Classic to Modern デコラティブアート的造形と家具作家の日記
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「李氏朝鮮時代の箪笥の修復1」

恐らく19世紀に作られた朝鮮の箪笥を修復しました。

 

朝鮮の家具を修復するのは初めてです。

 

箪笥を引き取ってきた時の状態です。

 

 

 

 

全体に真鍮製の装飾金物が取り付けてあります。

 

元々金色だったのに経年劣化でくすんでいます。

 

木部は塗装の状態が悪く、特に天板面は汚れて塗膜があちこち剥がれています。

 

 

この箪笥の修復は主に2つのプロセスに分けられます。

 

最初にこの箪笥の大きな魅力の一つである装飾金物をクリーニングして、艶を復活させます。

 

 

 

金物のディテールを見てみると、華やかなお花や葉っぱの刻印が入っていて、美しく復活するのが楽しみです。

 

木部は汚れを落として、セラックニスで再塗装します。

 

 

箪笥の側面には美しいケヤキ材の古色が見られます。

 

長い時間をかけて作られた貴重な色なので、カンナやサンディングペーパーで木の表面を削らずに汚れだけを落としてから塗装します。

 

こちらも仕上がりが楽しみです。

 

次回から修復の様子を紹介します。

「ネストテーブルの修復1」

今回は生徒さん所有のネストテーブルの修復を紹介します。

ネストテーブルとは、大きさや高さが異なる数台のテーブルが1セットに

なった家具です。

「入れ子(nest)」を意味するように、使わない時は大きいテーブルの下に収納できるのが特徴です。

 

来客などで飲み物を置く小さなテーブルが必要な時にとても便利で、普段は

一台のテーブルとして使えます。

 

大テーブル

 

中テーブル

 

小テーブル

 

購入から10年程経ち、各天板と装飾、脚部の塗装がだいぶ傷んでいます。

 

赤マル箇所は配送業者がテープを貼ってしまった為、塗装面が剥がれていました。

ウレタン塗装された家具では大丈夫でもアンティーク家具に施されている

セラックニスではNGです。

風合いは最高ですが、定期的なメンテナンスが必要な塗料です。

 

 

作業を始めましょう。

剥離材を使って塗装を剥がしていきます。

 

 

剥離材を刷毛で塗っていきます。

 

少し時間が経つと表面が泡立ち、塗装が浮いてくるのでスクレーパーを使って削ぎ取ります。

 

気持ち良い作業です。 が、この剥離材が皮膚につくと薬品火傷のようになるので薄着の季節は気をつけて作業します。

 

塗装を剥がすと綺麗なウォルナットの突板が表れました。

 

このネストテーブルは3台とも天板には「ブックマッチ」でウォルナットの突板が使われています。

「ブックマッチ突板」とは木材を薄くスライスした「突板(つきいた)」を

本のページを開いた時のように並べ、左右対称の模様(鏡像)になるよう貼り合わせる加工技法です。

 

細かい装飾箇所はスパチュラ(粘土ヘラ)を使って取り除きます。

 

この装飾は当初、金型で付けたエンボスかと思ったのですが全部筋彫りが

施されていました。

 

 

小テーブル脚の塗装を剥がしたところ、以前に修復した跡が出てきました。

懐かしいですね。

 

続きはまた次回に。

 

「マホガニーとバーウォールナットを使った仏壇」

前回紹介したコンビネーションモールディングを使った仏壇がどんな風に

完成したのか紹介します。

 

 

仏壇全体はマホガニーの突板で、扉の表面と、仏壇内部、下部のスライド天板の装飾にバーウォールナットの突板を使いました。

 

 

 

仏壇を設置する空間は西洋のアンティーク家具を使ったインテリアで、既存のモダン仏壇ではなかなかその部屋の雰囲気に合った物が見つけられなかったため、お客様が西洋のクラシック家具のスタイルを取り入れた仏壇をご希望されて、特注製作をすることになりました。

