★★★★★★★★☆☆
2018年 107min.
ネタバレ してるはずです。
敬称略
監督 ジェフリー・ナックマノフ
製作 キアヌ・リーヴズ、ロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラ ほか
製作総指揮 バイロン・アロン含め20名
脚本 チャド・セント・ジョン
音楽 マーク・キリアン、ホセ・オヘダ
ウィリアム:キアヌ・リーヴズ
モナ:アリス・イヴ
エド:トーマス・ミドルディッチ
ジョーンズ:ジョン・オーティス
マット:エムジェイ・アンソニー
ソフィ:エミリー・アリン・リンド
ゾーイ:アリア・リーヴ
スコット:ナシャ・ハテンディ
事前情報として、「キアヌ・リーヴズが狂気の」って言われたら、そら観るしかないやろ、て感じで観始めますよ。まあただ、製作がキアヌ・リーヴズ含めて5人、製作総指揮にいたっては総勢20人ということで、若干の不安はよぎりますが……。
オープニングでわかるのは、死体の脳から神経細胞を取り出してロボットの脳に植え付ける、と。そうすればロボット人間の、はい、できあがり、的な感じなのですけれどもね。まあそれ、できないことはなさそうですけど、でも元は亡くなってしまった人の脳みそですからね、植え替えたとしてももう神経細胞自体は死んでるわけですから、思考はできないんじゃないかなあ、とは思いますね。倫理的にはゼッタイに許されなさそうではありますけどね。
↑やっぱりロボット、壊れましたね。
何度も何度も失敗を繰り返して、いよいよもうこれ以上お金はかけられんぞ、出資者も逃げるし、と。まあ、どっかで聞いたような話だな感は満載ですが。家族が犠牲になってるっていうのも王道ではありますね。
↑キアヌ・リーヴズ、54歳だそうです。
さすがに老けたかな、っていう感じですけど、でもやっぱ若々しいです。
で、嵐の中、家族で車に乗ってて事故って、キアヌ以外の、奥さんと3人の子供たちが死んでしまう。これもまた、よくあるパターン、ではあります。ちょっと人数的には多い気がしますが、それがまたあとあと重要に絡んできます。ただ、どうしてもこの時点ではデジャヴュが渦巻いてましてね、さすがのキアヌもやはり「ジョン・ウィック」以外はダメなのか、と、観ててそうとう不安ではありました。ここのところわたしの観る映画、駄作が続いてますしね。それもあったのかもしれませんが。
ていうかキアヌ・リーヴズ、「ジョン・ウィック」もそうでしたけど、なんかこんな哀しいシチュエーションの役が多いなあ、という気はしますね。普通の彼が見てみたい、とふと思ったりもしました。
↑で、話はもちろんこうやって友人であるエドさんを巻き込んで、死んでしまった家族を再生させようとします。
「狂気」って聞いてた時点でその展開はまるわかりではありましたが、こう思い通りに映画が進みますと、逆にどうやって裏切ってくれるのか、とちょっとワクワクしだしたのも事実ではありました。まあ、ピーター・オトゥールの名作「クリエイター」に通じるものがありますしね、最後は感動させてくれるんか、との期待値ですね。
↑エドさん(トーマス・ミドルディッチ)は必死に止めようとします。いい演技ですよ。
けっきょく人の好い善人エドは、キアヌに押し切られて、死体の始末までさせられるハメになりました。でもこれで、さあどうなる、ということになってくるのですね。ここまでの流れは、読めますけど、いいんです。
そしたらいよいよ予想に反した事態がおきます。生き返らせたい家族は4人なのに、生き返らせるのに必要な装置は3つしかない、とそうなってくるのですね。まあ、驚きはないですけどね。その裏切りは、ちょっと弱い気はします。
あ、そうそう、ここでキアヌが家族を生き返らせようとしているのは、冒頭のようなロボットに脳細胞を植え付ける、ってんではなくって、なんかもう生体を形成させてしまう、というやり方です。そういう実験もしていたらしいですけど、それを人間に当てはめよう、と。要するにクローンを生成する、ということですね。で、その装置が3つしかない、じゃあ誰か一人を犠牲にしなくちゃならない、ということになるわけです。ていうかこの装置、その中で生成される生身はものすごいスピードで老化していくんですって。だからちょうどよい頃合いに装置から取り出せば、もとのままの家族と再会することができる、ということのようですが、これもちょっとご都合主義のような気がしましたね。
↑キアヌ・リーヴズ、頭抱えてます。
だれを犠牲にするかをクジで決めて、末っ子のゾーイだったのでこうなってます。
