★★★★★★★★★★

2006年 102min.

ネタバレ してなくてもわかりますよね爆  笑

敬称略

 

 

 監督、脚本がシルヴェスター・スタローン、音楽もビル・コンティで、シリーズ最終作。前作で若干コケましたから、監督が自分になって気合入ってるなあ、という感じでしょうか。びっくり

 

 一応、シリーズ最終作ですね。「クリード」っていう映画がほかに2本、これ以降に作られましたけど、そちらはスピンオフですから、シリーズ正統派の流れとしたら、本作がまぎれもない最終作となりますよ。

 

 にしても、前作から16年後ですよ、16年。みんなけっこう老けちゃってんだろうなあ、と若干怖さも胸に秘めて、観だすことといたしまして。批評家は絶賛、だそうですが……。

 

 オープニングは、シリーズ一作目を除くと、いつものような前作のラストから入って本題に突入、というパターンではありませんでしたね。まあそれは仕方ないです。「ロッキー2」から「ロッキー5」までは、後日譚という意味合いが多分にありましたのでそういう始まりで全然違和感なかったですし、逆にそうだからこそすんなり話に入っていけたのですけれども、今回は前作から16年後ですからね、同じ手法をとったら違和感しか残りませんからね。ただ、わたしとしては、いつものオープニングだったらどうやって本題に入っていくんやろ、ってちょっと期待してた感もありましたから、ちょっぴりザンネンではありましたけど……。スタローンも60歳じゃ、やっぱりそれはムリでしたね。

 

↑さすがにけっこう老けられましたね・・・・・・。

 

 で、すぐに仰天しますよ。まさかのエイドリアン故人と・・・・・・。お墓参りのシーンから始まりますよ。ビックラですね。まさかまさかです。「まさか」としか言えませんけど、ほんとに「まさか」ですよ。だって「ロッキー」って言ったら、スポ根アメリカンドリームを基軸に、じつはロッキーとエイドリアンとその他ゆかいな仲間たちの家族愛のお話しじゃないですか。ロッキーにとってはエイドリアンは分身というか、身体の一部でしょう。それがいないってことになると、はたしてこれから90分近く、ロッキーほんまに大丈夫か、と、とっても不安になりますよ。まあ、そういった逆境を克服するのが「ロッキー」の「ロッキー」たるゆえんではあるのでしょうが、ものがエイドリアンだけに、心配でなりませんね。ショボーン

 

 ただ、そんな不安をゆいいつなだめてくれたのは、やっぱりビル・コンティのいつもの名曲でした。あのやわらかな、観客を包み込んでくれるかのような優しいメロディは、とてつもない安心感を与えてくれましたね。さすが、アカデミー賞作曲家(1983年「ライトスタッフ」で受賞。「ロッキー」はノミネート)なのであります。ちなみに80年代中盤は、アカデミー賞授賞式の生オーケストラの指揮もされてましたよ。ニコニコ

 

 16年も経ちましたから、ジュニアも成長しまして、今ではいっぱしの社会人になってましたね。演じるマイロ・ヴィンティミリアって、なんか聞いたことあるなあ、て思ってましたら、ドラマ「ヒーローズ」にペトレリ弟の役で出てましたね。久しぶりに見ましたけど、時系列的には同時期だったのですね。立派になったもんだ、とこれはまったく親戚のおじさん感覚です。

 

↑マイロ・ヴィンティミリア=ピーター・ペトレリです。けっこうな男前ですね。どことなくスタローンにも似てますよ。びっくり

 

 で、このあとちょっとウルっとくるシーンが、バーが出てきたときでした。バーの名前が「エイドリアンズ」と。なんかこうしてカタカナで書くと「エイリアンズ」みたいですけど、まったく関係はないです。当たり前ですね。いやこれ、そうとうなロッキーファンが経営するバーなんだな、なんて思ってましたら、あとでわかったんですけど、スタローンが経営するバーでした。だからわたし、そこでもう一度感動してしまいましたよ。だってやっぱり愛は深かったんだな、って思えますじゃないですか。ロッキーはそうでなくちゃならないのですからね。うれしくて涙がとまりませんよ。何本か前に観た「秘密(秘密 | みたたの日常と映画ざんまいそしてディズニー! (ameblo.jp))」にも通ずるところがあって、もうわたし的にはたまらないのです。

