休憩をはさんで

大阪フィルハーモニー交響楽団・定演の後半は

ブラームスの交響曲 第1番 ハ短調 作品68

 

クララ・シューマンの伝記

Clara Schumann: 

An Artist's Life Based on Material Found in Diaries and Letters

 

ブラームスの伝記

Johannes Brahms LIFE AND LETTERS

Selected and annotated by STYRA AVINS

 

を並行読みしており、

演奏会前日は、

この交響曲を作曲、初演の頃の手紙のやり取りを読んで

曲の背景についてあれこれ心が飛んでいました。

 

 

この作品を初めて全楽章を聴いたのは

ベルリン・フィルのヨーロッパツアーのブルーレイで

2010年バレンボイム指揮のオックスフォードでの演奏です。

 

ベートーヴェンをあちらこちらに感じる、

特に「喜びの歌」のようなフレーズなどが印象的でした。

 

その次にベルリンフィルの抜粋動画で

カラヤン指揮の1973年。

そして1988年ロンドン公演のカラヤン+ベルリンフィル。

 

古い録音なのに音がクリアで

全ての楽器、

特に弦楽器のキーンと高く響くような

統一された緊張感のある音に圧倒されました。

 

ライブではどんな風に聴こえるのか楽しみでした。

 

 指揮とオーケストラ

 

マルクス・ポシュナー氏が体調不良で

ロベルト・フォレス・ベセス氏が指揮。

 

どう演奏が変わったのか、

クラシック鑑賞歴が超短いため

ポシュナー氏を存じ上げないので比較はできません。

 

個人の感想と印象を書きますと、

 

ベセスさんの指揮は、

見ていてわかりやすいです。

 

グイグイ引っ張っていく感じ。

 

こういう音が欲しいとかここでどうして欲しいとか

表現がはっきりしているので、

そういう指揮をされた後、

すぐにオーケストラが反応して

その通りに音が変化する様が見えて聞こえるのが

ライブの醍醐味で楽しめました。

 

重厚で激しいところの力強さと

ロマン派らしいしっとりした甘さの両方を感じられたのが良かったです。

 

 

 演奏

 

交響曲第1番は素晴らしくて聞き応えのある作品だと再認識。

演奏を聴いている間幸せな気分でいられました。

 

ベートーヴェンへの敬意を感じさせるモチーフもあったり、

重厚さの張り詰めた統一感と

ロマンティックな優しい旋律が入り混じるドラマティックさ。

 

特に第4楽章は

交響曲の形の中に

ブラームスの私的な思いも含まれるように感じて心を揺さぶられます。

ホルンの主題は特に感動します。

 

木管の美しい旋律は歌うように柔らかくて素敵でした。

 

ハ短調で重苦しく始まった曲がハ長調で気分を高揚させて壮大に終わり

気分も晴れやかに帰路につけました。

 

 クララ・シューマンの反応

 

ブラームスとクララの書簡を読むと、

交響曲の作曲に集中していた1876年

ブラームスとクララの友情は良好な期間でした。

 

その年、

クララの末っ子フェリックスが肺結核と診断されます。

 

彼がお腹にいた頃から知るブラームスは

そのつらい知らせへの返事に

多くの人がクララに送る愛で

少しでもなぐさめになりますようにと願い、

ブラームスは

自分自身よりも誰よりも世界中の何よりクララを愛していると書いています。

 

そのような時期、

ブラームスはクララを支える思いもあったのか

頻繁に訪ね、

交響曲だとは知らせぬまま作曲に取り組みます。

 

作曲に没頭するブラームスの姿は

クララの心に響くものがあり、

その様子を見るのが大好きだと日記に書いています。

 

亡き夫ロベルトの作曲に熱中する姿を重ねたのかもしれません。

 

とはいうものの、

交響曲第1番はレクイエムとは違い、

クララはあまり良い出来だと思わなかったようで、

日記には

本心を伝えようか悩む様子が何度も書かれています。

 

最初は、

完成版なら感じ方が変わるかもと思い、

全部を聴くと

オーケストラで聴いたら印象が変わるかもと思い、

一度聞くと、

何度か聴いたら違うかも、、、と引っかかっていたようですが、

総体的には素晴らしい作品だと賞賛し、

彼の指揮は見事だったと日記に書いています。

 

 第4楽章と個人的感想

 

ブラームスはシューマンに気に入られて人生が激変、

交響曲作曲のプレッシャーも強く、

完成までにかなりの年月が経ちました。

 

クララへ贈ったアルペンホルンの旋律が

最終章に入っているのは

クララへの感謝と友愛が込められたと感じずにはおれません。

 

シューマン夫妻との出会い。

ロベルト亡き後は

クララが作品の批評や試演など陰に日向に支えてきました。

 

やっと交響曲を完成させる時、

夫妻との交流への思いを織り込むのも自然かと。

 

交響曲第1番がハ短調で始まり、ハ長調で終わるのは

ベートーヴェンの「運命」と同じとのこと。

 

陰鬱な冬から次第に変化して春の息吹を感じる(クララの感想)この流れは

 

苦労した子供時代から

無名だったブラームスがシューマン夫妻との出会いによって

新しい世界へと導かれ

才能を発揮させたブラームスの人生とも重なるような気がします。

 

というのも

今日読んだブラームスのクララへの手紙に、

 

クララとロベルトとのことが人生で最高の経験で

最高の財産で最も高尚であると

 

書いてあったのです。

 

(1892年のクララへの誕生祝いの手紙。

これまた友情の最大の危機で

クララ怒髪天ムキーッ時期。

変わらぬ想いを伝えるブラームスの悲痛な叫びのような文章は涙なくして読めません。

この手紙のお蔭でクララの怒りも収まり

2人の友情は再び強固なものとなりました。)

 

 まとめ

 

プログラムも

オーケストラとソロの演奏も指揮も素晴らしかったです。

帰り道は交響曲が頭の中に響いていました。

 

お読みくださりありがとうございました。

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