『十二国記』シリーズのエピソード3です。

慶国の女王となった陽子がこちらの世界に景麒に連れてこられ、逸れ、何とか生き延びて、楽俊に出会い、2人で雁へ行こうと決めたときに、延王の治世は既に500年の時を経ていました。


延王も延麒も蓬莱の生まれ。延麒は京都応仁の乱の頃に口減らしで山に捨てられたのが延麒こと六太。延王は小松尚隆、戦国時代の瀬戸内の村上水軍と対峙していた小松一族の当主の息子。
この2人が出会い、荒廃し緑もない雁を復興させていくのでした。500年といっても1年1年の積み重ね。このエピソード3は小松尚隆が延王に即位してまだ20年の頃の話しで、雁国はまだまた不安定な時期でした。

延王は例えるなら戦国時代の日本の武将をまとめたような人物(織田信長、豊臣秀吉、徳川家康)。延王に即位したときに思ったのは村上一族に滅ぼされた小松の民のこと。六太と契約したときに欲しいのは「一国」と言った。民は自分の体と。

六太が望むのは「緑の山野」、かっての蓬莱の国で自分の身に起きたことが離れないでいる。戦争が起き、民は飢えた。だから六太も捨てられた。
誰もが飢えないで済む豊かな国。凍えることも夜露に濡れることもない家、民の誰もが安穏として、飢える心配も戦火に追われる心配もない、安らかな土地。親が子供を捨てたりしないでも生きていける豊かな国。
尚隆は、六太は約束を違えず一国をくれたのだから、自分も六太に必ず一国を返すと言う。


六太は蓬莱へも時折行き、十二国を使令と共に周る。その中で更夜と出会った。親に捨てられ、妖魔に育てられた少年。六太はその少年を更夜と名付けた。縁あったらと思っていた更夜が六太を訪ねたことから事件が起きた。
六太は更夜によって拉致され、元州に幽閉された。更夜によって角を封じられたので麒麟としての力も使えなくなった。何よりも、更夜は六太が逃げないように子供を人質にした。

六太は捕らえられながらも、何が正しいのか探っていく。玉座を狙ってのたんなる謀反なのか、それとも国家の平和を願っての玉座の簒奪なのかを。
尚隆の治世はその性格もあってかなかなか理解されない。荒廃しきった雁を復興させるには強引な面があっても仕方のないことだが、不満を持つものは多い。元州の動きはその一つに過ぎない。
だが、麒麟がその命を絶たれれば王も力を失う。
尚隆が六太を救出するために取った策がまた破天荒なものだった。


国は民のもの。そのために国を作る。
それが全て…


時が経ても尚隆と六太はお互いを名前で呼び合う。主従関係というものよりももっと深い。
全ては民のため…
それはいつしか雁だけではなくなっていくのだが、それがまた、妬みをもたらす。
陽子への企てはその現れだった。
延王はいつしか十二国の要になるのだろう。
その治世の始まりの思いは今も変わらない。


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