「フランスから豪快に送られてきたアンリ2世様式リバイバルの椅子」
椅子の修復の依頼がありました。
椅子のオーナー様は暫くパリに住んでいた事があって、この椅子は
その時に親しくなったご家族のおばあさんの時代に使われていたそうです。
日本に帰国する際、椅子を譲ってもらえる事になったのですが、
輸送費がかかるので要らないと断ったそうです。
その事が「輸送費が安くなればOK」と誤解を生み
「バラバラにして送れば輸送費が安く上がる!」という理由で
手荒く分解されて送られる事になりました。
送られてきた椅子の梱包を開いてみると、こんな状態でした。
この椅子は1500年代のフランス国王、アンリ2世時代の家具デザインを
元にリバイバルとして19世紀末から20世紀初頭に作られた椅子です。
フランスでは、18世紀末のフランス革命以降、特注家具の発注主である
王室や貴族階級が無くなってしまったため、19世紀末にアール・ヌーヴォーが出現するまでこれといった様式が生み出されませんでした。
その間、過去の様式を元にデザインされた様々な家具が作られました。
それでは椅子の状態を見てみましょう。
材質はオーク材で作られています。
部材を組んだ部分はダメージ無く解体してあります。
膠(ニカワ)で接着されていたのでダメージがありませんでした。
背もたれの部分に使われている、旋盤加工された美しいパーツは、無理矢理解体したので全部折れてしまっています。
送り主は「ボンドで接着すれば大丈夫!」と言っていたそうです。
そうは言っても折れた部分はとても細いので、強度を確保しながら
接着しないとまたすぐに折れてしまいます。
この部分をどう直すかがこの修復のメインになります。
まずはどのパーツがどの場所に収まるのか、木の割れ方を見ながら、
パズルのように場所を特定して番号を付けます。
折れた部分は細すぎて木釘を使って接合できないので、木の中に細い釘を
仕込んで接合します。
もう一つ厄介だったのが、この旋盤加工されたパーツの1つの根元が割れて無くなっていました。
この部分は、新しくオーク材の小さなブロックを接着して、他のパーツを
参考にして彫刻しました。
長くなりましたので今回はここまで。
この先のプロセスは次回紹介します。