 

↑英語なら「エイリアンズ」ではないですね。

 

 だからここまでを含めて、オープニングは観ていてとってもつらかったです。すべてのシーンにエイドリアンがいて、エイドリアンがいなくて。そこにやるせないロッキーの気持ちが重なってて、映画史上最高に切ないオープニングなのではないでしょうかね。

 

 バート・ヤングも相変わらずよいです。ほかの出演者と同じく老けましたけど、そもそも老け顔だったので、スタローンほどは違和感はないですかね。なんかアーネスト・ボーグナインに似てました。で、このバート・ヤング、すなわちエイドリアンのダメな兄貴ポーリーの心の葛藤もしっかりと表現されてて、さらに悲しみが増します。イヤなヤツなんですよ、ポーリー。でもやっぱりそれなりにしっかりとした愛情はあって、どうしようもできない自分にハラが立ってて。「ロッキー」でアカデミー助演男優賞にノミネートされた実力は、まだまだ健在だったのですね。

 

↑バート・ヤング。若干髪質が老けましたかね。爆  笑

 

 ていうか、なんか開始15分たってもずっとこんな調子でしたから、わたしさすがに心配になりました。本題(ボクシング)に入らずこのまま終わってしまうのではないかという不安。そんなことはないのでしょうけれども、それほどこの悲しみが心に深く、観客にも染み入ってくるわけですよ。一作目から「ロッキー」を観ている身としては、それも至極当然なのでしょうけれども、もういい加減この不安な気持ちから解放してくれよ、とは思いましたよ。いつまでつづくん、これ?って。だって、あんなにかわいかった息子もよりつかず、エイドリアンもいなくなっちゃったら、ロッキーもう一人じゃないですか。孤独感しかないんですよ。心が痛いです。

 

 そんなときに救世主的に現れたのが、一作目でロッキーに悪態をついた、近所に住む少女のリトル・マリーでした。まさかここで恋愛感情が発生するとは思いませんが、たのむから心の癒しになってくれ、とほんとに思いましたよ。

 

 ↑リトル・マリーのジェラルディン・ヒューズ。いい感じの癒し系でしょうか。佐藤仁美ちゃん似です。照れ

 

 そう思ってたら、やっぱりというかなんというか、次第にほっこりしてきます。ちょっと長かった気もしますけど、いざないとしては悪くないですよね。さすが名脚本家のスタローン、いい流れですね。

 

 ちょっと息子をわからずやに書きすぎかな、とも思いましたけれど、ロッキーの息子って言われるのに反発する、っていうコンセプトはよくわかりますから、そこはそれ、最後でどうせ分かり合うのでしょうし、ここは観ているほうも我慢のしどころ、というものなのでしょう。やさしく見守ってやろうじゃないの、って思いがわくところもまた、親戚のおじさんではありますね。

 

 リトル・マリーの息子も、ロッキーにいい影響を与えてくれます。家族を大事にするロッキーの思いがあふれてて、とってもいいシーンが続くことになりますよ。息子くんの役をやったジェイムズ・フランシス・ケリー三世くんは、最初とっつきにくい感じでしたけれど、すぐにいい子になりました。そこでもほっこりですよ。

 

↑たぶん、ジェイムズ・フランシス・ケリー三世くんだと思います。すみません、間違ってないとは思いますが……。

 

 いよいよ話が本題に入ってくると、ロッキーが現役復帰して、なんとまあ無謀なことに現役チャンピオンと対戦することになるのですけれども、そうなるとテレビやマスコミが二人をめちゃくちゃたきつけるんですね。それがまあ異常なほどでして、むこうのテレビってのは本当にあんなに平気で人をこき下ろすのでしょうかね。日本のマスコミも「マスゴミ」って言われるほどクズなところもありますけれど、それと同様以上に、人格を傷つけるようなことまで言ってましたからね。リスペクトというものがまったく感じられませんでしたよ。プンプン

 

