
月の色がおかしい――と気づいたのはつい最近のことだ。
ぼくの知っている月はもっと暗くて赤い。
そう――まるでサバイバルナイフでかっ切った喉から、どくどくと、とめどなくあふれ出てくるどす黒い血液のような赤。
そんな色だった――ような気がしていた。
しかし、最近月を見てみるとそんな色はしていない。
普段の月はどちらかというと白く、時には黄色に見える。
ただ月が赤く見える時はあるらしい。
それは「BLOOD MOON(血の月)」と呼ばれている。
月が地球の影に完全に隠れた状態でも、地球の大気の層で屈折したわずかな太陽の光が月に届き赤黒く輝くために起きる――らしい。
しかしぼくの見ていた月はそういう天体ショーではなく、常に赤かった。

サケを飲まなくなってから、世界が変わってしまった。
いや、世界が変わったのではなく、ぼくが変わったのか。
赤い月を見なくなった。