【告白】 第110回
おっ? 誰かに告白するのか?
と思った勘違い諸君たちよ
残念ながら
映画【告白】
原作:湊かなえ
の
ネタバレ無し総評であ~る。
この作品は【今、会いにゆきます】以来
久し振りに劇場へと足を運ぶ気にさせてくれた邦画であり、
原作内容も全く知らない無知状態で観たが、
邦画としては久々にその期待を裏切らない内容だった。
ある中学校の女教師が、
終業式のざわつくホームルームで淡々と不気味な身の上話を喋り出す。
「数ヶ月前、私の幼い娘が校内プールに誤って落下し溺死をしてしまいましたが、
実際は事故なんかではなく、
娘はこのクラスのある生徒2名によって殺されたのです」
と。
そんな話すら深刻に受け止めようとせずに、学級崩壊寸前のような教室内。
しかし次に放った『ある言葉』が、全員を氷りつかせる事となる・・・
という内容。
内容は異なるが、
以前総評させてもらったミヒャエル・ハネケ監督の代表作、『ファニーゲーム』
これを観て楽しかったと思える人は間違いなく必見です。
この作品は、
ごく平凡に幸せな暮らしをしていた女性が
悪魔へと魂を売る覚悟で娘の復讐
を行う話である。
凄いのは
その辺の同テーマ映画にありがちな
チープな偽善的態度
を一切排除し、
大切なものを奪われた者の心の痛みを、辛辣に表現しているところにある。
怒り・悲しみ・憎しみ。
そういった感情が、痛いほどに伝わってくるはずである。
人の命を蚊を叩き潰す程度にしか捉えない、サイコキラーと化した生徒。
それに真正面からぶつかり、どう思いしらせ復讐すべきかと挑む女教師。
司法で裁けない悪には更なる悪で思い知らせなければという
現実社会では禁断の領域とされている部分に踏み込んだ、究極のアンダーグラウンドな話である。
そして
この女教師役を演じている『松たか子』の演技力が逸品で、
もしかしたら彼女の一番の代表作となるかもしれぬ、底力を見させられる。
松たか子は全編を通すと、姿を現すのは少なめである。
しかし要所で現れその存在感を表す演技は
観ている側を恐怖のどん底に陥れ、また悲しみのどん底にすら陥れるであろう。
ファミレスで1人、ボーっと仲睦まじい家庭を見る女教師。
それに気づいた女の子が寄ってきて、笑顔で渡される小さなプレゼント。
帰り道にそれを握り締めてうづくまり
亡き娘を思い出し
まだ残っている良心の呵責を捨て去って復讐心に最後の誓いを注いでいるであろうその絞るような呻き嗚咽する姿は、
そこら辺の女優では表現出来ないであろう凄まじいものを感じさせられる。
この映画を観終えた人は
このドス黒さ溢れる内容の中であっても、何故か爽快感を覚えられるであろう。
キ〇チガイには、この位の責め苦を与えなければ分からないと、正にこの作品で教えてくれる。
愛、憎しみ、怒り、悲しみ
様々な激情に包まれた作品である。
映画を観終えたあとに原作本を読んでみたが、
原作を読んでる人にも安心してオススメできる良作である。
まだ観ていない方は是非どうぞ。
【パラノーマル・アクティビティ 第2章/TOKYO NIGHT】 第109回
今回は
【パラノーマル・アクティビティ 第2章/TOKYO NIGHT】
という映画を
ネタバレ無し総評させてもらう。
これは2007年にアメリカで低予算制作されたにも関わらず
ぶっち切りの興行利益を得た
【パラノーマル・アクティビティ 】
というホラー映画に関連する日本映画である。
昨年、
パラノーマル・アクティビティ2が公開されたが
そっちが元祖の正式な続編で、こちらは番外編と捉えてよろしい。
内容は至ってシンプル。
海外旅行から帰ってきた美人姉の部屋で不可思議な事が起こり出す。
なんだ?幽霊じゃね?
