本当なら全焼した杉田の自動車修理工場で修司も杉田も殺されていただろう。そうならなかったのは杉田の反抗心から。全部、言いなりって言うのは、という。それが結果としては2人を救ったことになった。
修司は杉田に山の中の展望台に運ばれた。なんとか助かるためにひたすら喋り続けた。そして、どっちにしろ殺されるぞ!と。だが、何を話してもあいつは先回りしていた。きっとこう言うだろうって。それでも必死になって修司は話すが、杉田は真崎とは十六日に話したと言って信用しない。なら、携帯で調べろと言い、真崎の車が高知港で転落している記事を杉田に読ませた。
なんとか、なんとかという思いが杉田に伝わったのか縛っていたロープをほどき始めた杉田だったが暗闇の中で足音が近づいて来た。


GPSを頼りに展望台まで来た相馬と鑓水だったが、鑓水が車に残り、相馬が修司を探しに行った。GPSの反応は展望台から20m以内を示している。辺に散らばったものから見ても修司のものに間違いはない。電話をかけても雨音に消されてしまう。相馬は大声で修司の名を呼ぶ。柵の向こうから声が聞こえた。出血もそうだが雨にうたれて低体温状態の修司だった。
とにかく車の中を暖め、取り敢えず目についたファミレスに入った。深夜で客がいないのは幸いだった。

食べると落ち着いた修司は松本に来てからのことを話した。そして、不法投棄のあの朝、エミリオは真崎と行動を共にしていた。
あの男が近づいてきたとき、咄嗟に修司は柵の向こうに落としてもらい杉田には工場には戻らず遠くに逃げろと言ったことを2人に話した。

3人ともファミレスのテーブルに突っ伏して寝ていたのを起こしたのは修司の携帯だった。
非通知の相手は杉田で、杉田は修司が生きてることに安堵し、(これから先のことを考えて)修司のこともあの男のことも自分は会っていないと言った。修司はそれでいいと告げた。
かわりにと杉田は真崎に頼まれたことを話した。
四月四日までに自分が戻らなかったら軽トラを潰して中の荷物を全部燃やしてくれと。場所はここと杉田は教えてくれた。
言われた場所に行くまでの間、鑓水から2人は佐々木邦夫の内部告発の文書について教えられた。問題のサンプルをタイタスフーズは廃棄したと思っていたのに廃棄されず、二月になって内部告発という形で文書が出回り、サンプルの分析データも信憑性が高いと思われている。ということは佐々木邦夫は真崎?という問いかけに鑓水は自分はそうだと思う、と。

鑓水の解説が入る。真崎は用意周到に準備をしていると。年末には杉田に不法投棄用の軽トラを頼み、手伝ってもらうエミリオは三月十四日にはブラジルに帰国することがわかっていたから手伝わせた。二月に文書を配り、立ち入り検査の日程が決まった三月十二日に不法投棄。社員の再就職先を決めて会社をたたみ姿を消した。
ただ、わからないのは真崎の真の目的だった。


待っていたのはあの日、修司が見た軽トラだった。そしてコンテナの中に入っていた段ボール。そこには真崎の家族の思い出が詰まっていた。
その下にあった5冊のスクラップブック。そこに詰まった資料。3人は全てを読み終えたとき、真崎がタイタスフーズからお金を取ろうとしたこと。そのために綿密な計画を立てていたこと。でも、何より分かったのは、真崎が何のために無謀な計画をしたかということだった。

これで上巻は終わりました。
下巻はネタバレになってしまうので…
でも、何故、タイタスフーズは5人の顔が分かったのかは書いておこうかなと思います。私もそれが疑問だったので。
あと、鑓水はあいつに顔が知られていないのは自分だけだと思っていますが、松本に来たときに致命的な間違いをしていました。それに気がついて命拾いしたのが相馬でした。
相馬は高知での爆発火災事故の詳細を読んでいたのでトリガーに気がつきました。
最後まで読ませる1冊です。長いですがおすすめです。