もともと料理は好きだ。
好きで何となくやっているだけなので、毎回出来が良いわけじゃない。手際が良いわけでもない。ただ気が向くと作る。
最近、禁断の食べ物に手を出してしまった。『手打ちうどん』である。『禁断の』というのは、こういう『粉もの』はとにかく難しくて奥が深いはずだからだ。
自分がうどんで重要視するのは、とにかくコシだ。だから伊勢うどんも博多うどんも好きじゃない。讃岐うどんこそが至高だ。名古屋の味噌煮込みうどんはコシではなくて赤味噌の旨味を味わうためのものだと思うので、ちょっと別分野という気がする。でも味噌煮込みうどんはそれはそれで大好きだけど。
今はお気に入りの讃岐うどんの店が休業しているので、コシがあるぷりぷりのうどんを食べるには自分で作るしかない。結局のところ自分にとって料理とは、好奇心の発露なんだと思う。果たして素人にコシがある手打ちうどんを作れるのか?
粉、麺棒、敷台は奥さんのパンやピザ用のものを拝借。
普通の薄力粉200gと冨澤商店の強力粉(はるゆたか)200gを混ぜて中力粉を作り、塩水を加えて、こねる。
薄力粉はタンパク質の含有量がおよそ7%で強力粉はおよそ11.5%なので、同量を混ぜればおよそ9%の『中力粉』ができる。
讃岐うどんは確かオーストラリアが作っている日本向けのうどん専用粉(オーストラリア・スタンダード・ホワイト、ASW)を使うことがほとんどのはずだけど、小売されているわけじゃないみたいだ。まあ、仕方がない。
丸くなったらジップロックに入れて、タオルをかぶせて踏む。平たくなったら三つ折りにしてまた踏む。これを3回繰り返して、また丸に成形して1時間寝かす。
中揉みを一度してから10分寝かす。指で押してみて3分の1ぐらい戻れば良いらしい。
片栗粉で打ち粉をしながら、麺棒で3mm厚まで延ばして三つ折りにし普通の包丁で3mm間隔で切っていく。
うまく包丁が入ると、『コン』と小気味よい音がする。
だしはカツオの厚削りとさば節、いわし節がミックスされたものでとり、別に醤油、みりん、酒を煮てかえしを作って合わせる。さらに市販のつゆのもとを少し混ぜる。何となくの感覚で作るので材料の計量はしない。
12分茹でて流水で洗い、氷水で締める。
おくら、納豆、みょうが、たまご(ゆるゆるを作ろうとして失敗)を載せた。
一応曲がりなりにもうどんらしきものはできた。かかった時間は2時間強。思っていたほど難しいものじゃない。
で、味はどうだったかというと、、、
これがびっくりするくらい美味しかった。
最近は冷凍のうどんも美味しいけど、打ちたてのうどんに勝るものはない。うどんのコシが違う。ああ、これこれ、という感じである。
うどんに興味がない奥さんも「ツルっと入ったわ」とのことで良かった。
ただし、だしはいわゆる香川の『だし醤油』とは違うので、もっと研究しなければならない。
うどん道は奥が深いのだ。
さらに気を良くした我々は、夜は餃子の皮作りに乗り出すことになった。
そもそも夜は餃子の予定だったのだけれど、皮がなかった。
外は雨だったのでわざわざ買いに行くのもおっくうだ。「じゃあ作れば」ということになったのだ。
餃子の皮は小さくて薄いので、うどんよりも難しい。
でもやっていくうちに何となくコツがつかめてくる。
手返しよくやると上手くいく。いびつでも奥さんがうまく包んでくれる。
少し焦げてしまったけど、完成。
皮の厚さは市販品と同じぐらい。でも一番違うのは硬さ。こちらの方が圧倒的に柔らかくて、おまけに包むときに皮と皮とがぴったりとくっつくために、焼いても中の肉汁が逃げない。だから噛むと中から熱い肉汁が溢れる。これは発見だった。
今までパン作りは奥さんの専売特許だったけど、粉ものは本当に楽しいし、美味しい。
今度は名古屋風の味噌煮込みうどんにチャレンジするか、だしにいりこ(片口鰯の乾物)を使って讃岐うどんの道を極めていくか、いや、カレーとナンにしてもいいし、手作りトルティーヤとチリコンカンも魅力的だ。妄想は果てしなく広がる。定年後に蕎麦打ちにはまってしまう人の気持ちっておそらくこういうことなのか。
そんなわけでおそらくこれからも延々と続くであろう、果てしない「粉の道」のとば口に立ってしまった5月のある週末なのであった。






