1960年代の事件
◎岸信介の退陣!
前回、1963年の選挙、公明選挙における
背番号グループについて書いた。
「公明選挙」の実態!
「公明選挙」の実態!
そしてそのグループに金を出していたのが、
自民党の重鎮、川島正次郎だった。
その川島は「おとぼけ正次郎」という綽名がある。
どうしてこのような名前がついたのだろうか?
今回はその顛末を書いていこう。
戦後政治のターニングポイントは幾つかある。
その中での一つが、
岸政権から池田政権の政権移行である。
この時、岸が退陣した理由は
60年安保だった。
60年安保だった。
1951年に締結した日米安保条約を
改定するという大事業だった。
これは戦後に残る騒乱になり、
デモ隊との衝突で、死者まで出る始末だった。
岸は退陣せざるを得なくなった。
そして舞台は自民党の総裁選に移る。
それを時系列に書くと、
6月19日 安保自然成立(参議院での議決なし)
6月23日 岸の退陣表明
7月14日 自民党総裁選
7月19日 池田政権の成立
という流れになる。
安保改定後の自民党は、総裁選一色となる。
その後継有力候補は、
◎自民党総裁選!
総裁選には5候補が出た。
大野伴睦
池田隼人
である。
有力候補は池田と大野であったが、
当時の総裁選は国会議員と地方代表の投票を行い、
過半数を獲得すると総裁になれた。
しかし1回目の投票で過半数を取れなければ、
上位2候補における決選投票に回ることになった。
そして当時の情勢では、
池田と大野の決選投票になると思われていた。
決選投票になるとどうなるか?
ここで7月10日の新聞による情勢からみると、
池田 190強
大野 190前後
石井 160強
藤山 100強
松村 50前後
という状況であった。
因みに総投票数は513で
過半数は257だった。
上記の予測数字を足すと、
投票数を
大幅に上回っている(笑)!
これは自派に有利になるように、
水増しして言っているからである。
結構セコイ!
しかし大体の傾向はつかんでいる。
池田と大野では、ほぼ互角だが、若干池田有利。
それに石井が続くというものだ。
つまり決選投票のカギは石井が握っている。
因みに池田は官僚出身で、
大野は党人派だ。
大野は党人派だ。
そして石井も党人派(松村も)だった。
藤山は財界出身だが、岸時代に外相をやっており、
岸に近い!
岸は池田を支持していたので、
決選投票では池田に投票する。
決選投票では池田に投票する。
つまりほぼ互角の大野と池田が決選投票をすると、
3位の石井と5位の松村が大野へ、
4位の藤山が池田に流れる。
大野が池田を逆転することになる。
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参謀 逆転です。
参謀 このままいけば逆転です。
参謀 今は若干負けています。
参謀 しかし池田も過半数がとれません。
参謀 1回目の投票では決まりません。
参謀 決選投票になります。
参謀 そうすれば勝てます。
参謀 5人立っています。
参謀 そのうち石井と松村はこちらに流れます。
参謀 同じ党人派ですから。
参謀 藤山は向こうに流れます。
参謀 彼は岸と近いですし、
参謀 岸は池田を応援していますから。
参謀 本当は藤山を下して、
参謀 1回で決めたかったみたいですが、
参謀 藤山が下りなかったんですよ。
参謀 岸が結構説得していましたが、
参謀 次のために下りないって、
参謀 言っていました。
参謀 次の総裁になるための、
参謀 足がかりにしたいんですよ。
参謀 だから下りることはしないんです。
参謀 でも決選投票で池田に入れることは
参謀 容認したみたいですがね。
参謀 こっちが怖いのは、
参謀 1回目で決まることですから、
参謀 決選投票なら石井と松村の票が来ます。
参謀 これは間違いありません。
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こういう状況だった。
池田の誤算は岸派の分裂だった。
総裁派閥である岸派は最大派閥だったが、
福田派と藤山派と川島派に
別れたのだ。
そして藤山派は総裁選に出馬し、
川島派は大野陣営に行った。
川島派は大野陣営に行った。
つまり敵になったのだ。
数は10人くらいだが、
元々計算していたので失望は大きい。
敵になるのと味方になるのとでは、
差は2倍になる!