まあ、だれ引いてもこうなるんでしょうけど、まだ4~5歳の女の子でしたからね、そら父親としてはこうなりますね。奥さんは対象外でしたから、3人の子供から選ぶなんてことは、わたしには絶対できないと思います。ていうか、ウチは子供二人で良かった、と心から思いました。
けっきょく引いてしまったものは仕方ないですから、末っ子のゾーイは生き返らせることができないわけで、ここもなんかうまい具合に操作して、生き返らせる家族の記憶からゾーイの記憶を抜いてしまいました。う~ん、なんか次々とドラえもんの道具のように都合よくいろんなことができるのですが、まあいいでしょう、そうなんでしょう、きっと。そういう研究をしていた人なわけですしね。映画ですから。でもここで若干わたしの中では減点対象とはなりました。
↑記憶を削除してる真っ最中です。
いやでもこれやっぱり、ツライですね。そういうとこでは観ているこっちも感情移入はしてしまっているわけで、いろんな思いが渦巻いたりはします。特に子供を持つ親だったら、やっぱりものすごく胸が締め付けられるのでは、と強く思いましたよ。
↑ゾーイからキアヌぱぱにプレゼントされたピンクの恐竜です。
このピンクの恐竜、キアヌには記憶があるわけですからね、こうしてゾーイの思い出の品を手に取って哀しみに暮れる、なんてこともあるのでしょうけれども、でもそうなるとやっぱりこれ、のちのちゾーイもしっかり絡んでくるのでしょうね。そういう予想は容易にたてられました。
善人エドの存在がとってもいいです。キアヌのためにイヤな顔をあまり見せずにいろいろ助けてくれます。良いところに気づいてくれますし、彼がいてほんとによかった、と思ってしまうのも、感情移入している、ってことなのではあります。彼がいなかったら、子供の学校とか奥さんの職場に、彼女たちが休んでいる理由を連絡するなんてことは、ゼッタイ考えつかないでしょうからね。脚本としては、しっかりと細かいところまで気が配られてて、違和感はまったくないですね。ご都合主義を除いては。
さて、で、ここまできますとね、開始40分過ぎなんですけど、どうにもやっぱりさきほど申した映画「クリエイター」がかぶります。会社の何百万ドルっていう機械を持ち出したり、細胞から人体を形成しようとしたり。ハデな「クリエイター」という感じで。そうなるとわたし、いやいや「クリエイター」はハッピーエンドだったけど、こっちはどうするんかいな、とがぜん先が気になりだします。あ、いやもちろん、「クリエイター」を知らなくっても十分楽しめますけれども、知ってるとなお、ということですね。
↑奥さんモナのアリス・イヴ。
なんか彼女の本名が、この映画に最もふさわしい名前のような気がします。
↑マット(エムジェイ・アンソニー)も
↑ソフィ(エミリー・アリン・リンド)も昏睡してます。
ちなみに、マット役のエムジェイ・アンソニーのエムジェイは、松本潤のことではありません。当たり前ですね。
で、わたしここでハタと思いました。善人エドが「クローンをつくったのか」って言いますけど、これ厳密に言うとクローンじゃないですね。記憶はもとのままちゃんとあるわけですから、コピーなんですね。まあゾーイの記憶はないですけど、これは人為的に削除されたものなので、やっぱりコピーなわけですよ。いわゆる3Dコピー。これもうなんか、とっても恐ろしい気がしてきましたと同時に、とってもドキドキもしてきましたよ。なんのドキドキなのかはよくわかんないですけど、とにかく心臓の鼓動が速くなってきました。おもろくなってきたやん、ということなのでしょうかね。いまだにわかんないです。
↑奥さんの手を触ると機械が反応することがわかりました。
そうです、ここで問題の本質がわかるんです。
えと、ロボットでは再生した脳細胞は生身の身体を判断できなかった、と。生きているはずなのに自分の身体はどこにある、と錯乱してしまった、ということなのですね。そらそうでしょう、脳が目覚めたら、あるはずの自分の臓器はなにひとつなくって、なんか鉄の塊みたいになっている、って。そら脳でなくても錯乱しますよ。なんじゃこりゃぁっ、て。だから、身体がちゃんと存在してさえいれば、拒否反応みたいなのは起こらない、とまあそういうわけですね。なるほどー、です。肚落ちしました。なかなか脚本もいい展開じゃないですか。ご都合主義を除けば。
↑キアヌ・リーヴズもうれしそうです。なんならドヤ顔ですね。
そらこうなるわさ、てなもんです。観てるこちらもキアヌと同じような顔になってました。
↑さあ、ということで半分過ぎて「クリエイター」を超えました。ここからどうなる?ということですね。
