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| 丹田呼吸法の訓練をする女性(東京都荒川区の「調和道協会」で)=工藤菜穂撮影 |
■呼吸、表情、歩き方
「伸ばーす」、「落とす」、「曲げる」……。
指導員の独特のかけ声。正座した中高年の男女らが腹部に手を当てながら、上半身を伸ばしたり、前にかがめたりする動作をゆっくりと何回も繰り返す。
東京・西日暮里にある、「丹田呼吸法」の普及を目指す社団法人「調和道協会」(日野原重明会長)の本部道場。健康増進目的の人や、武道や音楽に呼吸法を生かしたい人などが大勢通ってくる。
「心」と「身体の動き」のつながりを研究する心理学者で早稲田大学名誉教授の春木豊さんは以前、丹田呼吸が心に及ぼす影響を実験で調べた。他の呼吸の仕方と比べて、ゆっくりと長く吐く丹田呼吸は、生理的な緊張状態を和らげ、不安感を減らす効果が高いという結果だった。
生理学的には、吸気は興奮、息を吐く呼気は鎮静作用がある。丹田呼吸は息を吐くことに重きを置くことで、心を穏やかにする。
春木さんが「心」と「身体の動き」に関心を持ったのは、学生時代に神経症を患い、鎌倉で座禅を組んで以来。50代以降に座禅、呼吸法、ヨガ、気功、太極拳などの健康法を学びながら、本格的に研究に取り組み、成果を「動きが心をつくる—身体心理学への招待」(講談社現代新書)などの本にまとめている。
「最近は脳科学が人気で、心は脳だけで説明できるような風潮がありますが、そんなことはありません」
春木さんが、心とのかかわりで注目した「身体の動き」は、呼吸のほか、筋肉の反応、表情、発声、姿勢、歩行、人との距離のとり方、接触の仕方などだ。共通するのは、無意識に行われる一方で、意識的に行うこともできる点。また、どれもが様々な健康法に利用されているのも共通している。
これらの動きと心の関係を探った研究は数多い。例えば、筋肉の反応に関する海外の研究では、事前に筋肉を弛緩(しかん)させる訓練を受けた人の方が、危険に直面しても恐怖感を感じにくく、パニックに陥りにくかったという。
表情については、同じ漫画を読んでも口角を横に広げた方が面白く感じられ、口をすぼめるよりも広げた方が快適な気分になれる、などの研究がある。
大声で叫ぶとスッキリした気持ちになる、歩幅を広げて速いテンポで歩くと自信や開放感を感じる、などは誰もが体で経験的に理解している効果だろう。
春木さんの身体心理学では、進化の過程で心を発達させたのは身体の動きだととらえる。単細胞動物のように動物には元々脳はなかったが、様々な動きの経験を集積して、効率的に動くために脳が生まれた。身体の動きこそが、心の生みの親とする考え方だ。
春木さんは「心の根底にあるのは、気分や感覚です。そこに効果を及ぼすのが、呼吸や姿勢、歩行といった日常の何気ない動作。それを利用した健康法は、いつでも、どこでもできるので、ぜひ生活に取り入れてほしい」と話している。(藤田勝)
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■丹田呼吸法
へそ下の丹田と呼ばれる部分を意識して息を出し入れする呼吸法。体内に多くの酸素を取り込み、全身の細胞を活性化する。集中力や精神力を高める効果などもある。
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