運気うなぎ登り!
「和食うなぎ玄白」
を経営する
村井三雄
です。
私は一度離婚を経験し
前妻との間に授かった子供は
男子が2人いて
無事に成人することが出来ました
2人と別れた時は
長男が6歳で下の子が1歳
下の子は
私との記憶はありません
長男が大学を卒業した時
突然前妻から連絡がありました
「○○が、あなたに逢いたいって言うの…」
「どうして?」
「大学行かせてくれたお礼を言いたいそうよ」
離婚して間もなく
会社を倒産させた私は
養育費を払うのも苦しく
まともに払ってやることが
出来ませんでした
だから、
2人の大学の授業料だけは
払ってやりたいと思い
「好きな大学行かせてやればいい。
なんとかするよ。」
その結果、
2人とも私学を受験…
おまけに県外で1人暮らし…
いやぁ〜さすがにキツかった…
しかし、2人とも名門私学だったので
何とか行かせてやりたいの
一心でした
私は、16年ぶりの再会の場所に
馴染みの小料理屋を指定しました
会話が続かなければ
女将との会話に逃げよう
という魂胆でした
私は約束の時間の
20分前に店に入りました
女将に16年ぶりに
息子に会うことを話してると
店のドアが閉まる音がしました
「いらっしゃいませ!」
店は、
全体が畳の小上がりになっているため
入口で履物を脱ぐスタイル
そこには
背中を向けて自分の履物を揃える
青年がいました
振り返り、私と目が合うと
軽く会釈をしながら近づいて来ました
「村井さんですか?」
むらいさん…?
何を期待していた訳でも
ありませんが
少し複雑な気持ち…
彼には
子供の頃の面影はなく
精悍な青年の顔をしてしまいました
子供の頃は
私に似ていると思っていましたが
今は母親に似た切れ長の
涼しげな目をしてしまいました
「なんで俺に会おうと思ったの?」
先ずはビールで乾杯をした後
私は切り出しました
「無事卒業した報告と、
今迄のお礼を自分で直接お伝えしたくて
連絡しました。」
私は感情がこみ上げてきて
唇が震えるのを誤魔化すために
グラスのビールを一気に流しこみました
「俺はお前達に何もしてないよ。
確かにお金は送ったよ。
でも、これは俺の義務だったからだよ。
お金を送る時は、正直お前達の顔より、
お前達の母さんの顔が浮かんだからな。」
「でも、村井さんの助けがなかったら
僕達は大学行けなかった。」
「もし、お前達が俺と住んでいたら、
こんなに立派に育てられたかと
考えると自信がない。
だから感謝すべきなのは
母さんにじゃないか?
女手一つで大したもんだよ
こうやって、
お前が私に感謝してくれるのも
少なくともお前達の前では、
母さんが私のことを
悪く言わなかったおかげ。」
彼は黙って私の話を聞いていました
何を話したのか
よく覚えてませんが
ずっと喋りっぱなしでした
気がつけば
三時間を超える時間が
過ぎていました
私に似たのか
彼もそうとうお酒が強い
日本酒一升以上は空いていたでしょう
今更父親に戻れるとは
思っていませんが
村井さんと呼ばれることには
最後まで慣れることは
出来ませんでした
「村井さんのLINE教えてもらえますか?」
LINEのIDを教えると
片手をあげる私に対し
彼は頭をさげて帰って行きました
「いい息子さんやのぉ。
それにしてもあんたら、ようけ飲むわ!」
私が日本酒をもう一合お願いすると
ピンコンッ!
携帯にLINEの着信音が
「今日はありがとうございました。
またいつでも誘ってください。
言い忘れましたが、
先日、家族3人で村井さんのお店に
行ってきました。
鰻美味しかったです。
おやすみなさい。」
その日は、深酒になってしまいました



