むかし通ったフォルクローレ関係のお店の話 | ふぉるくろーれ夜話/mitaquenaのブログ 

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仕事をリタイアしてから始めたケーナの演奏をきっかけに、思い出したり思いついたりした、主にフォルクローレに関するよしなしごとを綴ります。

「10年ひと昔」とよく言うが、私は30年近くフォルクローレの世界から離れていた。

その間も、ウェブ経由でちょいちょいCDを買ったり、動画を観たりはしていたが、同好の士との連絡はほぼ途絶え、積極的に交流を持つことはなかった。

よって今の私は、3昔前から現代のフォルクローレ界に戻ってきた浦島太郎のようなものである。

 

その浦島太郎が、社会人のフォルクローレ・サークルを探して入会し、いざ活動を再開してみると、フォルクローレの世界が変わっていることに色々と気づかされる。

 

まず、身近なところでは、昔足しげく通っていたお店が移転したり、無くなったり、フォルクローレ関連商品を置かなくなったりしたこと。

今日は、大昔に通っていたお店について、徒然なるままに書き留めたい。

 

1.首都圏

 

どのフォルクローレ(楽器・音盤)店によく行くかは、人それぞれだろうが、個人的に一番思い出のあるお店は、渋谷は宇田川町の、東急ハンズ渋谷本店やスパゲティ専門店「壁の穴」の近所にあった平屋の中南米雑貨店「チチカカ」だ。

当時は、実家の横浜から練馬の高校に通っていたので、帰り道によく立ち寄った。

ボリビアから直輸入LPを常時多数置いており、私を含め、新譜入荷日を首を長くして待っている人が多かった。お店のスタッフは、あまりフォルクローレには関心が無く、店内ではよくレゲエが掛かっていた気がする。でも頼めば、気の済むまでレコードの試聴をさせてくれた。

ただ、売上は衣料やアクセサリーに圧倒され、LPや楽器の扱いは段々と縮小し、お店自体も、いつしか、東急ハンズや壁の穴と共に無くなってしまった(正確には、壁の穴の本店は、道玄坂へ移転したらしい)。

しかし、会社自体は存続、どころか拡大発展しており、現在はオリジナルの衣料雑貨を中心とした品ぞろえで、北は北海道から南は沖縄、果ては香港にまで、主にイオンモール内に多店舗展開している。

株式会社チチカカ|ブランド紹介・最新ニュース・店舗情報 (titicaca.jp)

 

現地からの物品購入に留まらず、人材育成を含め、日本フォルクローレ界に多大な貢献をした福岡稔さんの店(店以上にフォルクロリスタの交流の場でもあった)「アンデスの家ボリビア」は、同氏の逝去により神奈川県の丹沢山地の麓・松田町のお店を閉め、今は娘さんが受け継いで東京の小平市で店舗を営業している由(松田町は音楽館が存続)。

 

 

また、文京区の白山に東京店を構えていた「コチャバンバ」は、今は御茶ノ水(淡路町)に移転して健在(大阪にも支店がある)。チャランゴの講習会も変わらず開催している模様。

アンデス・フォルクローレ音楽 楽器館「コチャバンバ」 (cochabamba.jp)

 

高校時代に、学校帰りによく立ち寄った、池袋の西武百貨店内の「アール・ビバン」。当時は、美術書専門店だったが、ヨーロッパから輸入したレコード・CDも売っており、現代音楽のアルバムに混じって、ヨーロッパ出稼ぎ組のアルバムがちょくちょく入荷するので、目が離せなかった。

当時、上記「チチカカ」のレコード売り場で知り合った、東京造形大学タカオマンタの人たちに親切にしてもらい、ボリビア・マンタ Bolivia Manta の存在と、彼らのアルバムが(タイミングが合えば)この店で入手できると教えてもらい、足しげく通って、アルバムを揃えたものだ(タカオマンタの皆さん、ありがとうございました)。

時は経ち、店舗は既に無く、入居していた西武百貨店さえヨドバシカメラに経営権が移るご時世だが、会社はその後発展し、東証スタンダード上場企業として存続している様子。

ARTVIVANT | アールビバン

 

さらには、神保町にあった「新世界レコード」社。

基本的には当時のソ連及び旧共産圏の音楽を扱っていたが、第三世界の音楽としてフォルクローレの音盤も紛れ込んでいたので、古本屋巡りのついでに時々立ち寄ったものだ。ルスミラ・カルピオ Luzmila Carpio のフランスでのライブ盤等が入手できた。

その後、2007年頃に閉店したらしい。

追悼・新世界レコード社 - ワールドミュージック町十三番地 (goo.ne.jp)

 

山梨のハイクオリティ楽器専門店「ファンタシア」には、長らくご縁が無く、時々ウェブサイトを見ては、涎を垂らしていたが、一昨年、石和温泉へ旅行した際、足を伸ばして初めて店舗を訪問した。