 そんな中でも、泣かせるところはキッチリ泣かせてくれます。そこがいいんですよね。ロッキーが苦しい胸の内をポーリーに打ち明けるところがあるのですけれど、やっぱりそこは号泣シーンです。対比がすごいですけれど、違和感はないですし、ロッキーの気持ちを思い出させてくれるタイミングとしては絶妙ですね。

 

 そもそもバート・ヤングがいいですからね。何度も言いますけど。このあと仕事をクビになりますが、そんな演技はお手の物とでも言わんばかりの名演技でした。脱帽です。m(_ _)m

 

 リトル・マリーもいい演技するし、もうだれもかれもが最高の演技を魅せてくれてました。そしてもちろんスタローンも。終盤では思った通りちゃんと息子と分かり合ってハグするわけですけれども、ほんとにいいシーンです。ありふれてる気もしないでもないですが、わたしの場合もう父親も母親もいませんのでね、しようとしてもできないことですから、ちょっぴりうらやましさもありましたね。スタローンも本作の6年後に「ロッキー5」に出てた実の息子のセイジ・スタローンを亡くしてますから、それも加味されて、けっこうわたし泣いてしまいましたよ。えーん

 

 トレーニングのシーンで、待ってましたのトニー・バートン登場です。シブいですよねえ。トレーニング的にも映画的にも、心強い味方を得た、という感じです。何気に「ロッキー」シリーズ全6作に出てるんですよ。これ、ほかにはスタローンとバート・ヤングだけですからね。スタローンが心から信頼しているのがよくわかりますね。

 

↑いやあもうシブさのかたまりですね。魂の演技でした。

 

 トレーニングのシーンは、これぞ「ロッキー」です。ブレませんね。逆に、これがないと「ロッキー」の感じがしませんよ。ビル・コンティの音楽に合わせて、かっちょいいシーンが続きますが、衰え知らずのスタローンに驚愕です。ちょっと身体が重そうな感じもしますけれど、あれだけ走ってバーベルもち上げてなんてのは、とても60歳とは思えませんでした。

 

↑定番のシーン、ですね。犬もタイヘンではあります。

 

↑こちらも定番。でも、良い子は真似しないようにしましょうね。成人病のもとです。笑い泣き

 

 さあ、そしていよいよ試合ですよ。エキシビジョンだと言ってましたけれど、そんなことにならないのはこちらもハナからわかりきってることです。だから、60歳のロッキーが心配にはなりますが、もちろんワクワクもするわけです。計量のシーンでは、ロッキーはガウンを脱ぎませんでしたけれど、身体を見せるのをもったいぶってるとこはちょっぴり笑えましたが。爆  笑

 

 相手はチャンプのメイソン・ディクソン。て、演じるアントニオ・ターパーってほんまもんの現役チャンプじゃないですか。わたし、スタローンの身体見て驚愕したって言いましたけど、まさかの本職にはひっくりかえりましたよ。そもそも、負けはしないにしても、ロッキーの引き立て役になるわけですから、よく出演を承諾したなとも思うのですけれども、まあ考えたら現役チャンプだって「ロッキー」に出演したいと思うもんなんだな、とも思いましたよ。好感度も上がるでしょうしね。さすがエンターテインメントの国、ではありますね。びっくり

 

↑現役チャンプです。実際はライトヘビー級だそうです。ロッキーのほうが大きく見えました。爆  笑

 

 試合にリトル・マリーがエイドリアンの写真持ってきたところは、またも号泣シーンです。考えたらそんなことも当たり前にすることだったのですけれど、映画にのめり込んでいたのですっかり忘れてしまってて、虚を突かれた感がありまして、思わず落涙、とまあそういう感じです。わたしも56歳ですからね、年相応に涙腺は弱ってますよ。笑い泣き

 

 で、わたしここでふと気づいて、めちゃくちゃ驚いたのですけれども、よく見たらスタローン、どんどん若くなってるじゃないですか。まさか試合のシーンを先に撮ってて、なんてこともないでしょうし、そんな撮影時期が一年ほど早い、なんて生易しいものじゃないほど、ロッキーが若々しくなってるんですよ。そりゃ現役チャンプも驚愕だわ、て感じでした。

 