 

塗装はウレタン樹脂製で、鏡面仕上げしてあます。

水や傷に強い塗料です。

 

 

 

裏側の背板もマホガニーで仕上げて、固定するネジも真鍮製を使っています。

 

 

仏壇内部天井にはダウンライトを取り付けてあるので、仏様をライトで照らせるようになっています。

 

 

実際に仏壇を設置してみると、お部屋にあるアンティーク家具との相性も

とても良いとのことで、大変喜んでいただきました。

 

今回の製作は木目の美しい突板(薄板)を組み合わせて、装飾性の高い家具を

作る製作でした。

 

彫刻装飾はありませんでしたが、とても楽しい製作でした。

「コンビネーションモールディング」

今回は専門的なお話をします。

まずタイトルのコンビネーションモールディングとは何か。

箱物家具、例えばブックケースやキャビネットなどの箱物家具の上部は大きなモールディング(面材)で装飾される事が多いです。

*赤い線で囲った部分がモールディング





近くで見ると大きくて複雑な形状です。
これだけ複雑で大きなモールディングをどうやって作るのか想像するのは

難しいと思います。

一枚の板から作ろうとすると、巨大な板が必要になります。
材木にかかる費用も大きくなるし、加工もすごく大変です。

そこで考えられたのが、複数のモールディングを組み合わせて大きなモールディングを作る、コンビネーションモールディングという製作方法です。



このイラストの赤線で囲った部分がコンビネーションモールディングです。



断面図で見ると、3本のモールディングで構成されているのがわかります。

最近製作した小さなキャビネット(お仏壇)に、このコンビネーションモールディングを使いました。

製作のプロセスを見ていきましょう。
今回は3種類のモールディングで作っていきます。

まずはモールディングを用意します。
赤線で囲った3種類を使います。



モールディングを取り付ける前の仏壇です。
マホガニーを使っています。



まだ装飾が入っていないので、上下も分かりにくい状態です。

モールディングにもマホガニーを使っています。
一番上に来るモールディングから接着した状態です。





次に2段目です。ここには「デンティルモールディング」と呼ばれる、歯が

並んでいる状態を表しているモールディングです。



接着した状態です。





最後に一番下に来るモールディングを接着しました。





これでモールディング部分の完成です。





下部にもモールディングが付いてクラシックな雰囲気になりました。

「江戸末期に作られた車箪笥の修復4」

いよいよ箪笥の塗装に入ります。

 

今回は日本の伝統技法である拭き漆で塗装していきます。

 

拭き漆は、漆を専用の和紙に染み込ませて塗り重ねる塗装方法です。

 

漆が乾燥、硬化するためには、気温27℃以上、湿度70%以上の環境が

必要なので、日本の夏場は最適です。

 

箪笥に付いている鉄の部品は塗装したくないので、全てマスキングテープで

養生します。

 

 

 

 

これから塗装する木部は、すべての汚れを洗浄して落としてあります。

 

最も重要な事は、百数十年かけて作られた箪笥のケヤキ材の古色を絶対に

落とさない事です。

この古色に古美術品としての大切な価値があります。

なのでサンディングは一切しません。

 

木の表面に残っている油分も取り除いて塗装スタートです。

 

漆と箪笥の古色がどんな風合いを生み出すか楽しみです。

 

漆を塗って乾燥させるプロセスを5回ほど繰り返した状態です。

 

 

 

 

天板の色がとても美しくなってきました。

 

全ての塗装が終わって、木部も鉄部もきれいに磨いて完成です。

 

 

 

 

古い物の風合いは全て残して美しく仕上がりました。

 

漆で塗装された木部と、とても手の込んだ造りをした鉄の金物とのコントラストもとても美しく、この箪笥の大きな魅力です。

 

 


 

日本の家具デザインや工芸技術を勉強する貴重な修復でした。

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