昨日は歴史だ―――それはもう余りに遠い―――昨日は詩だ―――それは哲学だ―――昨日は神秘だ―――そこに今日があり―――われわれがこざかしく頭を使ううち―――両者は翼いて去る―――
余りにも遠い、余りにも深い、光速で去って行く昨日という日、も早手も届かない昨日という日。どこへ行ってしまったのだろうか、私の昨日、四十二年と一ケ月二十四日を刻んだだけでした。私の昨日、ヒヨドリと一メートルの距離で眼を合わせただけでした。歴史である、詩である、神秘である今日が、今も私の前に横たわっているというのに―――
遠く離れた国へと私たちを連れてゆく―――書物のような船はないもの―――力に溢れて歩む―――詩の頁のような駿馬はないもの―――
私はまだ書物の船に乗って旅をしようとしています。また他人の詩の馬鞍に乗って、通行税に苦しむこともあります。魂を乗せて運ぶあの馬車に、貴女が揺られたあの簡素な馬車に、私もそろそろ乗らなければと思っています。生活を、貴女のように組織していかなければ―――あの魂と一緒に。
あの人たちの死んでいることが―――私たちをかえって静かに死なせてくれる―――あの人たちの生きていることが―――私たちに不滅を証してくれる―――
そうですね、生命は創造的進化をするために、死ぬのだと考えても、仲々心静かにはなれないもの、あの人たち、心を通わせたあの人たちの居るところへ、またあの人たちに続く人々が、今も生きていることが、私に勇気、信頼、希望を与えてくれます。あの人たちの魂を師とし、一緒に生き抜くことですね。
地上に天国を見い出せないものは―――天上にも見い出せない―――神の住居は私の隣り―――その家具は愛―――
貴女の詩が、この短い詩句の中から生まれてきたように思う。家の庭のありふれた、限られた自然を、神の住居と詠い、神と住み、神を愛し、愛されたと思える。死への畏れや不安、そして孤独、それらは貴女が神と一緒に生きていたからだと思える。