誰だったか、ある著名な映画監督が

「あなたの映画で最高の作品は?」

と聞かれ、

「次の作品だ。」

と答えたという有名な話がある。

映画を撮り終え、後日見直すとどうしても取り直したくなるところが出てくる。

時間があればいつまでも答えのない部分をいじり続けたくなるのだろう。


翻って、建築の仕事も同じようなことが言える。

間取り、素材の選定、塗装の色、格子の寸法、照明計画…

いずれも答えのない到達点を目指して、思いを巡らす。

時間などいくらあっても足りない。

これだと思っても完成後、ここはああすればよかったと思うところが出てくる。

そうかといって、それが答えでもない。



さらに建物の場合、施主の考えもある。

家族構成、家族関係、周辺環境、予算、土地の面積、方位なども考慮に入れると

100点満点の回答など出るはずがない。


仮に完璧な家が出来たとしても、一瞬のことだ。

古くなるし、家族構成、年齢も変わる。

考え方が変わった日にゃあ、根底から違ってくる。


自分の家も完成して直後に無性にリフォームしたくなった。

理性と懐事情で思いとどまった。


大切なのは可変性の高い家造りじゃないだろうか。

それが普通の家造りと思っている。

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