マルガリータ
若葉生い茂る初夏、
レンはビスクドールのように透き通った肌で、清楚な女性。
無口なほうの性格で、思っていることは周りの人たちに伝えることが難しく、恋人の前でも何を伝えたらよいか分からず沈黙が続く。
恋人のカツはそれでも飾りっ気がなくて素の自分を見せてくれるレンのことが好きだ。
家業のニャドバシフィルムという家電製品やCD、DVD、Blu-ray、新作や中古ゲームを扱う電気屋を閉め、夕飯を済ませたカツは、ソファーで家猫のサバトラ猫さっしー(♀)を膝に抱きかかえ、撫でながら
「今日もレンは可愛くて良い子だったよ、さっしーもそんなレディーにおなり…。」
と言うと、さっしーは内心
『オンナノコのこと、にゃにも分かっていにゃいのよね、このオトコは。』と言っていた。
あくる日、レンとカツは隣町のみのり市までウインドーショッピングをしに来ていた。
「あっ?レン、今日も素敵なワンピース着ているね!」
「…ありがと、気に入ってるの。」
「ねぇねぇレン、たまにはパンツルックスもいいんじゃないかな?リボンのついたブラウスに合わせると似合うと思うよ!」
「…今度そうしてみる。」
「そういえばさぁ、みつって子がいてさ、ボーイッシュでサバサバしてんだけど、気が合うんだよな…。何してるかな?」
カツはついついみつの話をレンにしてしまい…。
「…みつって誰??」レンが不審に思い問うと、
「あ~、同級生だよ、小中学校の。ただ仲がいいだけ!」
屈託のない表情でレンの知らない他人のことをカツに言われ、ヤキモチを焼いたレンは、
『私とももっと仲良くして欲しい…』と思うのだった。
そんなレンを見てカツは、
「どうしたの?ムッとして。あ~!妬いてるな?心配しないで、そんな奴じゃないから紹介するからさ、これからみつのBARに行こうぜ!」
「う…うん…。」強引すぎるカツに『そんなんじゃなくて』と思いながらも、BAR M&Nへ向かう二人だった。
チリンチリン♪
「いらっしゃいませ~、何にいたしましょう?あ~っ!カツ君!久しぶり!飲みに来てくれたのね、嬉しい!そちらは彼女さん?綺麗で素敵ね。」
ニコニコ笑顔で接するみつに、乗り気ではないレンは「あ…ありがとうございます…。」と、形だけみつに挨拶した。
「カツ、なんにしよっか?最近どう?ゲームは売れてる?」
「いやぁ、最近は、ネット配信ゲームやスマホゲームとかが主流だから、売り悩んでいるんだよね。」
「じゃあ、これから暑くなるじゃん?クーラーや扇風機も売れると良いね。」
「そうだな、みんなうちの店に来てくれるといいな。」
みつとカツの言葉のキャッチボールが自分より上手にいってることに気づいたレンは寂しくなり、
『…カツと馴れ馴れしくしないで…。』と内心思っていた。
そんなレンを見てカツが一言余計なことを言った。
「…レン、何か怒っている?あ~、みつはただの幼なじみだから心配しないでも良いよ。」
たまらなくなったレンは思わず
「だって…だって…シクシク…。」と泣いてしまった。
そこへ
チリンチリン♪
「やぁやぁ!BAR M&Nの皆さんおそろいかな?お?今日は音ちゃんは休業?バカンスを楽しんでるかな?ついさっきそこでねね様と合流したよ~!!」とテンマ。
テンマと同じく来店したねねが異変を感じ、
「にゃん!?さっしーんとこのカツにゃん!何オンナノコを泣かしてるのさ!?」
怒鳴るとカツは抗議をするように
「俺!?何もしてね~し!!」
そんなカツを見てテンマが、
「君ぃ~、オンナゴコロを理解していないみたいだね!!可愛い君、名前は何?僕はテンマ!仲良くなろうよ~!!」
『誰…?このヒト??』
このゴタゴタに戸惑っているレンの心境を理解してか、カツとレンの座っているカウンター席にシュタッとねねは飛び乗ると
「この子は色々と不安そうにゃんね、大丈夫にゃんよ、みつはカツ君を取ったりしないからね。」
そう言うとねねはレンの涙を舌で舐めとった。
「ねねさん、分かってくれてありがとう…。」
そんな優しいねねをキュッと優しく抱くレンだった。
「レンさん、私には、イサミっていう遠洋漁業に出ている彼氏っぽい男友達がいるから心配しないでね。」
続けてみつは言った。
「あっ、カツ君は昔から恋愛には一途だったから心配ないわよ!!」
カツも、「だから信用してくれよぅ…。」と言った。
「分かりました…。」静かに言うレンだった。
それでは、無言の愛という意味のあるマルガリータをお作りしましょうね。」
材料…テキーラ…30㎖
ホワイトキュラソー…15㎖
ライムorレモンジュース…15㎖
作り方…材料をシェイクして、塩でスノースタイルにしたカクテルグラスに注ぐ。
マルガリータ26度中口の出来上がり。
さっぱりした酸味があって心もスッキリする
レンさん、カツ君これからも仲良くね!!