特に昔の作者のチャランゴの品ぞろえが圧巻。もう現地でも入手困難であろう名器がゴロゴロしていた(いや実際にはきちんと立てかけてあったw)。

いつかチャランゴが弾けるようになったら、木製ペグのビジャセラーノ系のをぜひここで入手したい。

ファンタシア アンデス楽器・ボリビア楽器・フォルクローレ・プロ用楽器・ケーナ・チャランゴ・サンポーニャ・ギター・販売・南米雑貨・コンドルは飛んで行く・アチャチャランゴ・fantasia・FANTASIA (fc2.com)

 

 

2.関西圏

 

大学時代を過ごした関西圏では、奈良市学園前にあった「カサ・デ・ラ・パパ」。店主さんの穏やかなお人柄と商売っ気の無い姿勢もあり、京阪神のフォルクローレ愛好者たちに親しまれていた。

一時お休みされていたが、現在は、大阪市内(西中島南方駅近く)に移転して存続中。(ふと懐かしくなって足を運んだ2022年の川俣町コスキンにも出店されていて、店主さんもお元気そうだった)

フォルクローレ南米民族楽器専門店カサ・デ・ラ・パパ/ケーナ・サンポーニャ・チャランゴのことなら (casadelapapa.com)

 

開店当初はCD専門のオンラインショップだった大阪は吹田市の「マチュピチュ」。

トレンシート・デ・ロス・アンデス Trencito de los Andes 他、貴重な音源が手軽に入手できた。店主さんにも開店前後、色々お世話になった(その節はありがとうございました)。

今は、アンデス楽器専門のオンラインショップとして営業継続中。

リアル店舗のように試奏ができない分、現地のちゃんとした作者・工房製の楽器がお値段がリーズナブルに入手できる。

おそらくは個人経営で、世の中の変化に対応して主力商品をCDから楽器類に切り替えて、約30年にわたり良質のアンデス音楽物品の提供を続けてこられたことには頭が下がる。

ついこの前、久しぶりにクロマティック・マルタとチャフチャス、チャレコを購入させて頂いた。

アンデス民族楽器マチュピチュ (shop-machupicchu.com)

 

同じくCD専門のオンラインショップだった滋賀の「ディスコ・アンディーノ」。おそらくボリビア盤のCDはこちらで最も多く入手し、それ以外でも大変お世話になった(本当にありがとうございました)。店主の方のアンデス音楽への造詣・情熱がすごく、商品説明も詳しく参考になった。品ぞろえも豊富で、値段も送料も支払いも極めて良心的だった。

ただ、2015年以降、ウェブサイトの更新が途絶えている模様。

YOUTUBEやAmazonMusicなどの登場で、CD販売を業として成立させるのは困難な時代になってしまった。

フォルクローレCD ; アンデス音楽専門店 『ディスコ・アンディーノ』 (discoandino.com)

 

約30年ぶりにフォルクローレ活動を再開して、今と昔で変わったことをあれこれと綴るつもりが、通ったお店の話をしただけで、毎度のことながら、結構な長文となってしまった。

 

今日はこれぎり。機会があれば、また続きの話をさせて頂きたい。■

 

■追記■

本稿投稿後、まだ何店も書き漏らしがあることに気付いた。以下に略述させて頂く。

また、本稿は当然ながら、フォルクローレショップの網羅的なガイド記事ではなく、個人的な思い出の徒然語りである点、ご了承頂きたい。

 

アンデス

東京・有楽町駅前の交通会館の催事スペースにたしか86年頃まで不定期で出店していたアンデス民芸品店。手紡ぎ、手編みのセーター等、アルパカ製品はハンドメイドの良いの物を仕入れていた。行くとおやじさんが良く館内の喫茶店からコーヒーの出前を取ってご馳走してくれた。アチャという楽器工房やルミリャフタというグループについて知ったのもこの店だった。

 

エル・ムンド

改修前の代官山駅近くにあった中南米民芸品店。ここで初めてタルカを買った。一本だけではあまり意味がなかったw

 

山野楽器銀座本店

一階のレコード売り場には、ラテンアメリカ音楽専門誌「ラティーナ」推薦盤のコーナーが設けられており、アルゼンチン盤のみならずボリビア盤も常時10数枚程度置いていた。

ルパイに初めて巡りあった場所(1977年ボリビア盤)。

上階では、リコーダー類に混じって、ピントス等のケーナも数種売られていた。

 

ラティーナ

恵比寿にあった。私が訪ねた頃には、月刊中南米音楽から、誌名が変わっていた。

入口のあたりが物販スペースになっていて、誌面でレビューされた音盤やピントス、ロドリゲス等、アルゼンチンの製作者の楽器少々を小売していた。

 

TALLER SERRANO

早稲田の辺り。20年以上前に少しお邪魔したことがある。

(Reynald Vegaのケーナとマルタ、Trio Arte LibreのCD等を買ったりした)

ご主人はフォルクローレに関する膨大な知識を有し、かつ楽器、特にチャランゴ演奏の技量が玄人が裸足で逃げだす程にすさまじかった(古都スークレ伝統の、野暮な掻き鳴らしはご法度、優雅に爪弾くのを粋とする、鉄弦12弦チャランゴの実演を初めて目の当たりにした)。

Facebookを拝見すると、現在はマウロ・ヌニェス直系の木ペグ非対称チャランゴの制作と修理を主に行っているご様子。フォルクローレ道を究めている感じがする。