1980年代の事件
◎好事魔多し!
現在、自民党では新総裁の選定が進んでいる。
つまり総裁選挙だ!
5人の候補が出ており、
いずれも甲乙つけがたい優秀な人たちだ。
おいっ、コラッ!
今、笑っただろ!
そんなワケねーだろ…って
笑っただろ!
まあ何はともあれ…
5人で争っている。
この5人の中から
次期首相が生まれる可能性が極めて高い。
現在、自公政権は石破首相の大活躍?により、
衆参で過半数を失っている。
だから確実に首相に成れる訳ではないが、
両院とも最大の議席を持っているのは
自民党だ!
それ故に新総裁が首相になれる可能性は…
かなり高いだろう!
ところでそんな新総裁候補だが、
現在激しい舌戦を繰り広げている。
その中でも怖いのが…
失言だ!
たった一言の失言で、
総裁失格!
そのような烙印を押されてしまう。
特にうまくいっている時こそ、
失言で失脚する。
そういうイメージがある。
諺でも…
好事魔多しというが、
良いことが続く時こそ、
気を付けなければならない。
そういうお話。
1986年9月11日!
中曾根康弘にとって晴れ舞台だった。
この日、中曽根総裁の1年の任期延長が決まり、
首相を続投することが決定した。
中曽根氏は既に4年間首相をやっていた。
しかしまだ続けたかった中曽根氏は
解散総選挙に打って出た。
この年の7月には参議院選挙がある。
それ故にダブル選挙となるが、
そこで中曽根自民党は大勝。
今の石破総裁とは違って、
圧倒的な勝利だった。
しかし問題があった。
それは自民党の党則で総裁の任期が
2年2期と決まっていたのだ。
中曽根総裁は1982年11月に就任。
そのため1986年10月には任期満了になる。
しかし直前であったダブル選挙で圧勝。
中曽根氏は任期延長を望んでいた。
そしてこの度、党則の変更が認められ、
1年間の総裁任期の延長が行われた。
1986年9月11日の新聞夕刊には
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「中曽根続投」を正式決定
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となっている。
中曽根氏は党則改正を勝ち取って
1年間任期が延長された。
大勝利だ!
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中曽根 最高だ!
中曽根 まさに最良の日だ
中曽根 俺は少数派閥
中曽根 それ故に首相になるのには
中曽根 苦労した!
中曽根 でも…まあ…
中曽根 そこそこ長くやったよ。
中曽根 もう4年にもなる
中曽根 首相になったのは1982年11月
中曽根 それから約4年。
中曽根 でも…ね。
中曽根 もっとやりたい!
中曽根 そのためには…
中曽根 解散総選挙!
中曽根 選挙に勝てば求心力は上がる。
中曽根 例え少数派閥でも継続できる。
中曽根 そう思って解散をして
中曽根 ダブル選挙に持ち込んだら
中曽根 大勝利!
中曽根 衆参でメッチャ議席を伸ばした。
中曽根 石破と全く逆だ!
中曽根 そのため任期延長を求めても
中曽根 罰は当たらん!
中曽根 そのためには党則を変えないと
中曽根 今の党則では総裁の任期は
中曽根 2年2期!
中曽根 つまり4年しかできない。
中曽根 今年の10月末で4年
中曽根 それじゃ―困るから…
中曽根 党則改正してもらおう。
中曽根 やってくれるといいなぁ。
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と…いうことで党則改正を行い、
任期延長が決まった!
そう…つまり1986年9月11日とは
中曽根康弘にとって最良の日!
まさに好事だったのだ!
しかしこの後、魔が差してくる。
それも多数の…!
<藤尾氏の問題発言>
まず新しい文部大臣になった
藤尾正行が歴史問題で物議を醸す発言をした。
「東京裁判は勝者の裁判」
「日韓併合は韓国にも責任がある」等々
これらの発言により、
中曽根政権は窮地に陥った。
なぜなら中曽根首相はこの直後に
訪韓することになっていたからだ。
そのため発言の撤回を求めたが、
藤尾氏は拒否!
そして辞任も拒否して罷免された。
この責任は藤尾氏にある。
なぜなら彼の発言だからだ。
中曽根首相に任命責任はあるが、
その後、素早く罷免にしている。
だから中曽根首相の責任ではない。
そして訪韓したものの
韓国の民間人は一部騒ぎはあったが、
韓国政府は冷静な対応に終始していた。
それ故に中曽根政権はホッと胸を撫で下ろした。
しかし…これはまだ前奏に過ぎなかった。
<知識水準発言>
このあと中曽根首相自らの発言が批判される。
1986年9月24日の新聞夕刊に以下の記事が載った。
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「知識水準低い米」 首相発言に米で反発
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中曽根首相は
9月22日の自民党全国研修会で講演
その中で
「米国は黒人などがいるので、知識水準が低い」
などと発言。
アメリカから反発を受けた。
その内容はアメリカは白人はそうでもないが、
黒人やメキシカンなどが平均値を下げているので
全体では日本より知識水準が低い!
