というものだった。

泉は「リスト」の受け取りを黒瀬から頼まれた。


ここから事件が解決に向かいます。ポイントは「受け子」。先日の銀座の高級腕時計強盗事件。素人目にもあんな杜撰な事で逃げ切れると思っているの?と思いましたが…
犯人は16歳から19歳。これから何が起きるのか、わかってるとは思えないです。自分達だけではなく家族も巻き込むことになるのに…この事件のように。そこに公安がどう絡んだのか…詐欺事件の主犯は海外、東南アジアにいる場合が最近は多いですね。

前作のサクラでは、ちょっとあまいかなぁと思っていた泉でしたが、覚悟を持って刑事になってからの彼女の凄まじさを作品から感じました。でも、彼女はスペカンとしか見られない。
いつか、本物のスペカンになれる、そんな日が来ると思ったラストでした。


そして、この事件、元になったのは広島県警ですね。あれは結局、幹部が賠償したということで終わりました。犯人はわからない。疑わしい人物はいたようですが…疑わしいだけ。それに亡くなっていましたし…いつか、わかる日が来るでしょうか?


世界が平和でありますように…