↑家族が勢ぞろい、なわけです。もうドキドキしかしませんよ。
というところで、実はこんなに世紀の大発明をしたというのに、研究所では最初にぶっ壊れていたロボットのほうの研究を成功させなくてはならない、ということになりました。要するに、戦略兵器を大量生産する、ということなのですね。だからロボットが必要なわけですよ、人間の脳みそを持ったロボットが。おお、ひらめいた、とかいって人体生成を発表してはならんのですね。兵士にするわけですから、人ではなくロボットでないとまずいわけです。
↑そしたらとうとう自分を実験台にしだしましたよ。
自分の脳細胞を取り出してロボットに植え付けよう、と。キンチョーです。
↑なんかやっぱりキアヌの言動とか見てて、奥さんも不穏な感じです。
研究のほうも相まって、いろいろ不安にあおられだします。これぞ映画やん、て感じになってきました。
↑で、とうとう事の真相を奥さんに話しました。
レプリカだ、って言ってしまったのですね。
まあそこらへんは、違う説明とかできんかったんか、とも思いましたけれど、ウソはつきたくない、っていう思いもあったのでしょうかね。コピーすなわちレプリカ。事の本質は間違ってないわけですからね。
ところが開始1時間を過ぎますと、いよいよ家族がゾーイのことを言い出しましたよ。そらそうこなくっちゃ、なわけですよね。佳境に入ってきて、そうとうのめりこんできました。そしたら……。
↑こちらのお方、研究所のキアヌの上司だったジョーンズ、が悪の親玉だったことがわかってきて、風雲急、という感じです。
最初の事故からすべて仕組まれたこと、ということなわけですね。ああ、いや、まあ、そんな気もしてましたけどね。でも流れがうまいので、普通にドキドキして観られますよ。脚本がうまいのです。
↑キアヌ一家、あわてて車で逃げます。
なんかここは「ジョン・ウィック」をほうふつとさせますね。
↑カーチェイスもあります。
家族の身体にGPSが埋め込まれとる、ということで追跡可能、と。いつのまに埋め込んだんや、って感じですが、まあとはいえこれ、ホラーではなくってサスペンス感が満載ですね。もうドキドキがとまりませんよ。
↑なんか「ジョン・ウィック」で観たシーンのような気がしないでもないですが。
↑もうこうなってきたら、ハッピーエンドを願うばかりなのです。
このあと、善人エドの持ってるボートで逃げようと港に行って、家族は車に待たせてキアヌがまずボートに走って行くのですけれどもね、
↑ボートの中でそのボートの鍵を探している間に家族はさらわれてしまいました。
て、いやだから、なんで家族をそこに残していくん、て。鍵見つかったらすぐ逃げるんでしょうに。だったら一緒に行動しなきゃアカンでしょうよ。まあ映画ですからね、話的にはそっちのがおもしろいですからいいですけど、実際にはこれはやったらアカンことですね。
↑で、やっぱり善人エドもグルでした。善人ではありませんでした。
脅されて、っていうことですから仕方ないですね。キアヌも「いいんだ」って言ってますし。たしかにこれを聞いても、わたし怒りも落胆も、なんもありませんでした。
↑で、こうなって、
↑エドさん、こうなりました。
こうなるのはまあ普通なんでしょうけど、これがやっぱりザンネンではありました。エドさんに家族がいなくてよかったと思わずにはいられませんでしたね。
↑そしたらこれ、キアヌが操ってます。
さっき自分を実験台にしていたのが功を奏したわけですね。さっきも言いましたけど、自分の脳細胞をこちらのロボットに植え付けたわけです。こちらはニンマリとなります。ていうか要するにしれっと実験成功しとるやん、ではありますが。
↑で、キアヌ、自分と向き合ってます。
どういう感情なんでしょうね。なってみたいとは思いませんけど、体験してみたいとちょっとは思いました。
で、けっきょくいろいろあって悪の親玉も倒して、
↑まあ当然でしょうけれども、ゾーイも戻ってまいりました。
悪を一掃したあとは研究所をフルに使えたわけですからね。ハッピーエンドでよかった、ということですね。ちょっぴり泣けましたよ。
↑ラストはとっても粋でした。
いやあおもしろかった、が感想です。いろいろあったけど、いやいやでもそれでいいんだよと思う、なかなかに優れた脚本の良い映画でした。
ちょっと話が難解なのと、エドさんが死んじゃったのでマイナス1、って思ってましたけど、なんかエンドタイトルが11分もあったので、そこでもうマイナス1としときました。て、11分て……。
今日の一言
「キアヌ、もう他の作品良いから早よ『ジョン・ウィック4』やってくれ!」
↑善人エド。