20年ぶりに、彼とラブホテルへ行きました。
前回の記事では、その「夜」のことを書いています。
でも実は、久しぶりのラブホテルで私が感じたのは、ドキドキだけではありませんでした。
「あれ? 意外と変わってない(笑)」
20年という時間を挟んで、同じ人と訪れてみると、そこには妙な懐かしさがありました。
私たちが付き合い始めたのは、まだ10代の頃。
当然、二人とも実家暮らしです。
二人きりになりたい日はホテルへ行くしかない。でも学生なので、自由になるお金はそれほどありません。
二人で共有のお財布を作って、アルバイト代から少しずつ出し合い、
「今日はここにしようか」
と相談する。
今思うと、なんだか可愛い(笑)
そして当時の私たちには、スマホなんて便利なものはありませんでした。
ホテルを探すために使っていたのが、
ラブホテルブック。
たしか、文庫本くらいの大きさだったと思います。
料金はいくら?
駅から近い?
部屋はきれい?
ページをめくりながら、二人で真剣に調べていました。
今ならスマホで数秒。
でもあの頃は、一冊の本を二人で覗き込んで、二人きりになれる場所を探していたんです。
そして、ホテル選びでもうひとつ重要だったのが、
できるだけ、スタッフさんと顔を合わせないこと。
別に悪いことをしているわけではないのに、とにかく恥ずかしかった(笑)
支払いも、できれば完全非対面がいい。
ホテルによっては、カプセルのようなものにお金を入れると、それがシューッと飛んでいく仕組みがありました。
あれ、何という名前だったんでしょう。
今でもよく分かりません。
ただ私の記憶の中では、
『チャーリーとチョコレート工場』のエレベーター並みに、お金が飛んでいくシステム。
そんなホテルを見つけると、ちょっと安心したものです(笑)
それから結婚して、子どもが生まれて。
ホテルへ行く必要もなくなり、気づけば最後に二人でラブホテルへ行ってから20年ほど経っていました。
そして昨年。
突然やってきた、
「3時間休憩、行こうか」
久しぶりに入ったラブホテル。
部屋を選んで、料金を見て、廊下を歩いて、ドアを開ける。
……あれ。
意外と普通にできる。
もっと緊張すると思っていました。
もちろん最初はドキドキしましたが、20年前ほど「誰かに見られたらどうしよう」とは思わなかったんです。
だって、私たち夫婦だし。
悪いこと、何もしてないし。
スタッフさんと多少顔が見えたところで、
まあ、いいか。
20年前の私たちに教えてあげたい。
そんなに必死に顔を隠さなくても大丈夫だよ(笑)
ところが、ひとつだけ。
20年前とまったく変わらないことがありました。
バレたくない。
学生の頃は、
「親にバレたらどうしよう」
今は、
「子どもにバレたらどうしよう」
……立場が逆になっただけ(笑)
ホテルには、好きな入浴剤を選べるコーナーもありました。
そこで見つけたのが、白檀(びゃくだん)。
私は入浴剤が好きなので、
「これ、使ってみたい」
と手を伸ばしかけて——やめました。
白檀って、なんとなく香りが残りそう。
この香りをまとって家に帰って、
「今日どこ行ってたの?」
なんて子どもに言われたら困る。
そんなことを真剣に考えている自分がおかしくて(笑)
20年前は親に知られないように彼とホテルへ行き、20年後は子どもに知られないように同じ彼とホテルへ行っている。
そう思ったら、なんだか不思議でした。
もちろん、変わったものもありました。
たとえば、
シャンプーバー。
「今のホテルってこんな感じなんだ」
と、私はいちいち楽しい。
ただ、ひとつ疑問があります。
3時間休憩でも、みんな髪まで洗うのでしょうか。
洗って、乾かして……それなりに時間、使いますよね。
せっかく来たのに。
……時間、もったいなくない?(笑)
そんなことを真剣に考えている時点で、20年前の私とは少し違う気がします。
最初こそ緊張していた私たちも、回数を重ねるうちに慣れてきました。
駐車場に入ってから部屋に着くまで、妙に無口になることもなくなり、いつの間にか「いつものホテル」までできました。
家から遠すぎない。
でも、近すぎない。
道路から車が見えにくい。
このあたり、とても大事です(笑)
料金体系もシンプルで、少し広いお部屋は300円くらい高い。
「300円なら広いほうにする?」
なんて相談する。
ついには、ポイントカードまで作りました。
しかもそのカードが妙におしゃれで、一見しただけでは何のカードか分からない。
ありがたい(笑)
私はそれを、お財布の中にこっそり入れています。
そして「いつものホテル」には、もうひとつ大きな利点があります。
帰り道に、お惣菜がおいしいスーパーがあること。
ホテルを出て、二人でスーパーへ寄って、夕飯を買って帰る。
家に着いたら、いつもの顔で、
「パパとママ、買い物に行ってきたよ」
と言う。
嘘ではありません。
ちゃんと買い物にも行っています(笑)
学生だった頃は、限られたアルバイト代を二人のお財布に入れて、電車に乗って、ラブホテルブックを片手に二人きりになれる場所を探していました。
今は、子どもの予定を確認して、車で出かけて、帰りに夕飯を買って帰る。
ずいぶん変わりました。
でも、ホテルの部屋に入って、後ろでドアが閉まる。
そこから先は、
彼と私だけ。
父でもなく。
母でもなく。
彼と、私。
その瞬間の感じは、20年前とそれほど変わっていないのかもしれません。
20年前の私が今の私を見たら、どう思うんでしょう。
まさか40代半ばになって、同じ人と、またラブホテルのポイントを貯めているなんて。
きっと想像もしていなかったと思います(笑)
そして、この頃の私はまだ知りませんでした。
その「いつものホテル」で、
3時間では全然足りないと思う日が来ることを。
続きは、また次の夜に。
今宵も、よい夜を。
Mitsu