8年ほど前、T社のSW工法という高気密、高断熱の家の会に加盟した。
営業マンの熱心なセールストークに心を奪われた。
そして1件建てた。
その前後に自社の工法でも高気密高断熱の家を2件建てた。
いずれの建物も隙間相当面積が0.5を切った。非常に高い水準だ。
そのころ国際基準のR-2000ですら高気密住宅の隙間相当面積は2.0以下である。

自分の家を建てる時は絶対に高気密高断熱住宅にしようと決意した。
なにせ異常な寒がりだ。

引渡後、アフタ-巡回で敢えて零下2度の日に訪問すると
ご主人がカッターシャツ1枚で出迎えてくれた。
十分な性能が出ているようだ。建築請負業者として誇りに思う。

奥様も嬉しそうに快適性を話してくれた。
その話の中で1つ引っ掛かるものがあった。

「子供が朝起きるとベランダに出て外の寒さを確認して着ていくものを決めるんですよ。」
性能云々の話ではない。目的は充分達している。悔いはない。
ただ、ここまで快適な、まさに「温室」といわれるほどの物を作るべきか。
考え方の問題だ。

確かに北海道やカナダなど、生死に関わる環境であれば必要だ。
開口部も出来るだけ小さくして、外部との隔絶を目指すべきだ。
しかしここは広島だ。寒さよりも暑さや湿度のほうが総合的には問題だ。

恵まれた環境を排除するだけでよいのか。
もちろん地球環境として省エネを国際的に目指していく方向性は理解しているつもりだ。

家造りはどうあるべきか。

高性能なものを追求する日本人の性が現在の経済的繁栄に導いてくれた。
車やハイテクな機器は色んなシュミレーションをする。
破壊や耐久性などの実験を繰り返し行う。

高気密高断熱住宅が広まり、日本人の特質を持った技術者が他の工法と完成度を競っている。
完璧なものを求めている。
外断熱だ、充填断熱だと本を出版して喧嘩まで始まった。

家は実験室で仮に建てるわけにはいかない。
破壊検査や耐久性を調べる術はない。
2つと同じ家はない。
建つ場所も、家族構成も違う。
その上数十年という長い時を超えて付き合わなければならない。
月日の中では増築や修繕もあるだろう。

高性能なハイテクマシーンも年を取れば劣化する。
性能も落ちる。
高性能であればあるほど手が加えにくい。

家はマシーンではなく生き物だ。
普通でいいんじゃないか。(こだわりを持った。)

読み返すと田口トモロヲ調になっていた。

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