遅くなしました。

図書館要旨に出した原稿を掲載します。

以前書いたブログの内容より若干DONとDINのことが詳しく書かれています。

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【はじめに】

陸域生態系は人間活動によって放出された炭素の25%を固定していると考えられており(IPCC 2001)、今後も大気CO2の増加の緩和に寄与することが期待されている。しかし陸域生態系の生産は窒素サイクルによって強く制限を受けている。窒素は、溶存有機態窒素(DON)と溶存無機態窒素(DIN)として生態系から流出し、植物は流出したDINからは窒素を取り込むが、DONからは取り込めないと考えられている。窒素制限下で、大気CO2濃度が増加したとき、またさらに気温が上昇したときに、どのように生態系が炭素蓄積を行うか、そしてその炭素蓄積にDON損失がどのように影響するかは明らかになっていない。そこで本研究では窒素流出に着目しつつ、窒素制限を考慮したシミュレーションモデルを用い、大気CO2濃度増加と気温上昇に伴う陸域生態系での炭素固定のメカニズム、特に植物が制御できない生態系からのDON損失が炭素固定に与える影響を明確にすることを目的とした。

【方法】

 分析には、MELモデル(Rastetter et al. 2005)を用いた。対象地はアメリカ合衆国のHubbard Brook実験林(HB)と、アラスカのツンドラ生態系(AK)の二地点を設定した。DON損失が多い或いは少ない条件を設定するためにHBHighHBLowAKHighAKLowHighDON損失DIN損失 =51LowDON損失DIN損失154つの条件のモデルを準備し、初期定常状態を設定したケース1では、大気CO2濃度を350ppmから700ppmに増加させた。ケース2では、大気CO2濃度を増加させ、かつ気4°C上昇させた。ケース3では、大気CO2濃度を、ケース4では大気CO2濃度と気温を100年間かけて徐々に上昇させた。

【結果および考察】

ケース1において、HB-Lowでは、植物と土壌中の炭素と窒素は、大気CO2濃度増加に伴い急激に増加し、その後も年々増加した。これに対しHB-Highでは、その後の増加はほとんど見られなかった。これは、HB-Lowでは植物がDINを取り込んだためであると考える。一方、AKでは、両条件において急激に増加したが、その後の年々の増加は見られなかった。

温度上昇の効果が加わったケース2 (Fig.1)では、植物と土壌中の炭素と窒素は、いずれの場合も、その変化量が大きくなった。

ケース34では、急激なCO2濃度変化がないため、植物と土壌中の炭素と窒素の急激な変化は起こらず、年々の緩やかな変化が生じた。HB-HighHB-Lowとの違い、AKの特徴は、ケース1と同様であった。このケースでもHB-Lowでの植物によるDIN取り込みがあったと考えられる。

窒素は制限されていても、土壌中の窒素を効率良く利用して植生はCO2の吸収源になりうることがモデルにより示された。またHBではHighLowの差が表れたが、AKでは差が生じなかった。これは、両地域の間でのDINの量の違いによるものと考える。ただし、HBでは植物炭素固定量の方が土壌炭素固定量よりも多く、一方AKでは逆であった。平均気温の違いにより、このような差が生じることが示唆された。

【引用文献】

IPCC. 2001. Climate change 2001: synthesis report. Cambridge University Press, Cambridge, UK; Rastetter et al. 2005. Ecol Appl 15(1):71–86.



そんな感じです。もう少し研究背景を詳しく書いたやつを載せますので、またいらしてください。