天井には小さなスポットライトが光っている。
窓の無い二畳ほどのその空間では、時間の認識は難しい。
狭く固い簡易ベッドにも慣れた。
枕元に置いた携帯電話を見るとAM5:00を過ぎたところだった。
皮肉なことに、朝が苦手だった私が、目覚まし時計も無しにこんな時間に目覚めるようになっていた。
身体を起こすと、正面には小さなモニターと無数の小さな赤いランプが点滅している。
私は、そこから伸びたヘッドホンを耳にあて、無数に点滅している赤いランプの一つを選び、その横にあるボタンを押した。
ヘッドホンから、男女の会話が聞こえてきた。

「なぁ、今から会わないか?○○公園のところで待ってるからさぁ。来いよ!」
「私、子供のお弁当作らないといけないから…でも、どうしようかなぁ?」

女の声は知り合いの声だ。
ランプの横に記される番号を確認しモニターを見ると

02,18,15
(2時間18分15秒)
と、記されている。

『アケミさん頑張ってるなぁ…まだ引っ張るつもりか…』

電話の彼女は、アルバイトのアケミさんだった。
彼女は、本当に2人の小さな子供を持つシングルマザーだ。
別の点灯したランプを選択してみる。
男女は卑猥な会話で盛り上がっていた。

『これは客同士だな…』

私はモニターに記される総合計通話時間をノートに書きこんだ。

このシステムはQ2ダイヤルと呼ばれるシステムで、出会いを求める男女がプリペイドカードを買い、決められた番号に電話をかけ、回線が繋がるとポイントが消費されるというものだ。
当然、参加者が多いほど回線は繋がり人気が出る為、いわゆるサクラを数名雇っていた。

自宅で簡単に出来て高時給

いかにも怪しいキャッチフレーズだが、問い合わせは多く、大学生やシングルマザーの申し込みが多かった。

そう、私に与えられた仕事は、ゲーム喫茶の店長とQ2ダイヤルの管理だった。