神社の中で一番大切な場所 | 葛木御歳神社から~宮司がゆったりのんびり綴ります

葛木御歳神社から~宮司がゆったりのんびり綴ります

1600年以上の歴史を持つ葛木御歳神社の宮司東川優子が日々思うことを書き綴ります。


神社って何?という話なんですが、神社って何でしょう。

やまとびと主催の神道講座でもお話したんですが、万葉集などを見ると神社と書いて「もり」と呼んでいたんです。「杜」が森を意味する漢字に使われるのは日本独自で、中国では「もり」の意味は無いんです。
日本人の感性で「鎮守の杜」は木々だけでなく、土=土地=御神域が大切だと云うことで、この漢字を当てたのでしょう。
神社の建物が建ったのは奈良平安期以降が多く、もともと鎮守の杜は「御神域」そのものを指していました。そこに磐座や磐境がある。聖なる空間こそが「神社」なのです。

神職資格取得講習会の時に、ある神社の宮司であり講師である先生の授業が面白く、とても大切な事をたくさん教わったのですが、その中でこんな質問をされました。

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「もし、皆さんの神社のお社が例えば地震や火災や台風の被害で全壊してしまって、建てなおす資金がなければどうしますか?皆さんの考えをまとめてください。」
次の授業の日まで、色々考えました。
私の奉職する神社は今も潤ってはいませんが、今からは想像もできないほど資金難でした。
とてもじゃないけど再建などできそうにありません。さてどうすればいいのだろう?と答えが出ないまま次の授業になりました。
その時の先生の答えは、まさに目から鱗でした。
この言葉は、神社の本質を見事に突いていました。
見事な答え!!
先生の授業、先生のお考えの集大成でした。
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「私なら、こうしますよ。倒壊した建物は撤去して、白石を敷くんですよ。そうして、四隅に杭を立てて注連縄で結界を張るんです。
その真ん中に木を一本植える。
できれば岩も据える。
それだけでいい。
伊勢神宮の祭祀のように、その白石の上にむしろを敷いて菰の円座を置いて、庭上祭祀(ていしょうさいし)を行うんです。
何も要らないんですよ。木が一本あれば。
そこで祭りの日は丁寧に神様をお祭りするんですよ。

神道は「こころ」なんです。ただ、清浄な空間さえあればよいのです。大切なのは建物ではなく、神様が依り坐す斎庭(ゆにわ)なんです。
だから、建物が建てられなくても何も心配は要らないんですよ。。。」

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「あ!!そうか!!」それこそが神道のこころであり、真髄なのだ!!
立派な建物ではなく、御敷地こそが大切に守るべきものなのだ!!と私は小躍りしたくなるほどの感動を覚えました。

葛木御歳神社の奥山を整えたい!という気持ちは間違っていない。場所を守る事、歴代の神職が守ってきた神様の宿る御神域の場所を守り後世に伝えることこそが、私たち神職の使命なのだと強く思ったのでした。
🍀写真は御歳神社の奥にある御神木です。