「相棒」の脚本家、太田愛さんの初めての小説で上下巻で1000ページという大作ですが、そのページ数が全く気にならないほど面白い作品でした。
読みながら疑問に思ったことの答えが必ず出て来るので、それが知りたくて、ページをめくっていつのまにか1000ページでした。取りこぼしのない見事な組み立てでした。

読んでいて感じたのが、初めて読んだスウェーデンミステリー、『満潮』、
こちらの作者(ご夫婦)も脚本家で、この作品が初めての小説でした。全部を自分で書いてみたいというのが動機(大道具や小道具、衣装までも)で、同じように長編で太田愛さんに感じた事をそのまま感じました。
そして、どちらも登場人物が非常に魅力的でした。作品に入り込む一つの理由はキャラクター設定。両作品、どのキャラクターも丁寧に書かれて事件が起きた背景が見えてきて、やがて繋がって行きました。


主要キャラクターでこの作品の主人公、繁藤修司18歳。傷害事件を起こして高校を中退。今は建設現場の作業員として働く。その修司に先日知り合った亜蓮から「会いたい」とメールが来て、待ち合わせ場所にいる。今は金曜日の午後2時。
時間が8分過ぎても亜蓮は来ない。待ち合わせ場所には修司以外には4人いた。年齢も性別もバラバラでみんな人待ち顔だった。
そこへ例えるならダースベーダーの格好をした人間が現れ次々に襲いかかった。
通り魔!
修司が襲われたのは最後で、助かったのも彼一人だった。近くの交番から警察官が駆けつけた。

その日非番だった所轄の相馬亮介(主要キャラクター)は事件の一報を聞いて20分後に現場に駆けつけた。その様子から相馬が所轄でつまはじきにされているのがわかる。刑事だが主要捜査には当たらせてもらえない。
犯人は間も無く確保されたが薬物中毒で死亡していた。相馬は生き残った被害者から話しを聞くようにと指示された。
生き残った被害者の修司は驚く記憶力で事件を語った。刺された順番から全て記憶していた。そして犯人が薬物中毒で死亡したと伝えると、即座に否定した。あいつは薬物なんかしていない、と。そして、両手が使えたと証言した。
修司が病院からなんとか出ようとして出口を探していると1人の男と出会い、「あと十日。十日、生き延びれば助かる。生き延びてくれ。君が最後の一人なんだ」と言われた。フレームレスの眼鏡が記憶に留まった。

用心して友人宅に泊まってから自宅に帰った修司だったが、そこに昨日のダースベーダーが待っていた。ロープで首を絞められながらも暴れて続けていると相馬が駆けつけた。修司から話しを聞くために探していた。何とか助け出した。
昨日の通り魔だ!と修司がいい、相馬もそうとしか考えられなかった。だとしたら…
相馬は旧知のフリーライターで元テレビマンの鑓水七雄(主要キャラクター)の元に修司を匿ってもらうことにした。

ここで、主要キャラクターが揃いました。

修司はなぜ、自分が襲われ殺されそうになったのか理由が知りたかった。同時にフレームレスの男の言った意味も。修司はまず亜蓮を探し出しだした。そしてメールなんて知らないと言われた。
相馬も鑓水も手分けして被害者遺族から話しを聞いた。4人とも誰かに呼び出されてあの日、あの時間にあの場所に行ったことがわかった。
でも、理由はわからない。
顔見知りでもなんでもない4人に共通するものとはなんだろう…


通り魔に見せかけて、実は目的を持った殺人。だから、修司は狙われる。本当の実行犯は!


修司に「あと十日」と言った男をテレビの画面で見つけた。そこにはタイタスグループ会長の富山浩一郎の葬儀のニュースが流れていた。


男の名前は中迫武。タイタス
フーズの営業課長。
彼はなぜあんなことを言ったのか?
そして、なぜ修司を知っていた?