おとうと | ときには真珠のように

ときには真珠のように

思考は光速を越える

35年前―

弟と遊んでいた。

ぼくの不注意。

弟が頭から血を流していた。

白い骨が見えた。頭蓋骨。

弟は倒れた、


弟は死んでしまった―


と、思った。


ぼくのせいだ。
ぼくのせいだ。
ぼくが悪い。
ぼくが悪い。


ぼくは消えてしまいたいと思った。
まだ、小学生になる前。
ぼくは消えてしまいたいと思った。


弟は生きていた。
しかし、弟の額には痛々しい傷が残った。

弟は言った。
おにいちゃんは悪くないよ。
ぼくも悪かったね。
だからしかたがないよ。
弟のその言葉を聴くたびに、ぼくはひとり泣いた。


その後、あるとき、弟とけんかすることがあった。
母に怒られた。

ぼくが何か母の気にさわる態度をとったのだろう。
母は言った。
あなたは弟の額に一生消えない傷を作った。
そのことをわかっているの?
そのときの母親の顔が忘れられない。

そうだった。
ぼくは弟に大変なことをしてしまった。

35年たったけど、ぼくは一度も弟に謝っていないんだ。
ごめんよ。
ごめんよ。

時々、おさない弟が夢にでてくる。
ごめんよ。
ごめんなさい。

時々、あの時の母の顔が夢に出てくる。
ごめんなさい。