 バート・ヤングの試合前の一言もなんともいえないいい味ですし、もうこうやってルーティンのようにはなってますけれど、なくてはならないシーンが続いて、「ロッキー」の世界に入り切ってしまっていました。照れ

 

 若干ですね、試合に入って行くまでの心の変化とか、トレーニングのシーンもそうでしたけれど、短いかな、という気もしないでもないです。もちろんスピーディーに、重きはエイドリアンとの愛、ということでしょうので、それもそれでいいのですけれど、でもやっぱりもうちょっと長くてもよかったんじゃないかな、とは思いました。映画は90分から100分がちょうどよい、なんてエラそうに言ってた自分の言葉に反する気もしますけれど、これほど珠玉の時間はもうちょっと長く経験していたいな、と思ったというところです。ウインク

 

 試合になると、チャンプのほうにブーイングですよ。まあ、スタローンの映画ですからね、自分で脚本も書いてるわけですから、そこはやりたい放題ですけれど、もうすっかりおなじみになっているわれわれは、そんなシーンでほくそ笑むということになるわけですね。

 

 そしたら、けっこうなサプライズも用意されてましたよ。

 

↑うわ、マイク・タイソン!

 

 いえね、このマイク・タイソンもそうですし、リングアナのマイケル・バッファーも、レフェリーのジョー・コステロもほんまもんなんですよ。実在の本職の人。

 

↑マイケル・バッファー。井上尚弥のリングアナで見たことないですか?

 

 試合のロケ地の確保がなかなかできなくって、ようやく見つけたのがこの会場だったのですけれども、実はこのあと本当にヘビー級の試合があったそうで、だからみんな本物、観客も実際にその試合を観に来た人たちだったそうなんですね。だから最初は、映画の撮影なんて、と観客からブーイングがおこるのではないかって心配してたのに、実際スタローンが入ってくると、なんの打合せもしてないのにスタンディングオーベージョンが自然発生的に巻き起こったそうですよ。いやまあ、わたし的には心配する方がどうかしてるとは思いましたけどね。まあいずれにしても、やっぱりロッキーは国民的ヒーローだった、ということですね。

 

 試合は、相変わらずようもまあこんなに殴り合うな、というくらい殴り合ってました。リアリティを出すために、寸止めなしのガチンコ勝負だったそうですけれども、それをこなすスタローンはやっぱりただもんではなかったでした。そらチャンプもビックラでしょうね。まあいつものように、顔が腫れ上がるのはロッキーだけでしたけれどもね。笑い泣き笑い泣き笑い泣き

 

 試合途中のフラッシュバックも最高の演出でしたよ。エイドリアンはもちろんのこと、ミッキーのバージェス・メレディスが出てきたところもまた号泣必至です。リトル・マリーをエイドリアンに重ねるところもいいですね。なんの下心もないです。ただ、家族として重ねている、とそういう感じで。

 

 で、最後のビル・コンティの名曲。ここで泣かずしてどこで泣くのか、という本日最高のハードパンチで、われわれ観客もノックアウトなのでありました。だからこの名曲を、安易にバラエティとかで使ってほしくないんですよね、日本のテレビ関係者さん、特に「探偵!ナイトスクープ」には苦情の電話を入れようかと思っている今日この頃ではあります。プンプン

 

 ちなみに、エイドリアン役のタリア・シャイア。本作にも出る気まんまんだったそうなのに、出演オファーがこなかったので、スタローンにぜひ出してほしいと直談判したそうでして。でもスタローンは首を縦に振らない。幽霊でもなんでもいいから出してほしいと懇願しても、やっぱり出してもらえず、けっきょく仲たがいした状態になって、口もきかなくなったそうです。ところが試写会に招待されて、出来上がった本作を観たタリア・シャイアは、どうして自分が出なかったのかをしっかりナットクしたそうでした。スタローンも、内容が漏れることを避けてタリア・シャイアに話さなかったのでしょうけれど、そこはスタローンのファインプレーですかね。そしてその思いをしっかりと受け止めたタリア・シャイアは、さすがエイドリアン、なのでありました。ラブ

 

いややっぱ最高の映画ですね!

 

 

 

今日の一言

「あ、銅像が、ない!」

 

 

レビュー さくいん