関英雄 北国の犬 | mitosyaのブログ

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個人誌「未踏」の紹介

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関英雄

 

 

北国の犬

 

 

 

「まだ吠えてゐるな。」といって、お父さんはアカのいる土間の方へずかずかとやってくると、私が「おとうさん」と叫んでとめるのもかまわず、土間にたてかけてあった大きな心張棒で、吠えたてるアカの背中をいやというほどなぐりつけました。キャンキャンキャンキャンとけたゝましくないて、アカはお父さんの心張棒の下をくゞりぬけると、まっしぐらに外へ駆けてでて、そのまゝどこかへ駆けて行ってしまひました。
 それっきり何日待ってもアカはかへってきませんでした。峠の道をアカらしい犬がうろうろしてゐるのをみたといふ人がありました。お父さんは私を上の学校へ入れるために、しばらく山の中で働いてお金をためようと思ってゐたのが、病気のためにどうなることやらわからなくなってしまったので、むしゃくしゃしてゐたのでせう。わたしはアカがお父さんの心張棒の下をくゞりぬけるとき、それまで自分をあんなにかはいがってくれた人が、どうして自分を打つのかわからないといひたげに、茶色の眼が悲しげな色をうかべたのをみました。「春雄、アカはどうした。呼んでおいで。」 お父さんはアカの行方が知れなくなっから何日かたったとき、さう私にいひました。

 

 

 

 

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 

 

 

 

関 英雄(せき ひでお、1912年1月20日 - 1996年4月12日)は、日本の児童文学者。

 

 

来歴・人物
名古屋市生まれ。働きながら立正商業学校卒業。読売新聞社に勤める。以後、都新聞、帝国教育会出版部、日本少国民文化協会などに勤める。

 

 

1942年、『北国の犬』を上梓、作家デビュー。戦後1946年、『子供の広場』(新世界社)の編集に携わり、同年、日本児童文学者協会を創立、1965年、理事長となる。1972年、『小さい心の旅』で日本児童文学者協会賞、サンケイ児童出版文化賞(産経児童出版文化賞)、また同作品と『白い蝶の記』で赤い鳥文学賞受賞。また1984年、『体験的児童文学史』で日本児童文学学会賞、1985年、日本児童文学者協会賞受賞。1991年には日本児童文学者協会の第11代会長に就任したが、1996年の創立50周年記念総会を前にして亡くなる。児童文学界の大御所的存在だった。

 

 

思想史家関曠野は息子である。

 

 

 

著書
北国の犬 有光社, 1942
つばめのやくそく 紀元社, 1943
みずうみの少年 愛育社, 1947
星の世界へ ペリカン文庫, 1948
きつねのチョコレート 講談社, 1948
わんぱく小僧 川流堂書房, 1948
魔法の靴をはいた話 桜井書店, 1948
うそじいさんのほんとうの話 山川書店, 1949
リビングストン あかね書房, 1952 (小学生伝記文庫)
からすのゆうびんや 泰光堂, 1954
児童文学論 新評論社, 1955 (教育新書)
ひらがなわたなべかざん 金の星社, 1957
おりこうわんわん しつけのどうわ 実業之日本社, 1957
めいたんていカッコちゃん 宝文館, 1958
荒野の星 金の星社, 1959 (西部小説選集)
白い蝶の記 日本出版社, 1971
小さい心の旅 偕成社, 1971 のち講談社文庫
アリゾナの勇者 金の星社, 1972 (ウエスタン・ノベルズ)
キツネが走るブタがとぶ 童心社, 1976 のちフォア文庫
うみからきたこぼうず あかね書房, 1978
ひるもよるも空がもえた ポプラ社, 1980 (絵本・すこしむかし)
おにのような女の子 偕成社, 1980
体験的児童文学史 理論社, 1984
白ねこベルの黒い火曜日 岩崎書店, 1988
その他外国ものの児童向け翻訳、民話編纂ものなど多数