このような差別丸出しの発言だった。
うーむ!
思い切った発言だ。
先の藤尾氏の発言は他人が話したこと。
しかし今回は自ら発言している。
これはアカンやろ!
<単一民族発言>
しかしこれだけではない。
アメリカ側の反発を受け、
中曽根首相は言い訳をした。
その言い訳が新たな失言を生む。
中曽根氏の言い訳とは…
「米国は多民族国家なので教育は大変だ」
「日本は単一民族なので教育はやりやすい」
「だからアメリカは大変だ!」
そう言いたかった、という。
しかし…これに反発があった。
もちろん「日本は単一民族」という部分だ。
ここにアイヌ民族の団体が噛みついた。
「我々アイヌを無視している」と。
アメリカに対する言い訳として
「多民族なので教育が大変だけど、
それでもよくやっている」
という主旨のフォロー(なってないが)を試みたが、
それが藪蛇になった!
むしろ傷口を拡げてしまった。
ところがこれだけではない。
更に魔が立て続けに襲い掛かる。
<「女の子」発言>
アイヌ団体は中曽根首相に抗議文を送った。
中曽根側はその返答をハガキで送った。
通常、こういった抗議文の返信を
ハガキで送ることはしない。
しかしそれは問題ではない。
問題は内容だ。
「単一民族発言」は
新聞によるわい曲だ!
と明言していたのだ。
しかし実際に単一民族発言は
中曽根首相がハッキリ述べていた。
それを新聞によるわい曲といったことで、
更なる追求を受けることになった。
実はこのハガキの文章は…
中曽根事務所が書いたものだった。
官邸には1日千通もの手紙が来るので
中曽根事務所が一部対応をしていたのだ。
どうやら本当に中曽根氏は知らないようだ。
しかし中曽根氏の責任は免れないので、
マスコミはこのことについても首相を追及した。
そこで中曽根氏はまた失言する。
「まあ女の子が書いたので。」
女の子?
どうやら事務所の女性職員が書いたようだ。
そのため首相は「女の子」と言ったのだが、
それが女性蔑視ととられた。
そして国会でも女性議員から
追及されることになった。
うーむ!
ダブル選挙で大勝して、
総裁の任期を延長したという
絶頂期から…
失言に次ぐ失言で
国内外から追及される日々
好事魔多しとはこのことだな。
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側近 まあ最初の藤尾氏の発言は
側近 同情の余地があるよ
側近 自分の発言じゃないし、
側近 処理もそれなりに迅速だった。
側近 藤尾氏の辞任を求めたが、
側近 拒否されたので罷免にした。
側近 でも…ね。
側近 その後はいただけない。
側近 まず知識水準発言だけど
側近 アメリカは日本に比べて知識水準が低い
側近 これは余計だよね。
側近 それも中身も最悪だ。
側近 アメリカは黒人やメキシカンがいるから
側近 知識水準が低い!
側近 これってモロ差別じゃん。
側近 つまり黒人等は知識水準が低い
側近 人種で知識水準を決めている。
側近 モロアウトだよ。
側近 それから言い訳もマズかった。
側近 日本は単一民族だから…って、
側近 これはアメリカは多民族だから
側近 教育が難しいよね
側近 そういうことなんだけど、
側近 単一民族って…
側近 アイヌの人たちを無視している。
側近 これも明確な差別。
側近 さらにこの指摘を受けて、
側近 ハガキで言い訳を書いて
側近 アイヌの協会に送ったんだけど
側近 これも言い訳になっていない。
側近 新聞のわい曲…って、
側近 ハッキリ言っているから。
側近 しかも中曽根事務所が返事を書いた
側近 それ自体に問題はないけど
側近 「新聞のわい曲」と書いたあと…
側近 首相の言い訳だけど
側近 「女の子が書いた」って
側近 これもマズいよ。
側近 言い訳をすると新たな失言を生む
側近 知識水準 → 単一民族 → 女の子
側近 ここまで続くと本当は…
側近 ワザとやっているのか?
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とは全く言ってないが、
これによって中曽根首相はもちろんのこと
側近たちも振り回されたことだろう。
好事魔多しとはよくいうもので、
良い行いがあった後には
自分に対する逆風がくる。
そういう戒めなのだ。
まあ中曽根首相の場合は
ほとんどが自らの蒔いた種だ。
だって言う必要が無いことだから。
そういう意味では中曽根首相にとって
「魔」が多かったのではなく、
「間」が抜けていたのだろう。
好事、間が抜ける!
好事が続くと
間が抜けた行動が多くなる。
中曽根首相によって証明されたな。
彼は新しい言葉を作ったかもしれないな!