とワクワクするイケメン弟。
「お願いだから寝てる時に撮影させてよ~」
とせがんで設置したカメラ映像には・・・
という
ドキュンメタリー形式の撮影。
初代の場合は使用されたカメラが1台だったが、
今回のイケメンぼっちゃんはお金を持っているようで
設置台数は中盤から2台へと増える。
つまりは
同時刻の姉の部屋と弟の部屋を、
画面縦割り半分割で同時に観せる技法である。
この技法で恐怖倍増になったかというと
残念ながらそんな訳もなく、1,2倍程度の味付けである。
まあそんな中でも
この兄弟はなかなか見もので、
まさに肝っ玉の据わった2人である。
俺がこんな現象の真っ只中に放り込まれたら
序盤から即刻家を飛び出して猛ダッシュで逃げる
か
姉と一緒の部屋で身を寄せ合いながら震えてる。
しかし
この兄弟は逃げも隠れもせずに、
何が起ころうとも
怪奇現象部屋で個々に眠り続け、勇猛果敢にビデオ録画し続けるのである。
その姿はまさに、
川口浩探検隊の勇気に匹敵するほどで
感服する以外にない。
この2人が逃げも隠れもしないアホ・・・いや勇気の持ち主であるから、
結末まで観れるのである。
是非、この勇者がどうなるのか
目と耳をかっぽじって見守って欲しい。
さて
ストーリー的な評価はどうかというと、
そんなところには全く触れたくない。
何故ならば
この手の映画は、
オバケ屋敷に入った時やオバケ話を聞いた時の
「うわっ!」「ひゃあっ!」
と
悲鳴をあげて驚く事こそが楽しみの全てであるからだ。
驚かせてくれるかどうか。
重要な部分はその1点のみで
ストーリーなど、二の次の話である。
ストーリーを求めてしまったら、それこそこの映画の基本が崩れてしまい
ぐしゃぐしゃになってしまうであろう。
この映画は出来れば、
性能の良いサラウンドヘッド・フォンを用意して、夜中に部屋の電気を消して1人で視聴して欲しい。
眠れなくなること請け合いである。
【ニコ生】第108回
珍しく飲みにも出ずに、仕事以外はほとんど家で過ごしている。
これは18歳からの生活で、初めてと言えるほど真面目な自分とのご対面である。
では、
そんな中、何をしているのか?
実際は暇で大暴れするほどだったのだが、最近楽しい暇つぶしを知った。
ネットの動画コミュニティーサイト
【ニコニコ生放送】
だ。
Webカメラを取り付けて一般人もお気軽に参加出来る
『自分が主役』
となれるサイトである。
当然俺は視聴者側で、自分をお披露目する気はサラサラ無いのだが、これがすこぶる笑えるし楽しい。
リアルタイム配信の為にハプニングもある。
リスナー増やす為に、とんちき行動起こす奴もいる。
お気軽な為に、不可思議な人が不可思議な行動を起こして問題になったりと、目が離せなくなる事も。
最近は民放のテレビもつまらないので、良いものを発見した。
俺もヲタ道に入ろうかしら(笑)
下記サイトは、問題になったり話題となったシーンが集められている(YouTubeにて)
興味ある方はどうぞ。
ニコ生ってこんな面白い事になってんのかwww(2ちゃんねるまとめサイトより)
http://hamusoku.com/lite/archives/4721328.html
【KAGEROU】 第107回
昨年、
「作家になります」
と突然俳優業を離脱し
処女作でいきなり
『ポプラ社大賞受賞』
という離れ業を成し遂げたものの、
読んだ人々から
これが大賞受賞作品かいな?