こういう状況の中で、事件が起きる。
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◎石井票の分散!
それは石井票が思ったより、
大野に流れないことが分かったのだ。
どういうことかというと、
池田に切り崩されたのだ。
池田に切り崩されたのだ。
石井は党人派とはいえ、
元々緒方竹虎派であった。
緒方派は吉田派の一部である。
つまりもともと吉田派だった池田と
気脈が通じることもあったのだ。
そこで切り崩されて、
大野と池田にほぼ半々ということになったのだ。
これでは藤山票が行く池田に有利になる。
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参謀 緊急事態です。
参謀 石井票が割れます。
参謀 決選投票ではこちらに来るはずなのに。
参謀 票が割れそうです。
参謀 石井派の話では、
参謀 半々だとか。
参謀 池田にも半分流れます。
参謀 どうして?これから分析しますが、
参謀 もともと同じ吉田派ですから。
参謀 池田に好意的な議員も多いのです。
参謀 えっ?大野も元吉田派?
参謀 まあそうですが。
参謀 彼とは違います。
参謀 大野は鳩山が公職追放になったから、
参謀 帰ってくる場所を作るためにいたのです。
参謀 元々自由党は鳩山が作ったんです。
参謀 その番頭が大野です。
参謀 でも…鳩山が公職追放になったので、
参謀 吉田が乗っ取ったんです。
参謀 大野は自分が出ていくと、
参謀 鳩山の戻るところがなくなるので、
参謀 だから我慢していたんです。
参謀 それに対し、池田は吉田の忠臣ですから。
参謀 石井派の受けが違います。
参謀 そういう面で、引き抜かれたのは、
参謀 仕方がないと思います。
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仕方がないでは済まないが、
どうやらこういうことのようだ。
◎「おとぼけ正次郎」の本領発揮!
そこで川島正次郎はどうなったのか?
川島は元々岸派だったが、10人ほど引き連れて
大野側に行ったことは書いた。
その川島が知恵を出す。
その知恵とは
大野に下りろ…というものだった。
どういうことかというと、
石井票は決選投票になれば割れる。
しかし石井を
決戦に行かせれば割れない。
そして大野票をまとめ上げて、石井票と足せば、
池田に勝てる!
というものだった。
官僚派に勝つために、
党人派を結束させよう。
そのために
大野が下りるべきだ。
そして河野一郎の後押しもあり、
涙を呑んで大野伴睦は
立候補を取りやめた。
しかしその後…
川島は池田のもとへ行く。
えっ?
こっ…これは…
切りというやつではないか?
そう…川島は裏切ったのだ。
その理由は
大野が勝手に下りたから…、
というものであった。
ヲイヲイ!
お前が下りろって
言ったんだろう!
言ったんだろう!
実はこの川島の動きがキッカケになり、
池田の方に票が流れる
ことになった。
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おとぼけ これじゃ勝てない。
おとぼけ 無理だろう!
おとぼけ 石井票が割れたら
おとぼけ こっちは不利だ。
おとぼけ しかし策はある。
おとぼけ 大野が下りればいいんだ。
おとぼけ そうすれば石井票は割れない。
おとぼけ それに大野票をのせれば、
おとぼけ こっちの勝ちだ。
おとぼけ 党人派のためだ。
おとぼけ 涙をのんでくれ。
おとぼけ 大野君が下りれば、
おとぼけ 党人派の勝利だ。
おとぼけ そのために犠牲になってくれ。
ばんぼく わかった!下りよう!
その後!
おとぼけ 大野が下りたなら、池田につく。
ばんぼく ええええっ?
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最終的には
池田隼人 302票
石井光次郎 194票
池田の圧勝だった。
そして川島は
おとぼけ正次郎と言われるようになった。
そして川島は池田、佐藤両政権で
副総裁として君臨することになる。
つまりナンバー2だ。
裏切者が出世している(笑)!
まあ池田政権の生みの親だし、
佐藤政権の生みの親でもある。
そして間接的だが、
田中角栄政権を生むキッカケになっている。
そういう面では…
頭は非常に良かったらしい。
「おとぼけ正次郎」の別名は、
「カミソリ正次郎」だ。
こっちの方が
ずっと気に入っていたらしい。
