前回昔――かなり、昔のこと。
そう、ぼくが幼稚園のころだから、もう40年も以前の話。
ぼくの家の近くにあった市営団地に住んでいたユウちゃんと遊ぶようになって半年ほどたった頃、その市営団地のゆうちゃんちとは別の棟に「カワサキくん」が引っ越してきたのだった。
引っ越してきたと書いたがぼくはカワサキくんが引っ越してきたところを見たわけではない。
ある日、いつものように市営団地のユウちゃんちに遊びにいくと、ユウちゃんはしらない子供と一緒だった。そのこは背はあまり高くなかったが、がっちりとした体格で、顔は浅黒く、上下を押し潰したように平たかった。そして眉毛が吊り上がっていた。今思い出すとまるで小型マイクタイソン――豆タンクといったところか。
それは都会的に洗練されていたユウちゃんの印象とは真逆なものだった。
「これ、カワサキくん。あっちの団地に引っ越してきたの」
ユウちゃんがそう言うと、隣にいたカワサキくんは下を向いて足で小石を蹴っていた。
なんだコイツ――ぼくがカワサキくんにもった印象は最悪だった。
その後、ユウちゃんちに遊びにいくと必ずカワサキくんが現れるようになった。
ぼくはカワサキくんとは遊びたくないのだが、ユウちゃんは3人で遊ぼうという。
それで仕方なくカワサキくんとも遊ぶようになった。
第一印象が最悪だったカワサキくんとはいつもケンカばかりしていた。
鬼ごっこのルールに対する見解の相違。
仮面ライダー1号と2号の強さに関する見解の相違。
ウルトラマンの飛行スピードに関する見解の相違。
地球の大きさにおける見解の相違。
俺の方が強いぞ!かかってこい、コノヤロー!
などといったくだらない理由でケンカばかりしていたのだ。