と、八百長疑惑の大ブーイングで、
某通販サイトのレビューでボロクソ書かれて炎上した事により
更なる話題を掻っさらいベストセラーとなった
【KAGEROU】
齋藤智裕著
それにより
処女作で作家としての限界点に早くも気づいたからなのか、
俳優業にカムバックする(した?)らしいので、これは記念すべき最初で最後の作品になるかもしれない。
って、事で今更ながらネタバレ無し総評をさせてもらう。
先ず思ったのは文章力、表現力、構成力に乏しく稚拙である。
拘りを持った手法も無く、淡々と書き連ねた感が否めない。
また
レビューや2ちゃんねる内でも話題となった
国と酒を使ったダジャレ
も、その酒の主産地がその国の首都であるという事を知っている人でなければ
「?」
な内容である。
このように、
著者本人だけの脳内完結による、
表現不足の自己満足が随所に見られる。
小説は著者の本心を写し出しやすく、
ある意味でマスターベーションとも言われている。
だから自己満足であっても良いのかもしれないが
趣味ではなくきちんと出版し第三者に読んでもらい
伝えたい事や訴えたい事
がある限り、
それを怠るのは作家として大きな勉強不足であり、
その部分があるが故に何を伝えたいのか、知る気持ちも失せてしまう。
個々のキャラクターに魅力を感じる事もできず共感出来る人物もいないので、どの視点から読み進めていけばいいのかと戸惑いすら感じさせられる。
その為に、
著者が思い描く世界感から疎外されてしまい、檻の外側から全くの他人事として傍観視しているような感覚すら与えられた。
また内容に緻密さを感じる事もできず、
締切前に徹夜で一気に書きあげたような印象を受けた。
そもそも
どう読んでも10代にしか感じる事の出来ない主人公を、
何故40歳にしなければならなかったのか。
命の重さや尊さとは、
こんなに淡々と書き連ねる事で伝わるものなのか。
あっけらかんとした主人公の感情や行動は逆に清々しささえ感じられて、
一瞬お笑い小説を読んでいる気にさえさせてくれた。
しかしである。
それらが
功を奏する場合
も考えられた。
もし著者の意図した読者ターゲットが
小学生低学年
ほどであるならば、
非常に頷ける作品
である。
読み終えて著者が
何を伝えたいのか
というメッセージ性は全く感じ取れないだろうが、
ある種の
絵本付き童話
を見せられたような気分にはなれると思う。
そう考えると、
深く難しいメッセージが込められた
文学小説
よりも、
こういった淡々と読めるお気楽な小説というのも、
これから小説に触れていくべき年齢の子たちにとっての、窓口としてはいいのかもしれない。
読み終えた後に考えさせられる事も一切ないので、脳休めには適当な作品ではなかろうか。
【トイ・ストーリー3】 第106回
今回ネタバレ無し総評させてもらう映画は
【トイ・ストーリー3】
昨今増えてきた数あるCGアニメ映画の中でも、
そしてシリーズ化されている映画の完結作としても、
これ以上の作品は、
今世紀中に現れないんじゃないだろうかという出来栄えだ。
その証拠に
前作までを一切観ておらず
「え~、CGアニメ?楽しいの?」
と言う連れを強引に映画館へと連行したら、
見事に涙をチョチョ切らせて、帰宅後一気に1と2を鑑賞していたほどだ。
『簡潔なストーリー説明』
前作まで子供だったアンディ坊やも
今作でめでたく大学入学するほどに成長し、家を出る事となった。
荷物整理を始める中、当然遊ばなくなったオモチャたちも処分される事に。
ウッディーとバズ率いるオモチャたちは、その困難にどう立ち向かうのか。
その先には波乱万丈が待ち受けているのであった。
前作の2から約11年経過して
リアルタイム的成長を遂げたアンディ。
前作までをアンディと同年齢で観て同成長してきた若者にすれば、
この作品を観た暁には、きっと今残っているオモチャを大切にしようと思えるに違いない。
しかしこの作品は子供は当然楽しめる娯楽作だが、
社会に対する深いメッセージが込められているように感じる。
だから実際は子供向けというよりも、
オモチャに触れて楽しんでいた子供時代を遠く懐かしむ、
家族の為に汗水流しているお父さんたち。
そんな年代の涙腺を刺激しまくる作り込みだと思う。
今作は正にオモチャ社会の
リストラ危機
であり、
その困難に立ち向かうオモチャたちの必死な姿は
現代不況の嵐に巻き込まれているお父さん方へ
勇気
と
希望
を与えるメッセージとして伝わるはずだ。
そしてリストラする側もこの作品を観た時に、
される側の気持ちを今一度、痛感させられる事だと思う。
制作会社のピクサーは、
そういった現代社会の問題も織り込んだ素晴らしい作品を作った。
笑いあり、涙あり
これを観終えた貴方は
必ずや笑みでこの作品を讃えるであろう。
エンディングの着地点も
お見事
の一言である。